製造業の未来を担うオープン化の取り組み

執筆者: Sam George (Director, Azure Internet of Things)

このポストは、2019 年 4 月 2 日に投稿された The future of manufacturing is open の翻訳です。

 

あらゆる業界で IoT の普及が進むにつれて、データはイノベーションに不可欠な要素となっています。新しいテクノロジを短期間で導入し、必要なデジタル スキルを習得してより広範なエコシステムに付加価値サービスを提供することは、組織にとってビジネス チャンスであると同時に、ビジネス上の急務でもあります。

製造業は IoT による変革の影響を大きく受けている業界ですが、IoT の効果を十分に発揮するためには、多くの企業による協力が必要になります。製造業のイノベーションを停滞させる要因は複数あり、その 1 つが、旧式の産業用機器の専用データ構造やクローズドソースの産業用ソリューションの存在です。こうしたクローズドソースの構造は、データのサイロ化を助長して生産性を低下させ、生産量と収益性を伸ばすうえで妨げとなります。業界の変革を推し進めるためには、新しいソフトウェアを導入するだけでは不十分であり、オープン標準に対する新たなアプローチやエコシステムという考え方、データのサイロ化を解消する方法や、新たなテクノロジが必要になります。

そこでマイクロソフトは、Azure が OPC Unified Architecture (UA) とシームレスに連携するよう多額の投資を行ってきました。実際、マイクロソフトは、オープンソース ソフトウェアの分野で OPC Foundation に大きく貢献しています。また、このオープン プラットフォームのアプローチをさらに進めるために、世界最大手のメーカー各社と協力してインダストリアル IoT のイノベーションを促進し、価値実現までの時間を短縮しています。しかし、私たちはマイクロソフトとパートナーの間だけでなく、業界全体やパートナーどうしでも同様の取り組みを行う必要があると感じています。目標は、一企業が自社の業務の範疇で何らかのテクノロジを提供することではなく、そのテクノロジを業界内の他の企業と共有し、すべての企業が新しいレベルで成功を収められるようにすることです。もちろん、それは一組織が引き受けるにはあまりにも大規模な任務です。そこで今回は、製造分野のイノベーションを促進するためにマイクロソフトが進めているオープン プラットフォームの取り組みについて詳しくご紹介します。

Open Manufacturing Platform を発表

本日 Hannover Messe 2019 において、マイクロソフトはイニシアチブ パートナーである BMW グループと共同で Open Manufacturing Platform (OMP、英語) を発表しました。OMP は Microsoft Azure Industrial IoT クラウド プラットフォーム上に構築されており、コミュニティ メンバーがインダストリアル IoT プロジェクトに貢献し、他のメンバーから学習するためのリファレンス アーキテクチャとオープン データ モデル フレームワークを提供します。マイクロソフトは初期のアプローチを確立し、現在は新しいコミュニティ メンバーの参加に向けて積極的に取り組んでいます。BMW の最初のユース ケースは、自社工場の第 2 世代の自律輸送システムに使用されている Microsoft Azure 上の IoT プラットフォームに焦点を当てたもので、BMW の物流プロセスは大幅に簡素化され、効率が向上しました。このユース ケースと今回のパートナーシップに関する詳細については、こちらのページをご覧ください。

OMP の単一のオープン プラットフォーム アーキテクチャにより、旧式の産業用機器からデータを解放し、データ モデルを標準化してデータの関連付けを効率的に行えるようになります。また、最も重要なポイントとして、メーカーが制御された安全な方法で自社のデータをエコシステム パートナーと共有し、他のパートナーがそのインサイトを活用することができます。構築済みの産業用ユース ケースとリファレンス デザインを使用することで、自社のデータの所有権を維持しながら、コミュニティ メンバーどうしが協力して一般的な産業上の課題を解決できます。今朝 BMW Group と共同発表したニュース リリースは、こちらのページでご確認いただけます。

すべての企業に影響をもたらす

オープン アプローチが必要だという認識は、業界全体に浸透しつつあります。本日 SAP が発表した Open Industry 4.0 Alliance (英語) もそのことを裏付けています。工場、プラント、倉庫をターゲットにした Open Industry 4.0 Alliance にはヨーロッパの多数の大手メーカーが参加しており、高度に自動化された工場の業務を支えるオープン エコシステムの構築を目指しています。

OMP と Open Industry 4.0 Alliance は補完関係にあるビジョンです。いずれもクラウドのオープン プラットフォームと工場のインテリジェント エッジの必要性を認識しており、オープン データ モデルと標準ベースのデータ交換メカニズムによって、企業間の協力を促進することを目標としています。

マイクロソフトは Open Data Initiative (英語) などの取り組みで SAP と緊密に協力しているほか、Industrial Internet Consortium (英語)Plattform Industrie 4.0 (英語)OPC Foundation (英語) といった幅広いイニシアチブで業界全体と連携しています。この有意義なパートナーシップを継続し、OMP と Open Industry 4.0 Alliance の連携を図りたいと考えています。各社の協力は未来の製造業にとって生命線であり、協力関係を強化するほど多くの成果を達成できるようになります。

詳細については、こちらのページをご覧ください。