AI が新たなスタンダードに: 2018 年の総括

執筆者: Anand Raman (Chief of Staff, Microsoft Corporation)

このポストは、2019 年 1 月 14 日に投稿されたAI is the new normal: Recap of 2018 の翻訳です。

 

Azure にとって 2018 年は AI 機能の飛躍の年となり、100 万人を超える Azure 開発者、お客様、パートナー様の間でもデジタル トランスフォーメーションが議論されるようになりました。最先端の AI 機能は、Power BI 向け AI 機能 (英語) をはじめ、さまざまなマイクロソフトの製品やサービスに組み込まれています。

今回は、AI 関連のサービス、ツール、フレームワーク、インフラストラクチャの中から 2018 年に登場した注目の AI 機能トップ 10 をご紹介します。

AI サービス

  1. Automated Machine Learning 機能を新たに搭載した Azure Machine Learning (AML) サービス
  2. 統合 Speech Services などの Cognitive Services飛躍的なマイルストーン (英語)
  3. 業界初、コンテナーで Cognitive Services をサポート
  4. Cognitive Search とバスケットボール リーグの事例
  5. Bot Framework V4 SDK (英語) での幅広い言語サポート (C#、Python、Java、JavaScript) と拡張モデルの提供

AI ツール & フレームワーク

  1. Visual Studio Code のデータ サイエンス機能 (英語)
  2. ONNX (Open Neural Network Exchange、英語) ランタイムのオープン ソース化
  3. ML.Net (英語)Windows 開発者向け AI プラットフォーム (英語)

AI インフラストラクチャ

  1. Azure Databricks
  2. AML と統合した Project Brainwave (英語)

さまざまな機能が登場した中で、これらの機能が注目された理由を 1 つずつ解説していきます。
 

AI サービス

AI サービスの注目機能は、Azure Cognitive ServicesCognitive Search などの構築済み AI 機能、Azure Bot Service を活用した対話 AI、Azure Machine Learning (AML) によるカスタム AI 開発です。

1. Azure Machine Learning

Azure Machine Learning icon image開発者向けイベント Microsoft Connect にて、Azure Machine Learning (AML) サービスの新しい Automated Machine Learning (Automated ML) 機能が発表されました。このサービスでは、データ サイエンティストや開発者が機械学習モデルをすばやく簡単に構築、トレーニングし、インテリジェント クラウドからインテリジェント エッジに至るあらゆるところに展開できます。モデルを開発したら、統合型 CI/CD ツールを使用して、IoT デバイスなどのクラウドやエッジにデプロイして管理できます。

詳細は、リリースに関するブログ記事「Azure Machine Learning service の一般公開に関するお知らせ: その具体的な内容」をご覧ください。

Automated ML の開発経緯についてはほとんど知られていませんが、すべては 2016 年に遺伝子編集研究所で始まりました。

マイクロソフトで機械学習を研究する Nicolo Fusi 博士 (英語) は、CRISPR.ML (英語) という新しい遺伝子編集テクノロジの研究に取り組む中で、ある問題を抱えていました。博士は、機械学習を使用して遺伝子を編集する最適な方法を予測しようとしていましたが、モデルには数千種類のハイパーパラメーターが存在するため、既存手法の最適化が非常に困難で、時間がかかっていました。博士は、映画や商品のおすすめ機能に使用されるアプローチと同じアルゴリズムをモデルの最適化に応用するという画期的なアイデア (英語) を思いつきました。これによって生まれたのが、機械学習パイプラインのおすすめシステムです。この手法は協調フィルタリングとベイズ最適化を組み合わせて有望な機械学習パイプラインを特定するため、モデルの選定とハイパーパラメーターのチューニングを自動化することができます。

博士へのインタビュー (英語) では、Automated ML で意思決定を支援する方法や、データ サイエンスの煩わしい作業を解消する方法について解説しています。

コーネル大学から公開されたホワイト ペーパー「Probabilistic Matrix Factorization for Automated Machine Learning (Automated Machine Learning の確率行列分解)」もお読みいただけます。

2. Azure Cognitive Services の新たなマイルストーン

Azure Cognitive Services は、画像、音声、言語、検索の各機能をアプリケーションやマシンに簡単に組み込むことができる API コレクションです。現在、120 万人以上の開発者が Cognitive Services を利用しています。

Image of icons representing various components of Azure Cognitive ServicesBuild 2018 カンファレンスにて、Cognitive Services の新たなイノベーション (英語) が発表されました。

新サービス

既存サービスの機能強化

詳細は、ブログ記事「Cognitive Services の新機能で開発者を支援 (英語)」をご覧ください。

3. 業界で初めてコンテナーで Cognitive Services をサポート

Cognitive Services in containers cloud image11 月に、Azure Cognitive Services Containers のプレビューがリリースされました。これにより Azure は、クラウドからエッジまでをカバーした構築済みの Cognitive Services を提供する業界初のプラットフォームとなりました。

詳細は、ブログ記事「コンテナーで Azure Cognitive Services を利用する (英語)」をご覧ください。

4. Azure Cognitive Search とバスケットボール リーグの事例

Azure Cognitive Search and Basketball flowchartコンテンツ理解のための AI ファースト アプローチである Azure Cognitive Search がプレビューとしてリリースされました。ナレッジを抽出する組み込みの認識スキルによって Azure Search の機能を拡張します。このナレッジは検索インデックスに構造化、格納され、データ探索の新しい方法を可能にします。

NBA が Cognitive Search、Cognitive Services、カスタム モデルを活用 (英語) して実現したリッチなデータ探索の事例をご覧ください。これは、//Build 2018 の基調講演 (英語) でも紹介されました。

詳細は、ブログ記事「Cognitive Search の紹介: Azure Search と認識機能 (英語)」をご覧ください。

5. Bot Framework V4 SDK

Azure Bot Service icon image9 月に Bot Framework V4 SDK がリリースされ、開発者が幅広い言語を活用できるようになりました。C# と JavaScript は一般提供、Python と Java はプレビューとなります。また、優れた拡張性により、ダイアログ管理や機械翻訳などの接続可能なコンポーネントが揃う活気あるエコシステムを利用できます。Bot Framework にはエミュレーターや CLI ツールも含まれているため、ボットによるさまざまな言語認識サービスの作成と管理を効率化できます。現在サービスの利用者は 34 万人を超えて拡大中です。

詳細は、対話 AI の最新情報をご覧ください。

AI ツール & フレームワーク

ツールやフレームワークに関しては、Visual Studio Tools for AIAzure Notebooks (英語)Data Science VMAzure Machine Learning Studio (英語)ONNX (英語)AI Toolkit for Azure IoT Edge (英語) などが注目されています。

6. Visual Studio Code のデータ サイエンス機能

Visual Studio Code screenshot11 月に、Visual Studio Code 向け Python 拡張機能としてデータ サイエンス機能がリリース (英語) されました。これは Visual Studio Code でデータをインタラクティブに操作できる機能です。データ サイエンス タスク用のエディターとして、データの探索や機械学習モデルのアプリケーションへの組み込みを Visual Studio Code で行えるようになります。

Visual Studio Tools for AI についてのブログ記事 (英語) では、新しい AI 機能の活用方法を詳しく説明しています。

7. オープン ソースの ONNX ランタイム

Image of computer chip representing a brainONNX ランタイムがオープン ソース化されました。ONNX は、機械学習モデルを定義するためのオープン フォーマットであり、PyTorch、TensorFlow、SciKit-Learn など、最適なフレームワークやツールを選択して使用できます。ONNX ランタイムは、ONNX 仕様を完全にサポートした初の推論エンジンで、通常のパフォーマンスは 2 倍に向上します。

マイクロソフトでは、ONNX ランタイムを使用してスコアリング時間の改善やモデルの効率化を図っています。ONNX に切り替えたモデルは、以前のソリューションでのスコアリングと比較して平均 2 倍のパフォーマンス向上が見られました。Qualcomm、Intel、NVIDIA などのハードウェア企業は、それぞれのカスタム アクセラレータと ONNX ランタイムの統合 (英語) を積極的に進めています。

詳細は、ブログ記事「ONNX ランタイムがオープン ソースに (英語)」をご覧ください。

8. ML.NET と Windows 開発者向け AI プラットフォーム

Image of various components of a Network and AI platform新しいオープン ソースのクロス プラットフォーム機械学習フレームワークである ML.NET (英語) がリリースされました。Office や Windows の AI 機能を支えるこのテクノロジは、Github のプロジェクト (英語) として公開されています。

さらに、Windows 開発者向け AI プラットフォーム (英語) では、Windows ベースのデバイス上で ONNX モデルをネイティブに実行 (英語) することができます。

動画付きブログ記事「3 行のコードと Windows Machine Learning で .NET 開発者が Windows 10 デバイスでローカルに AI を実行する方法 (英語)」では、この AI プラットフォームの使用例を紹介しています。

AI インフラストラクチャ

このカテゴリでは、Azure のデータベース サービスAzure Kubernetes Service (AKS) などのコンピューティング サービス、GPU や FPGA などの AI チップのサポートが注目されています。

9. Azure Databricks

Azure Databricks icon imageApache® Spark™ ベースのコラボレーティブ分析プラットフォームである Azure Databricks がリリースされました。このプラットフォームは高速で使いやすく、Azure に最適化されています。現時点で Azure Databricks とネイティブに統合できるサービスは、Azure Blob StorageAzure Data FactoryAzure SQL Data WarehouseAzure Cosmos DB です。これにより、最新のデータ ウェアハウス、高度な分析、リアルタイムの分析シナリオをサポートする新しい分析ソリューションを実現できます。

詳細は、ブログ記事「Ignite 2018 – Azure Data により AI をビジネスにとってリアルな存在に」をご覧ください。

10. Azure Machine Learning と統合された Project Brainwave

Image of man holding a computer hardriveAzure Machine Learning と統合した Project Brainwave のプレビュー (英語) が発表されました。これにより、ハードウェア アクセラレーションを活用したリアルタイムの AI 向け推論が Azure で利用できるようになります。Project Brainwave アーキテクチャは Intel の FPGA (Field Programmable Gate Array) に搭載されています。FPGA は、リアルタイムでの AI 計算を低コストかつ最小のタイム ラグで実現するコンピューター チップです。

Project Brainwave をエッジに組み込むことも可能です。つまり、システムがネットワークやインターネットに接続されていない場合でも、この処理速度をお客様のビジネスや施設で活用できます。

詳細は、ブログ記事「リアルタイム AI: Project Brainwave のプレビューを発表 (英語)」をご覧ください。

AI が新たなスタンダードに

Image of a book titled, The Furture ComputedAI によってデジタル トランスフォーメーションが拡大します。マイクロソフトは、AI の利用を促進することで、開発者、データ サイエンティスト、企業が人間の頭脳を拡張 (英語) するシステムを構築して、重要な課題に取り組めるようになると確信しています。

今や AI は当たり前のものとなりました。マイクロソフトは、20 年以上にわたる AI 研究 (英語) の成果を製品やサービスに応用してきました。こうした AI 機能は、Excel や Power BI などのシンプルで強力な生産性向上ツールでユーザーの皆様にご利用いただけるようになりました。

AI をさらに広く普及させるために、マイクロソフトは、Power BI 向けの新しい AI 機能 (英語) をリリースしました。これにより、Power BI ユーザーの皆様がデータから有用なインサイトを掘り起こし、使いやすい AI をビジネスに活用できるようになります。また、新しい機能はコーディング不要です。主な機能は以下のとおりです。

  • Azure Cognitive Services との統合
  • 重要なビジネス指標への影響度を把握する要因分析機能
  • Power BI での Automated ML を使った機械学習モデルの作成
  • Power BI 内でのシームレスな Azure Machine Learning 統合

2019 年の取り組み

マイクロソフトは、企業の皆様にグローバルに拡張可能な AI アプリケーションを構築していただけるよう支援する取り組みを進めてきました。この取り組みではマイクロソフトの既存のお客様、MVP、開発者、パートナーの皆様に多大なご協力をいただき、心から感謝いたします。2019 年は無限の可能性に満ちています。新しい機能をお届けすることを楽しみにしています。皆様はこの 1 年に Azure でどのようなソリューションを構築されるのでしょうか? 本年もどうぞよろしくお願いいたします!