SharePoint Online のパフォーマンス チューニングについて

今回の投稿では、SharePoint Online のパフォーマンス チューニングについて、特に重要な点をご案内いたします。

一般的に運用の開始後は設定や構成の変更が難しくなりますので、パフォーマンス チューニングについては、構築の段階から考慮いただくことが重要となります。

後述の通り、SharePoint Online と SharePoint オンプレミスのアーキテクチャの相違もパフォーマンスに大きく影響するため、SharePoint オンプレミスから SharePoint Online へ移行を検討する場合においても、本稿の内容は非常に重要になります。

 

クラウドサービスについては継続して動作が変更されるため、今後もパフォーマンス チューニングについての考慮点は段階的に追加や変更がされる可能性がありますが、以下にご案内する機能については今後パフォーマンスの改善を予定しておりません。

SharePoint Online をベストな状態でご利用いただくためには、可能な限り本稿の内容を考慮いただくことを、お願いいたします。

 

パフォーマンス チューニングの必要性

SharePoint Online はクラウド サービスとなりますので、データセンター側でサーバーの稼働状況を継続的に自動で監視し、必要に応じて適切なスケーリングを実施しています。

しかし、SharePoint Online は柔軟なサイト デザインや、カスタマイズ機能を提供していることから様々な利用方法が想定され、データセンター側のインフラにおけるスケーリングのみでは十分なパフォーマンスが得られないことがあります。

また、一部の機能においては深刻なパフォーマンス劣化が生じる可能性があるものの、データセンター側のスケーリングが対応しておりません。

このため、ご利用者様においても、パフォーマンス チューニングについては意識していただく必要があります。

 

パフォーマンス チューニングに関する情報は今後も随時して公開していく予定ですが、データセンター側のスケーリングが対応していない機能については、特に注意いただく必要があります。

詳細は次項にてご案内いたします。

 

データセンター側のスケーリングに対応していない機能

SharePoint Server 発行インフラストラクチャ/SharePoint Server 発行機能 (以下、発行機能) を有効にしているサイト コレクション/サイトで利用可能な以下の機能については、SharePoint Online のパフォーマンスに大きく影響する可能性があります。

・構造ナビゲーション

・コンテンツ クエリ Web パーツ

 

SharePoint Online はSharePoint オンプレミスと多くの機能を共有していますが、SharePoint Online は大規模にスケーリングされたクラウドのインフラで稼働しています。

特に SharePoint Online で発行機能を有効にしているサイト コレクション/サイトについては、SharePoint オンプレミスとのインフラの違いが大きく影響いたします。

SharePoint オンプレミスにおいて、発行機能によって提供される幾つかの機能は、Web フロントエンド サーバーのメモリ領域を使用したキャッシュ (オブジェクト キャッシュ) を利用することで、負荷の大きい処理を効率的に実施しております。

しかし、SharePoint Online はマルチテナントをホストする共有サービスでありホストするデータの規模が著しく膨大であること、大多数の Web フロントエンド サーバーが稼働して負荷分散されているため、キャッシュ ヒット率が極めて小さくなり、キャッシュは Web フロントエンド サーバーのメモリを非効率に消費するだけとなりました。このため、SharePoint Online では、現在オブジェクト キャッシュが廃止されております。

 

オブジェクト キャッシュの廃止以前から、オブジェクト キャッシュが特に大きくパフォーマンスに影響する機能として、上記の “構造ナビゲーション”、”コンテンツ クエリ Web パーツ” があります。

SharePoint Online のアーキテクチャにおいてはキャッシュによるパフォーマンス改善が期待できないため、これらの機能を利用している場合、当該サイトにおいて深刻なパフォーマンス劣化が生じる可能性があります。

 

本機能を以前からご利用されているテナントも多くあるような状況等から、機能を廃止する予定は現時点ではありませんが、本機能が影響してパフォーマンスの劣化が生じている場合、データセンター側でサーバーのリソース増強などの対応は効果的ではありません。アーキテクチャ上の問題を抱えているため、データセンター側のリソースをスケールアップ/スケールアウトした場合もパフォーマンスの根本的な改善が期待できないためとなります。

 

これら機能が影響してパフォーマンスの劣化が生じたことが弊社側で確認された場合、原則として機能の利用停止をお願いしておりますが、特に稼働中のサイトにおいて設定変更は大きな影響を伴うため、本機能においてのパフォーマンス チューニングに関する情報を以下にご案内いたします。

 

構造ナビゲーション

発行機能が有効なサイトにおいて、ナビゲーションは以下の 3 種類から選択することが可能です。

 

・構造ナビゲーション

・管理ナビゲーション

・検索型ナビゲーション

 

パフォーマンスの観点では管理ナビゲーション、または検索型ナビゲーションの利用が強く推奨されます。それぞれのナビゲーションの差異については、以下の公開情報をご確認ください。

 

タイトル : SharePoint Online のナビゲーション オプション

アドレス : https://support.office.com/ja-jp/article/adb92b80-b342-4ecb-99a1-da2a2b4782eb

 

構造ナビゲーションにおいては、主に以下の機能がパフォーマンスに大きく影響するため、利用可能な機能レベルは低下するものの、これら機能を無効にすることである程度はパフォーマンスの改善が期待できます。

しかし、これらの機能を無効にした場合でも、通常は管理ナビゲーション、検索型ナビゲーションの方がパフォーマンスは優れるため、新規環境構築の際や、既存環境でさらなるチューニングを要する場合は、ナビゲーションを構造ナビゲーションから変更することをご検討ください。

管理ナビゲーションのご利用方法については、本サポートブログでも案内しておりますので紹介します。

 

タイトル : SharePoint Online で管理ナビゲーションを使用する

アドレス : https://blogs.technet.microsoft.com/sharepoint_support/2018/07/02/using-managed-navigation-in-sharepoint-online

 

[サブサイトを表示する] 設定

本設定が有効な場合、ナビゲーションに設定されたサイトのサブサイトがナビゲーションに自動でリンクとして追加されます。

 

設定を無効にすることで、サブサイトがナビゲーションに自動で追加されなくなりますが、パフォーマンスは改善されます。

特に、サブサイトに固有の権限を設定している場合には有効となります。

 

設定変更は、サイトの設定ページにアクセスし、[外観] セクションの [ナビゲーション] から実施することが可能です。

セキュリティ トリミング、対象ユーザー

構造ナビゲーションはセキュリティ トリミングが有効な場合に、ページにアクセスしているユーザーの権限を確認し、アクセス可能なサイトのみナビゲーションに表示するように制御されます。

また、対象ユーザー機能によってナビゲーションの見出し、リンク毎に表示可能なグループを制御することが可能です。

これら機能を無効にすることで、全てのユーザーに全ての見出し、リンクが表示される様に動作が変更されますが、パフォーマンスは改善されます。

 

設定変更は、サイトの設定ページにアクセスし、[サイト コレクションの管理] セクションの [サイト コレクションのナビゲーション] から実施することが可能です。

 

コンテンツ クエリ Web パーツ

コンテンツ クエリ Web パーツ (以下、CQWP) の代替の機能は、コンテンツ 検索 Web パーツ (以下、CSWP) となりますので、パフォーマンスを改善し、SharePoint Online をベストな状態でご利用いただくためには、将来的に CQWP を CSWP へ変更することをご検討ください。。

 

CQWP のパフォーマンスは、主に検索対象のリストが保持するアイテムの数、およびクエリの複雑さが影響します。

CQWP の特徴の 1 つとして、複数のリストに対して簡単にクエリを実行できることがありますが、複数のリストに対してクエリを実行する場合、検索対象の全てのリストが含むアイテムの合計数が 5000 個未満になるように注意いただく必要があります。

クエリの複雑さについては、定量化が難しい指標となりますが、留意すべき点が以下の公開情報で案内されておりますので、アイテムの合計数の件も含め、詳細はこちらをご確認ください。

 

タイトル : SharePoint でコンテンツ クエリ Web パーツまたはコンテンツ検索 Web パーツを使う場面

アドレス : https://support.office.com/ja-jp/article/346a0f48-38de-409b-8a58-3bdca1768929

 

タイトル : コンテンツ クエリ Web パーツではなくコンテンツ検索 Web パーツを使用して SharePoint Online でパフォーマンスを向上させる

アドレス : https://support.office.com/ja-jp/article/e8ce6b72-745b-464a-85c7-cbf6eb53391b

 

 

パフォーマンス チューニングについてのリンク集

Microsoft が公開している SharePoint Online に関するパフォーマンス チューニングについての情報を以下にお纏めいたしました。これら記事についても、是非ご一読ください。

本ブログにおいても、今後もパフォーマンスに関する情報は随時発信していく予定です。

 

タイトル : SharePoint Online のパフォーマンスの調整

アドレス : https://support.office.com/ja-jp/article/f0522d4a-fbf4-41f9-854e-c9b59555091d

 

タイトル : SharePoint Online のパフォーマンス問題を診断する

アドレス : https://support.office.com/ja-jp/article/3c364f9e-b9f6-4da4-a792-c8e8c8cd2e86

 

タイトル : SharePoint Online ポータル パフォーマンス ガイダンス

アドレス : /ja-jp/sharepoint/dev/solution-guidance/portal-performance

 

タイトル : SharePoint Online で CDN を利用する

アドレス : https://blogs.technet.microsoft.com/sharepoint_support/2018/06/20/sharepoint-online-cdn/

 

タイトル : SharePoint Online で管理ナビゲーションを使用する

アドレス : https://blogs.technet.microsoft.com/sharepoint_support/2018/07/02/using-managed-navigation-in-sharepoint-online

 

タイトル : SharePoint Online で発行機能を有効にする場合の留意点

アドレス : https://blogs.technet.microsoft.com/sharepoint_support/2018/07/09/enabling-publishing-feature/

タイトル : 構造ナビゲーション、CQWP によるパフォーマンス劣化について

アドレス : https://blogs.technet.microsoft.com/sharepoint_support/2018/09/28/perf-degradation-reason/

 

今回の投稿は以上です。

本情報の内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。