Azure Machine Learning の最新アップデート: ML ライフサイクルの簡素化と加速を実現

執筆者: Venky Veeraraghavan (Group Program Manager, Microsoft Azure)

このポストは、2019 年 5 月 3 日に投稿された New Azure Machine Learning updates simplify and accelerate the ML lifecycle の翻訳です。

 

データが急激に増加するにつれてテクノロジの刷新が進み、それと同時に、インサイト主導の意思決定の必要性を実感する組織も増えてきました。データを実際のビジネスに活かそうとするそうした各業界の組織を手助けするのが、人工知能 (AI) や機械学習 (ML) といったテクノロジです。Azure AI および Azure Machine Learning サービスは、インサイトが当たり前に入手できる世界を実現し、インテリジェントなアプリの開発を可能にするものです。たとえば、小売では製品をお薦めするアプリ、エネルギー生産分野では負荷予測アプリ、医療分野では画像処理アプリ、製造分野では予測メンテナンス アプリといったニーズがあります。

Microsoft Build 2019 (英語) では、Azure Machine の発展と拡大に関する重要なマイルストーンをお伝えする予定です。これには、機械学習のライフサイクル全体を強化する以下のような新機能の情報も含まれます。

  • あらゆるスキル レベルの開発者とデータ サイエンティストの生産性を向上させるゼロ コードおよびコード ファーストに対応した統合開発エクスペリエンスと、質の高いモデルの容易な構築を可能にする Automated Machine Learning の機能強化
  • MLOps (機械学習向け DevOps) によるモデルのデプロイ、管理、監視を可能にするエンタープライズ クラスの機能。これまでにない規模への対応とコスト パフォーマンスを誇るハードウェア アクセラレーション モデルと、モデル予測における透明性を高めるモデル解釈可能性機能
  • MLflow 実装、TensorRT および Intel nGraph での ONNX ランタイムのサポート、モデルの精度向上のためにキュレーションされたオープン データを提供する新しい Azure Open Datasets サービスなど、選択肢と柔軟性を提供するオープン ソース機能

他にも毎週さまざまな Azure Machine Learning の改善情報をお届けし、お客様のビジネスの成長、競争力アップ、目標達成のために機械学習を容易に応用していただけるよう取り組みを続けていきます。

簡素化された機械学習で生産性を向上

「Azure Machine Learning サービスを導入したことで、思い当たるあらゆるシナリオに対応し、最適な入力モデルを使用しているという安心感を持って機械学習を自動化できるようになりました」

— Diana Kennedy 氏 (バイス プレジデント、戦略・アーキテクチャ・プランニング担当、BP)

 

 Automated Machine Learning の機能強化

マイクロソフトのミッションの 1 つである AI の簡素化を図った Automated Machine Learning (Automated ML) の新しいユーザー インターフェイス (プレビュー) では、コードを 1 行も書くことなく、数回のクリックだけで機械学習モデルをトレーニングできます。Azure Portal で Automated ML のテストを実行する方法は、こちら (英語) でご確認ください。

Automated machine learining UI

Automated Machine Learning の UI

特徴量エンジニアリングの更新によって、任意のデータに対してオーダーメイドの入力を提示する新しい特徴抽出機能が追加されるなどし、最適なモデルを構築できるようになりました。アルゴリズムの選択とハイパーパラメーターのチューニングのすべての組み合わせを試す機能が改良されたほか、XGBoost アルゴリズムなどの人気の新しい学習器が追加されたため、モデルの精度が大幅に向上します。計算の最適化により、どのアルゴリズムを解析するべきかやどこに焦点を合わせるべきかが自動で示されます。また、早期終了機能により、効率的なモデル構築が可能なトレーニングが実行されます。さらに、アルゴリズムに対する完全な透明性が確保されるため、開発者やデータ サイエンティストは手動でプロセスを上書きしたり制御したりすることができます。これらの機能強化により、ベストなモデルを構築できるようになりました。

収益、在庫、販売、顧客のニーズなど、どんなビジネスにおいても予測を立てることは不可欠です。Automated Machine Learning による予測 (英語) に、時系列データによって推奨モデルの精度とパフォーマンスを向上させる新しい機能が追加されました。これには、新たな予測機能、時系列データに対する連続的なクロス検証の分割、構成可能なラグ、ウィンドウ集計、祝祭日の特徴抽出などの機能が含まれます。

これらの機能を使用することで、きわめて精度の高い予測モデルを構築できるようになり、多くのシナリオの機械学習の自動化に対応できます。

Azure Machine Learning ビジュアル インターフェイス (プレビュー)

このビジュアル インターフェイスには、ドラッグ アンド ドロップでワークフローを作成できる強力な機能が備わっており、機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイをこれまでよりも簡単に実行できるようになりました。機械学習に馴染みがなく、コードの記述に不慣れな方でも、Azure Machine Learning サービスの Machine Learning Studio で提供されている機能と同様の機能を使用できます。データの準備、特徴量エンジニアリング、アルゴリズムのトレーニング、モデルの評価といった作業は、Azure Machine Learning サービスの規模、バージョン管理、エンタープライズ セキュリティを基盤とする直観的な Web ユーザー エクスペリエンスから実行できます。

Azure Machine Learning visual interface

Azure Machine Learning ビジュアル インターフェイス

この新しいビジュアル インターフェイスをきっかけに、マイクロソフトはMachine Learning Studio の優れた機能の統合を開始しました。プレビューから一般提供に切り替えるにあたり、今後も年間を通じてさらに多くのアップデートをリリースしていきます。

こちらのチュートリアル (英語) を参考にお試しください。

Azure Machine Learning のホステッド ノートブック (プレビュー)

Azure Machine Learning に新しいノートブック VM ベースのオーサリング機能が直接統合されました。Python 開発者はコード ファーストのエクスペリエンスを通じて簡単にワークスペースでモデルを構築、デプロイできます。開発者やデータ サイエンティストは安全かつエンタープライズ対応の環境で使い慣れた Jupyter Notebook を使用して、Azure Machine Learning Python SDK (英語) でサポートされている操作をすべて実行できます。

Hosted notebook VM (preview) in Azure Machine Learning

Azure Machine Learning のホステッド ノートブック VM (プレビュー)

今すぐ利用を開始して、Azure Machine Learning から直接ノートブックにアクセスしてみてください。ノートブックは構成済みで、何も設定することなく使用を開始できます。また、カスタム パッケージやドライバーを追加してノートブック VM を自由にカスタマイズすることもできます。

エンタープライズ クラスのモデルのデプロイ、管理、モニタリング

MLOps - 機械学習向け DevOps

MLOps (機械学習向け DevOps) は、データ サイエンティストと DevOps プロフェッショナルの間で共同作業やコミュニケーションを行うための手法で、運用環境における機会学習のライフサイクル管理に活用できます。

Azure Machine Learning の新しい MLOps 機能により、DevOps の高度な知識をデータ サイエンスに取り入れ、オーケストレーション機能と管理機能によって効果的な ML ライフサイクル管理が可能になります。

  • モデルの再現性とバージョン管理 – 環境、コード、データのバージョン管理機能を使用して、資産を追跡および管理しながらモデルの作成や ML パイプラインの共有が可能です。
  • 監査証跡 – 資産を保全し、規制要件を満たすための管理ログを提供します。
  • パッケージ化と検証 – モデルを移植可能にし、パフォーマンスを保証します。
  • デプロイと監視のサポート – モデルのデバッグ、プロファイリング、デプロイのためのエクスペリエンスがシンプルになりました。これにより、モデルを自信を持ってリリースしたり、再トレーニングが必要なタイミングを判断したりできるようになりました。
  • Azure DevOps 拡張機能 – Machine Learning と Azure ML CLI (英語) 向けに提供されます。DevOps パイプラインからテストを送信し、Azure Repos または GitHub からコードを追跡し、ML モデルの登録時にリリース パイプラインをトリガーし、Azure DevOps の Pipelines を使用してエンドツーエンドの ML デプロイメント ワークフローを自動化できます。

Operationalize models effeciently with MLOps

MLOps でモデルを効率的に運用

これらの機能を活用して、再現性、監査のしやすさ、ライフサイクル全体の自動化をサポートし、継続してモデルの質を高めることで、機会学習のシナリオを運用環境に移行することができます。

詳細については Azure Machine Learning での MLOps に関するドキュメントをご覧ください。

Data Box Edge のハードウェア アクセラレーション モデルと FPGA

GPU で利用できるアクセラレーションに加えて、FPGA を活用した Azure Machine Learning ハードウェア アクセラレーション モデルにより、クラウドからエッジへのスケーリングが可能になりました。ハードウェア アクセラレーション モデルは、クラウドで一般提供が開始され、Data Box Edge に展開されたモデルはプレビューとして提供されます。

FPGA テクノロジは、価格とパフォーマンスのトレードオフを強いることなく、コンピューター ビジョンの飛躍的進歩をもたらしたディープ ニューラル ネットワーク (DNN) のようなコンピューティング集中型シナリオをサポートします。FPGA を使用すると、超低レイテンシで ResNet-50、ResNet-152、VGG-16、DenseNet-121、SSD-VGG を実行できます。製造上の欠陥分析、衛星画像処理、自律型ビデオ撮影などのシナリオでリアルタイムにインサイトを取得できるようになり、ビジネス上の重要な意思決定が促進されます。

詳細については、FPGA と Azure Machine Learning に関するドキュメントをご覧ください。

モデルの解釈可能性

マイクロソフトは、機会学習モデルの透明性、わかりやすさ、説明機能をサポートすることに取り組んでいます。モデルを解釈することができれば、モデルが行っている予測を理解し、公平性や偏りのなさを確保することに一歩近付くことができます。モデルに対する理解を深めることは、トレーニング中にモデルの精度を向上させるためにも、推論中にモデルの挙動を明らかにして予測結果を説明するためにも、モデルそのものについて的確に捉えるうえでとても重要です。

モデルの解釈可能性機能はプレビューとして、共通の API の下で最先端のオープン ソース テクノロジ (SHAP、LIME など) で利用できます。すべてのデータに関してグローバルに、また、特定のデータに関してローカルに機械学習モデルを説明する拡張性が高く使いやすいツールが提供されます。

詳細については、モデルの解釈可能性に関するドキュメントをご覧ください。

柔軟性と選択肢を提供する相互運用可能なプラットフォーム

「当社のデータ サイエンティストは皆、Azure Machine Learning を好んで使用しています。というのも、日業業務に使用しているあらゆるツールと完全に互換性があるからです。トレーニングも不要なうえ、多くのことをすばやくこなすことができます」

— Matthieu Boujonnier 氏 (分析アプリケーション アーキテクト兼データ サイエンティスト、Schneider Electric)

Azure Machine Learning の ONNX ランタイム

Azure Machine Learning サービスは、ONNX (Open Neural Network Exchange、英語) をサポートしています。ONNX は、TensorFlow、PyTorch、Keras、SciKit-Learn、その他多くのフレームワークの機会学習モデルを表すためのオープン スタンダードです。今回、ONNX 1.5 (YOLOv3 や SSD などの物体検出モデルを含む) を完全にサポートする、ONNX ランタイムのアップデート版をリリースしました。ONNX ランタイム (英語) では、NVIDIA TensorRT 統合の一般提供と Intel nGraph 統合のパブリック プレビューによるハードウェア アクセラレーションを可能にする、一貫性のあるスコアリング API を利用できます。ONNX ランタイムは Windows ML の一部として何百万台もの Windows デバイスで使用されています。また、マイクロソフトの Office、Bing、Cognitive Services などの大規模なサービスでは数十億件もの要求が ONNX ランタイムで処理されていますが、パフォーマンスは平均して 2 倍に向上しています。

詳細については、ONNX と Azure Machine Learning に関するドキュメント (英語) をご覧ください。

MLflow の統合

Azure Machine Learning は主要なオープン ソース フレームワークをサポートしており、精度の高い機械学習モデルを簡単に構築して、オンプレミスやクラウドのさまざまな環境でトレーニングできます。開発者は Azure Machine Learning ワークスペースで MLflow を使用して、トレーニングの実行から得られたメトリックや結果を、一元化された安全でスケーラブルな場所に記録できます。

Azure Open Datasets (プレビュー)

Azure Open Datasets (英語) は、キュレーションされたオープンなデータセットを提供する新しいサービスです。Azure でホストされており、Azure Machine Learning から簡単にアクセスできます。このデータセットを探索用に使用したり、他のデータと組み合わせて機会学習モデルの精度向上に活用したりできます。現在提供しているデータは、米国海洋大気庁 (英語) の天気データの履歴と予報です。今後さらにデータを追加していく予定です。Azure にデータセットを推薦することもでき、関連する最適化されたデータでグローバルな機械学習コミュニティに協力できます。

Azure Open Datasets

Azure Open Datasets

詳細については、Azure Open Datasets のページ (英語) をご覧ください。

利用を開始する

Azure Machine Learning サービスのこうした進化を構想し、構築し、提供できるのは、お客様やパートナー様との緊密な協力があってこそです。オープンで生産性が高く使いやすい機械学習プラットフォームをお届けすることで、さらなる機械学習の簡素化と加速を後押しできることを楽しみにしています。マイクロソフトは皆様と共にイノベーションの新たなステップを踏み、皆様のビジネスに AI を実際に取り入れ、画期的なエクスペリエンスを実現できるようになると考えています。

利用を開始するには、Azure Machine Learning の無料試用版をご利用ください。

詳細については、Azure Machine Learning サービスのページ (英語) や、ドキュメントのクイック スタートやチュートリアルをご覧ください。Jupyter Notebook のサンプル (英語) を使用すると、サービスをお試しいただけます。

Microsoft Build 2019 の Azure AI 関連ニュース (英語) もご覧ください。