Azure IoT Edge の一般提供開始により、エンタープライズ レベルの大規模なデプロイメントを実現

執筆者: Sam George (Partner Director, Azure Internet of Things)

このポストは、2018 年 6 月 27 日に投稿された Azure IoT Edge generally available for enterprise-grade, scaled deployments の翻訳です。

 

1 年前に Azure IoT Edge をご紹介して以来、工場の作業現場から農家まで、数多くの実例において、IoT デバイスで直接クラウド インテリジェンスを実行することの効果が見られています。デバイスはリアルタイムのデータに即座に対応できるようになり、航空写真からパイプの亀裂を認識したり、機器が故障する前に予測したりといったことが可能になりました。ユビキタス コンピューティングの世界の実現に向けて進化する中で、ハードウェア、エッジ、クラウドにまたがる IoT ソリューションの実用化による効果を生み出すためには、一貫性と安全性を備えた設計が必要になります。そこで今回、全世界で Azure IoT Edge の一般提供が開始されました。これにより企業のお客様は、エッジ ソリューションを運用環境で利用できるようになります。

また、Azure IoT Edge に強力な新機能が導入されたことで、インテリジェンスを簡単に開発し、エッジにデプロイできるようになりました。今回の強力な更新により、Azure IoT Edge は、エンタープライズ レベルのエッジ デプロイメントを可能にする真のエンドツーエンド ソリューションとなります。
 

インテリジェントなアプリケーションを開発して Azure IoT Edge にデプロイするための新機能

選択肢を広げるオープン化と柔軟性

  • オープン ソースの Azure IoT Edge: 今回の一般提供開始に伴い、IoT Edge はオープン ソース化され、GitHub で公開されました (英語)。これは、Azure IoT Edge のオープン ソース サポートの取り組みを引き継ぐものです。開発者にとってはエッジ ソリューションの柔軟性と制御性がさらに向上し、ランタイムやデバッグの問題を修正できるようになります。
  • Moby コンテナー管理システムのサポート: Moby は Docker の基盤となるオープン ソース プラットフォームであり、コンテナー化、分離、管理の概念をクラウドからエッジ デバイスに拡張することができます。Moby コンテナーは Docker ベースのシステムで動作し、Docker コンテナーは Moby ベースのシステムで動作します。既存の (Docker ベースの) モジュールに対する変更は必要ありません。
  • エッジ向けの認定ハードウェアとソフトウェアのエコシステム: Azure Certified for IoT プログラムの拡張により、デバイス管理やセキュリティといったエッジの主要機能が認定されます。既に認定を取得しているエッジ ハードウェアの一覧については、デバイス カタログでご確認いただけます。Azure Certified for IoT プログラムの詳細については、こちらのブログ記事 をご覧ください。ハードウェア以外にも、開発者は Azure Marketplace で提供が開始された構築済みのエッジ モジュールを使用することで、エッジ ソリューションの開発を迅速化できます。

規模を拡大するソリューション向けにハードウェアからクラウドまでのセキュリティを確保

  • Azure IoT Device Provisioning Service: Azure IoT Edge と Device Provisioning Service の緊密な統合により、ゼロタッチ プロビジョニングが可能になり、事業者が介入することなく現場でデバイスを簡単にプロビジョニングできるようになります。Device Provisioning Service を使用することで、何万台ものデバイスを安全にプロビジョニングし、真の大規模なエッジ デプロイメントを実現できます。
  • Azure IoT Edge Security Manager: IoT Edge デバイスとそのすべてのコンポーネントを保護する多角的なセキュリティ コアとして機能し、セキュリティ保護されたシリコン ハードウェアを抽象化します。これはセキュリティ強化における中心的な要素であり、OEM が選択したハードウェア セキュリティ モジュール (HSM) に基づいてデバイスを強化する機会がもたらされます。
  • Automatic Device Management (ADM) : デバイスのメタデータに基づき、グループ化されたデバイスに IoT Edge モジュールを大規模にデプロイできるようにするサービスです。適切なメタデータ (タグ) が付与されたデバイスがグループに追加された場合、ADM によって適切なモジュールが提供され、エッジ デバイスが正しい状態になります。

新しいシンプルになった開発者エクスペリエンス

  • モジュール SDK の広範な言語サポート: Azure IoT Edge では現在、C#、C、Node.js、Python、Java など、エッジ サービスの中で最も多くの言語をサポートしており、任意の言語でエッジ モジュールをプログラミングできます。
  • VSCode 用ツール: VSCode でコーディング、テスト、デバッグ、デプロイのすべてを実行することにより、モジュール開発を簡素化できます。
  • VSTS の CI/CD パイプライン: 開発からテスト、ステージング、最終的なデプロイメントまで、Azure IoT Edge モジュールのライフサイクル全体を管理できます。これらはすべて、開発者にとって既に馴染みのあるツールを使用して、VSTS で行うことができるようになりました。

上記の更新は、最近の動向と先月の //Build 開発者向けカンファレンスの発表に続くものです。このカンファレンスでは、マイクロソフトの AI サービスの統合、Kubernetes のコンテナー サポート、新しいパートナーシップ、DJI のドローンや Qualcomm の Vision AI 開発者キットといったサードパーティ製ハードウェアのエッジへの統合など、IoT Edge の新機能が発表されました。
 

お客様やパートナー様の動向

プレビューをご利用のお客様は、Azure IoT Edge でサポートされているマイクロソフトの AI サービスを使用して、遠隔地や接続の信頼性が低い場所でもインサイトをリアルタイムで取得できる高度なソリューションを開発しています。その一例が、大手エネルギー企業の Schneider Electric です。同社では、機器の故障の兆候を通知する予知保全 (英語) を行うことで、安全を脅かす有害な廃棄物の発生を回避しています。また、ワシントン州カーネーションの農家 (英語) では、Azure IoT Edge で DJI のドローンとマイクロソフトの FarmBeats ソリューションを使用して精密農業を行っています。以下に、お客様やパートナー様からの声の一部をご紹介します。

  • 「Chevron は、世界を動かすエネルギーの生産に力を注いでいます。安全性と信頼性を継続的に向上させ、当社の業績を向上させるためには、最新のテクノロジを使用してイノベーションを進めることが不可欠です。エッジ コンピューティングは、クラウドと IIOT の次なるイノベーションです。Azure Stack で Azure IoT Edge を実行できるため、接続が制限または中断される遠隔地でもデバイス上で直接実行できるインテリジェントなアプリケーションを使用して、稼動中の機器の稼動状況に関してより多くのインサイトをリアルタイムで取得し、稼働率を向上できると考えています」 – Chevron フェロー兼 IIOT Center of Excellence 責任者、Deon Rae 氏
  • 「大手産業機器メーカーである当社は、クラウド インテリジェンスを活用して機器の稼動状況やメンテナンスが必要になる時期を把握しています。Azure IoT Edge を使用することで、このインテリジェンスをデバイス レベルでも活用し、24 時間体制で接続できない場合でも、故障やメンテナンスをリアルタイムで予測できるようになると考えています」 – Weir Group、IoT 担当グループ製品管理ディレクター、Alasdair Monk 氏
  • 「Vulcan Steel では、安全な作業環境の推進に取り組んでいます。マイクロソフトの協力のもと、AI と Azure IoT Edge を使用することで、エッジでクラウド インテリジェンスを活用して毎日数千もの映像を確認し、トラックの積み降ろしの作業時に事故につながる可能性のある危険な行動を特定して、安全性を向上できると考えています。このリアルタイムのインテリジェンスにより、予防に関するインサイトを使用して、トレーニングを実施し、従業員の安全性を向上させることができます」 – Vulcan Steel、CIO、James Wells 氏
  • 「Amano McGann は、北米におけるスマート パーキングおよびアーバン モビリティ業界に先進的かつ革新的なテクノロジを提供することに定評を得ています。当社では、Microsoft Azure を使用した取り組みを Azure IoT Edge によってエッジに拡張することで、接続の有無を問わず、サービスの信頼性と稼働率を向上させています。業界最大規模の非常に経験豊富なエンジニアと研究開発のスペシャリストが、技術的に優れた製品を市場にもたらすべく取り組んでおり、これらをエッジの次なるイノベーションとして提供することを誇りに思っています」 – Amano McGann、エンジニアリング サービス担当シニア バイス プレジデント、Rohit Chande 氏
  • 「Redis Labs は、IoT Edge ソリューションに関して Microsoft Azure とパートナー提携を行うことを嬉しく思っています。2 社ともエッジでのインテリジェンスとコンピューティングを加速するために多大な労力と資金を投資しているため、これは自然なパートナーシップだと言えます。Azure IoT Edge ソリューションに Redis Enterprise を組み合わせることにより、両社の共通のお客様とパートナー様に、エッジ ソリューションの高速なパフォーマンス、インメモリ処理、高可用性といったメリットを提供できます。Azure IoT Edge と Redis Enterprise を併用することで、より短期間のうちにエッジ ソリューションのビジネス価値を実現できます」 – Redis Labs、IoT & 最新テクノロジ担当バイス プレジデント、Rob Schauble 氏
  • 「マイクロソフト製品と Azure で標準化し、IT インフラストラクチャを大規模な産業用エッジ デプロイメントに拡張したいと考えるお客様のために、Moxa は Azure IoT Edge を選択しました。戦略的パートナーとして Microsoft Azure と統合することで、お客様は既存の生産環境に IIoT エッジ ゲートウェイを簡単にデプロイし、Moxa の 30 年にわたる業界の専門知識を利用して、接続、長期的な産業用 Linux のサポート、広範な産業用接続などを実現できます」 – Moxa、営業 & マーケティング担当エグゼクティブ プレジデント、Bee Lee 氏

Azure IoT Edge の料金

Azure IoT Edge のデプロイメントには、Azure IoT Edge ランタイム、Azure IoT Hub、エッジ モジュールという 3 つのコンポーネントが必要です。Azure IoT Edge ランタイムは無料で、オープン ソース コードとして公開される予定です。エッジ デバイスの管理とデプロイメントには、Azure IoT Hub インスタンスが必要です。既にお客様の IoT ソリューションに使用していない場合は、別途ご購入ください。マイクロソフトが提供するサービスの料金の詳細については、こちらのページをご覧ください。

Azure IoT Edge を使用してインテリジェントなエッジ用アプリの開発を開始

今春、マイクロソフトはイノベーションを加速すると共に、IoT ソリューションを開発するお客様のエクスペリエンスを簡素化するために、今後 4 年間でインテリジェント エッジと IoT に 50 億ドルを投資 (英語) することを発表しました。今回の発表は、IoT とエッジの最新のイノベーションの一例です。今回の発表に伴い、お客様がすぐに開発を開始できるように、チュートリアル、デモ、動画も公開しました。Azure IoT Edge をぜひ開発にご活用ください。