Open XML: この 1 年の動向


おそらくご存じだと思いますが、マイクロソフトのビジネス部門にとって、今週は重要な週です。今週の前半に、Microsoft Office 2010 ベータ版の一般公開が発表されました。チームのメンバーと共同で Word でドキュメントを作成したい、大量のデータを Excel で一度に解析したいと考えたことはないでしょうか。または、PowerPoint のプレゼンテーションでマルチメディアの制限がなくなればいいのにと思ったことはないですか。心覚えがある方は、ぜひベータ版をお試しください。

標準化に関するコミュニティ、特にドキュメント形式の担当者にとっても、重要な週となっています。今週は、Open XML が ISO/IEC 29500 として刊行されてから 1 周年にあたります。本日の投稿では、ちょうど良い機会なので、Office 2010 で Open XML をサポートするための開発業務に携わった立場から、Office 2010 で Open XML 標準をサポートするために払われた開発努力と、相互運用性の向上が Office にイノベーションをもたらすことにどのように作用しているかについて、ご紹介しようと思います。

Office 2010 での Open XML のサポート

ドキュメント形式に関して誰もが気になる大きな問題は、Office 2010 ではどの程度 Open XML がサポートされているかという点です。Office 2010 では、暫定適合クラスの ISO/IEC 29500 準拠ファイルが既定で生成されます。

Office 2010 で ISO/IEC 29500 準拠ファイルを生成するために、まず、Office 2007 で生成されていたファイルの評価を行いました。Office 2007 では ECMA-376 First Edition のファイル (ISO/IEC 29500 標準の先行標準) が生成されていました。バグまたは標準の変更に起因する問題点を構文内で見つけ、構文を標準に準拠させるために必要な変更を行いました。

構文を準拠させるために変更する必要があった箇所を知ると、誰もが一様に驚きます。ほとんどの場合、変更の原因は特定のシナリオにおける些細なバグでした。私が面白いと思ったのは、Word 2007 のバグで、oMath 要素を rFonts 要素の "後" に記述する必要があると標準で規定されているのに、特定の状況下で oMath 要素が rFonts 要素の "前" に記述されるというものでした。これは単純な修正で済んだ小さなバグで、行われた変更作業もほとんどはこの程度のものでした。

記述するファイルの構文を一部変更したため、以前のバージョンの Office を使用しているユーザーでも新しい構文を使用したファイルを操作できるようにするための作業も行いました。まず、互換性を維持するために、Office 2007 Service Pack 2 に修正プログラムを追加しました。次に、古いバージョンの Office 用の互換機能パックも更新しました。つまり、Office 2007 SP2 または最新の互換機能パックがあれば、Office 2010 とのシームレスな相互運用性が実現します。

また、生成するファイルの構文の準拠を徹底しただけではありません。Open XML に対する ISO の承認プロセスの過程で、各国の団体から寄せられた多数の推奨事項を検討し、Office 2010 でサポートするものを特定しました。次に、主なものを数点ご紹介します。

  • 百分率と測定の新しい構文の読み取りのサポート
  • アクセシビリティの向上を狙いとした、図形上のタイトルのサポート
  • 名前付きの色の増量と、色の MRU リストの長さの拡張
  • インクを持続するための新しい contentPart のサポート

標準化のプロセスを通じて各国の団体から寄せられた意見に基づいて行った特に重要な作業が、上記の他にも 2 つありました。

1 つ目は、Vector Markup Language (VML) への依存に関する変更です。承認プロセスで、VML への依存は他の実装者にとって困難な要件であるというはっきりとした意見が得られました。この問題の解消に向けて、VML への依存を軽減する取り組みを始め、DrawingML への移行という飛躍的な発展を遂げました。たとえば、PowerPoint 2010 では、描画要素を表示する主な方法として、VML をほとんど使用しません。

2 つ目は、スプレッドシートでの日付の構文に関係しています。こちらも同様に、承認プロセスで、スプレッドシートで日付を表現するために ISO 8601 の日付構文の使用を追加でサポートするように多くのリクエストがありました。これについては現在対応中ですが、Excel 2010 のベータ版では、この構文がサポートされています。この開発努力に関して注目に値する点は、この新機能に関係する下位互換性の問題を特定および解決する目的で、JTC 1/SC 34 (Open XML の維持管理を担当する標準化団体) のメンバーと緊密な共同体制を組んでいることです。マイクロソフトと標準化に関するコミュニティとの間のこうした協力関係を光栄に思います。

相互運用性の向上とイノベーションとの関係

相互運用性を向上するための開発努力について顧客やパートナーと話すと、相互運用性の向上の追求が、Office にイノベーションをもたらすうえで支障とならないのかといった質問を数多く受けます。

数か月前、シアトルでの Washington DII のイベントで、私の友人で JTC 1/SC 34 の韓国代表メンバーでもある Lee 博士から、相互運用性の向上に焦点を当てることで Office にイノベーションをもたらすうえで影響はないのかと尋ねられました。非常に良い質問でしたが、DII の出席者の多くは私の回答に驚きました。

回答は「一切ありません。実際、もし影響があれば、イノベーションはもっと簡単になるでしょう」という、いたってシンプルなものでした。会場は沈黙に包まれました。

技術的な観点から見ると、標準にイノベーションを妨げる要因はありません。確かに、従う必要が規則や要件は多数あります。しかし、Open XML 標準、MCE、および拡張リストでは多数のテクノロジも定義されています。これらのテクノロジによって、たとえば、すべての実装者が標準に準拠した実装を提供しながら、同時に顧客価値を重視した市場競争に参戦できるようになります。DII イベントで説明したように、Microsoft Office では、こういったテクノロジを大いに活用して、Excel 2010 のスパークラインや PowerPoint 2010 の新しい画面切り替えなど、2010 リリースで提供される優れたイノベーションを実現しています。

また、Office 2010 の Open XML の実装と、こういったイノベーションを支える技術的な詳細の両方を完全に文書化し、すべての実装者がその情報に自由にアクセスできるようにしたことも説明しました。つまるところ、これは相互運用性の話なのです。

しかし、Lee 博士の質問への回答は、テクノロジについての話のみにとどまりません。相互運用性の向上のための取り組みが、Office を開発する方法にいかに好影響を与えているかという話でもあります。

相互運用性の重要度は、マイクロソフト製品の他の主要な設計要件と同じレベルにまで高まってきました。すべての機能に対して、セキュリティとプライバシーの再検討、パフォーマンスとスケーラビリティのテスト、アクセシビリティとプログラミング能力の再検討、および、各国語での十分なテストが行われるのと同様に、相互運用性にも同じ方法で取り組むようになりました。リリースの最後でファイル形式の実装を文書化する代わりに、リリースの開発作業を進めながら実装を文書化します。これによるエンジニアリング チームにとっての利点は数えきれず、機能の開発をより合理的かつ効果的に行えるようになります。また、ドキュメント形式に関するドキュメントが充実するため、新しい従業員の作業効率が上がり、従業員間の負荷も効率的に分散されます。最終的には、設計プロセス全体にとって素晴らしい利点をもたらし、その効果は定着します。

しかし、単にドキュメント形式を文書化するだけではなく、異なるベンダーの実装の間で一般的な相互運用性を向上する新しい方法を模索し続ける必要があります。先日、Outlook で使用される PST 形式に関して DII イベントを開催しました。開催理由は、必要に迫られたからではなく、開催した方が適切だったからです。これまでに寄せられた意見によれば、これは、業界にとって素晴らしい成功でした。

最初から、この投稿が 2 ページ半以上にならないように決めていました。ですから、以上の説明で、相互運用性の向上の追求がイノベーションの支障とならないことを確信できなかった方には、あと 1 点だけ提案するに留めさせていただきます。ベータ版をぜひお試しください。その価値は十分にあります。

いつものように、Microsoft Office の開発チームでは、相互運用性の現状を改善する方法に関してご意見、ご感想をお待ちしています。Office 2010 のリリースを喜んでいただければ幸いです。

Shawn Villaron

(Microsoft Office チーム、グループ プログラム マネージャー)

shawnv@microsoft.com

詳細情報

原文の投稿日: 2009 年 11 月 19 日 (木曜日) 午後 6:28 投稿者: OffTeam

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これはローカライズされたブログ投稿です。原文の記事は、http://blogs.technet.com/office2010/archive/2009/11/19/open-xml-one-year-in.aspx をご覧ください。


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