SharePoint 製品とテクノロジのバックアップと復元について考える Part 1

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みなさんこんにちは。

SharePoint サポートチームの荒川です。

製品サポートにおいて、SharePoint のバックアップと復元に関する質問を非常に多くいただきます。

Technet の記事にはとても詳しいことが書いてあるのですが、情報量が多く読み解くのが大変ですので、このブログでは SharePoint のバックアップと復元に関する基本的な情報をなるべくわかりやすく簡単にまとめてみたいと思います。

■はじめに

SharePoint のバックアップ計画を立てるにあたって、一番重要なことは、SharePoint を構成するコンポーネントを理解して、各コンポーネントのバックアップの重要度と復元時の作業量を適切に把握することです。

SharePoint はバックエンド データベースを使用する Web アプリケーションという性質上、フロントエンド サーバーのデータとバックエンド データベース サーバーのデータの整合性に気を配る必要があります。

SharePoint のバックアップと復元を適切に計画するためには、SharePoint の製品動作について十分に理解する必要があります。このブログの一連の記事では、SharePoint のバックアップと復元を適切に計画するために役立つ情報をお届けします。

■構成データベースのバックアップがサポートされない理由

SharePoint では構成データベースのバックアップがサポートされません。

なぜ、構成データベースのバックアップがサポートされないのでしょうか。

SharePoint ではファームと呼ばれるサーバー群を形成して、ファームの各サーバーにそれぞれの役割 (ロール) を割り当てて使用します。

サーバー ロールには主に、ユーザー アクセスに対するレスポンスを返すWeb サーバー、そしてクロール コンポーネント、クエリ コンポーネント、Excel Service などのアプリケーション サーバーがあります。それぞれのロールは兼任することも可能です。

こうしたファームの構成情報は、構成データベースに集約され管理されます。構成データベースには、ファーム構成に関する情報の他、全体管理サイトの設定情報や、IIS のメタデータの情報、タイマー サービスの動作状態といった、ファーム内で共通利用する構成情報が格納されています。

コンピュータ名などの一部のパラメータは、環境固有のものであるため、構成データベースは他のサーバーファームに復元することはできません。また、ファームの構成情報は常にファーム内でタイマーサービスにより更新されているため、ファームが稼働している限り、ある時点の構成データベースを復元すると構成情報の不一致が発生することになります。このような理由から、構成データベースおよびサーバーの全体管理サイトのデータベースを個別に復元することはサポートされていません。これは、SQL Server ツールによるファームのバックアップがサポートされないことを意味します。

■ファームの状態を一括でバックアップする方法

ここでは、SharePoint ファームのデータをすべてまとめて一括でバックアップする方法について解説します。

Hyper-V によるバックアップ

SharePoint ファームのデータをすべてまとめて一括でバックアップする最も簡単な方法は、Hyper-V のスナップショット機能を使用することです。

SQL Server を含むファーム サーバーがすべて Hyper-V 仮想環境上に構築されている場合、Hyper-V のスナップショット機能を使用してすべてのサーバーを同じタイミングでバックアップすることで、簡単に環境をバックアップ、復元できます。ただし、この方法は運用環境ではお勧めできません。

一つ目の理由として、タイマージョブの動作への影響が挙げられます。動作中の仮想マシンのスナップショットを取得すると、スナップショットが開始する時間とスナップショットが終了する時間の間に遅延が生じます。この遅延は SharePoint Server のタイマー ジョブに影響を及ぼし、その結果、ファーム サーバー間の時計の同期が影響を受けます。従って、稼働中のファームでスナップショットバックアップを取得することはサポートされていません。この問題は、スナップショットの取得前に、ファームのすべてのサーバーをシャットダウンすることで回避できます。

二つ目の理由は、パフォーマンスへの影響です。仮想マシンのスナップショットを作成すると、実際には差分ディスクが作成されます。仮想マシンとスナップショットとの間で構成データの交換が継続的に行われるため、パフォーマンスが影響を受けます。

これらの理由から、スナップショットによるバックアップは開発環境やテスト環境での利用に留めていただくことをお勧めします。

<参考>

仮想マシン ガイダンス (SharePoint Server 2010)

https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ff621103.aspx

仮想化の計画 (SharePoint Server 2010)

https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ff607968.aspx

Windows Server バックアップによるバックアップ

先述のとおり、ファーム稼働状態でのスナップショット バックアップはタイマー サービスの動作に問題を引き起こす可能性があるためサポートされていません。同じ理由から、Windows Server バックアップによるベアメタル回復を使用した場合であっても、ファーム稼働状態でのバックアップを復元することはサポートされません。

理論上は、ファームのすべてのサーバーで SharePoint 関連サービスを停止することで、ファームを完全に停止した状態でのバックアップ採取が可能と考えられますが、このようなシナリオは開発段階においてテストされておらず、正式にサポートされた方法ではありませんので、使用は避けるべきです。

サービスの停止によるファームの停止は、短期間での SQL Serever のリプレイス等のごく一部のシナリオでサポートされた方法ですが、バックアップの目的で運用中のファームを完全に停止することは現実的ではありませんし、AD 上の構成変更が生じた場合等、各種サービス アカウントの動作に問題が生じる可能性があり、長期的なバックアップでの利用を前提としたシナリオではありません。

なお、Windows Server バックアップによるバックアップは、SharePoint インストール前の OS イメージの復元に使用することで、障害発生後の復旧時間を短縮できます。

<参考>

すべてのデータベースを移動する (SharePoint Server 2010)

https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/cc512725.aspx

サードパーティのツールによるバックアップ

サードパーティのソリューションによるバックアップとリストアは、マイクロソフトにより正式なサポートが表明されている場合を除き、原則マイクロソフトによるサポートが提供されません。サードパーティのソリューションによる SharePoint のバックアップとリストアについては、ソリューション ベンダーにご確認ください。

次回は、データのバックアップの方法について解説する予定です。