かんたん起動 : 21 世紀の Office 製品提供テクノロジー

かんたん起動の紹介

最新鋭のソフトウェアを試してみたいタイプの読者なら (また、Office Engineering ブログを読むタイプの皆さんなら...)、新しいソフトウェアを初めて使ってみるときの苦痛をよくご存じでしょう。私は Paul Barr です。私がリード プログラム マネージャーを務める Office 2010 "かんたん起動" チームでは、ユーザーの皆さんの気持ちを考えながらこの機能を作り上げました。ここでは、「Microsoft Office 2010 を試用および購入する新しい方法」で発表されたテクノロジーについて、より詳しい内容をご紹介します。

豊富な機能を持つ Office のようなプログラムも、インターネット上での提供方法については 10 年前からあまり変わっていません。自己解凍型の実行形式ファイル、署名によるファイル セキュリティの確保、そしてダウンロード マネージャーといった工夫はありますが、大規模なアプリケーションのダウンロードとインストールにまつわる次のような大問題に対しては、どの工夫も十分な解決策になっていません。

  1. まず、とにかく時間がかかること。Office には膨大な機能とコンテンツが盛り込まれていますが、それだけにサイズも巨大なので、全体をダウンロードし、インストールして実行するには長い時間が必要です。このため、ユーザーが今やろうとしている作業に新製品を使ってみたくても、現実にはそう気軽に試せません。
  2. アプリケーションが最新版でなくなっている場合がよくあること。ダウンロードしたばかりの最新ソフトウェアなのに "今すぐ更新プログラムを適用してください" と要求された経験が何度もあるのではないでしょうか?
  3. 新しいバージョンをインストールすると、古いバージョンのアンインストールが必要になったり、別のインストール済みソフトウェアに問題が発生したりする場合が多いこと。

かんたん起動とは

かんたん起動は、Office 製品チームが開発した、ソフトウェア提供の新しい仕組みです。米国マサチューセッツ州ケンブリッジの Microsoft App-V チームが実現した仮想化およびストリーミングのテクノロジが、かんたん起動の基礎技術となっています。家庭用ブロードバンド接続環境 (1 Mbps 以上) で快適に使えるように作られており、3 つの大きな特長があります。

  1. すぐに使えること。ストリーミングにより、ホーム ユーザー環境で Office を実行するまでの所要時間は最短 90 秒 (平均 5 分未満) です。通常のダウンロードと比べ 10% 程度のわずかな時間で使い始めることができます。しかも、これは "クラウド上" で実行されるのではありません。お使いの PC 環境の上で製品が動作します。
  2. いつでも最新の機能とセキュリティを備えたバージョンの Office を簡単に実行できること。かんたん起動では初めから何もかも最新の内容が送られてきます (続けて修正プログラムを適用するために、さらに 60 秒かけてダウンロードする必要はありません)。また、更新プログラムの適用も随時、自動的に行われるので、ダウンロードやインストールの操作は不要です。更新処理はバックグラウンドでスムーズに実行されます。
  3. 既存環境への影響が少なく、他のソフトウェアと共存できること。かんたん起動の製品は仮想化されているので、他のソフトウェアとの競合は発生しません。たとえば、Office 2007 で業務をこなしながら同時に Office 2010 の評価版を試用できます。ユーザーにとって非常に不都合だったポイントの 1 つが、これで解消されます。

かんたん起動の製品は、通常製品と比べて半分程度の少ないディスク使用量で動作し、より確実な修復能力を備えています。また、ファイルやレジストリ情報はすべて専用のコピーを使用するので、PC 上にインストールされている他のソフトウェアに影響を及ぼしません。

かんたん起動は、新しい Office "製品" ではなく、既におなじみの製品を新しい方法で提供および更新する仕組みです。Office Home and Student 2010 および Office Home and Business 2010 製品の両方について、この提供形態が用意されます。かんたん起動は各種言語に完全対応し、32 ビットおよび 64 ビット版オペレーティング システム上で動作します (どちらの環境でも、実際に実行されるのは 32 ビット版 Office です)。

かんたん起動の仕組み

かんたん起動で提供される製品は、ローカル オペレーティング システム上の仮想アプリケーション環境で動作します。使用するファイルや設定については専用のコピーを作成し、すべての変更を仮想環境内に保持します。このため、システムにインストールされている他のソフトウェアに影響することはありません。仮想環境から実際のローカル システムへと渡されるのは、わずかな例外を除き、ユーザー用のデータのみです。かんたん起動の環境内には Q: という仮想ドライブがあるように見えます。これは、Office で使用する仮想ファイル システムです。

また、かんたん起動の製品についてはストリーミングがサポートされています。ビデオをストリーミング視聴する場合、ファイル全体のダウンロードを待たずにビデオ冒頭部分の再生が始まりますが、それと同じように使えるということです。製品全体のダウンロードが終了しないうちに Office プログラムを使い始められるので、作業に取りかかるまでの時間がずっと短くて済みます。ユーザーがアプリケーションを使っている間に、ダウンロードの続きがバックグラウンドで実行されます。このように、当初のインストール処理は、ユーザーが見慣れている従来の姿とはずいぶん違った形で行われます。かんたん起動 Office を使い始める感覚は、従来の方法で Office をインストールする場合の使い勝手よりも、むしろ大きな Web コントロールをダウンロードする感覚に近いといえます。

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まだダウンロードしていない機能やアプリケーションをユーザーが使おうとした場合は、そのために必要な機能がすぐにインターネットからダウンロードされます。このため、アプリケーションの動作が少しの間停止し、次のようなメッセージが表示されることがあります。

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製品ダウンロードの進行状況は、Windows コントロール パネルの [かんたん起動アプリケーション マネージャー] を開いて次のように確認できます。

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ダウンロードが完全に終了した製品はローカル キャッシュに保持されるので、以後はインターネットの接続を切断しても Office 製品の使用を続行できます。

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かんたん起動の Office 2010 ベータ版での対応状況と以後の対応予定

Office Home and Business 2010 製品のベータ版については、かんたん起動テクノロジでダウンロード提供されます。この提供オプションはブロードバンド接続に最適化されています (帯域幅の小さい接続環境でお使いの場合は、Office Professional 2010 のベータ版のダウンロードをお勧めします)。Office 2010 のリリース時には、より広範な Office 製品がかんたん起動での提供に対応する予定です。かんたん起動で Office 2010 製品をダウンロードされるお客様は "通常" の自己解凍形式によるダウンロードも可能であり、また、使用環境に応じてネイティブ 64 ビット版を利用いただくこともできます。

かんたん起動バージョンの Office 2010 製品をホーム ユーザーがお使いの場合、製品の動作がいくつかの点で通常のインストールと異なることがあります。たとえば、Backstage では、かんたん起動専用のセクションに製品の各アプリケーションが表示されます。ここには、適用済み更新プログラムの状況や、かんたん起動に関する詳細情報のリンクが次のように表示されます。

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アドインおよびその他 Office クライアントとの統合ポイントについては、かんたん起動の製品で使用すると異なる動作を示すものや、動作しないものが存在する可能性があります。これに該当するのは一部のみであり、ほとんどは問題なく使用できます。また、マクロ、ドキュメント内の自動化機能、Office アプリケーション間の相互運用などはすべて正常に動作すると考えられます。ただし、ある種の統合ソリューションに更新の必要が生じるような変更作業を Office 製品グループが実行せざるを得ない場合もあります (アプリケーションの 64 ビット バージョンのビルド作業などもその一例です)。一部のアドインでは、コンピューター上のかんたん起動 Office 製品を検出できない問題や、仮想環境内で動作する Office 製品との通信ができない問題が発生する可能性があります。

私たちのチームでは、こうした問題の発生する範囲は限られるものと考えています。また、問題の解決方法については、ユーザーおよび Office 拡張機能の開発者に向けて情報を発信していきます。開発者の皆さんや、Office 2010 に本来対応できるはずのアドインで問題が発生しているユーザーの皆さんは、ベータ期間中は必要に応じて Office 2010 ベータ版の Professional バージョンをお使いになるようお願いします。

まとめ

このブログでもこれまでの投稿でご紹介しているとおり、Office 2010 のリッチ クライアントには、ユーザーに役立つすばらしい新機能群が盛り込まれています。かんたん起動は、Office 2010 の価値をこれまでになく簡単に、すばやく、安全に体験していただくための提供方法です。インターネット経由のソフトウェア提供に新時代を開拓できたのは本当に嬉しいことです。皆さんのご感想を楽しみにお待ちしています。

原文の投稿日: 2009 年 11 月 6 日 (金曜日) 午後 7:27 投稿者: OffTeam

キーワード: かんたん起動

これはローカライズされたブログ投稿です。原文の記事は、https://blogs.technet.com/office2010/archive/2009/11/06/click-to-run-delivering-office-in-the-21st-century.aspx をご覧ください。