ハイブリッド アプリケーションのイノベーションを促進する Azure Stack の TP3 をリリース – 従量課金制モデルの導入も発表

執筆者: Jeffrey Snover (Technical Fellow, Microsoft Enterprise Cloud Group)

このポストは、3 月 1 日に投稿された Azure Stack TP3 Delivers Hybrid Application Innovation and Introduces Pay-as-you-Use Pricing Model の翻訳です。

 

企業が成長を加速させ、他にはないカスタマー エクスペリエンスを生み出すためには、クラウド テクノロジをベースとした革新的なアプリケーションを開発することが重要です。従量課金で利用できるクラウド テクノロジを採用したアプリケーションは今や珍しくありません。マイクロソフトの目標は、ハイブリッド クラウド環境を採用している企業でも、自社のビジネス目標とアプリケーション設計に合わせてこれと同様の柔軟性とイノベーションを実現できるようにすることです。Azure Stack を通じて私たちが Azure テクノロジをオンプレミスに拡張している理由はここにあります。これに関連して、今回は Azure Stack に関する最新情報をお知らせします。

  • TP3 のダウンロード提供: 本日より Technical Preview 3 (TP3) のダウンロード (英語) が開始されました。アプリケーションをさらに刷新する機能や、Azure に接続できない場所で運用する機能が追加されたほか、インフラストラクチャとセキュリティに関する機能強化が実施されています。
  • パッケージと価格モデル: Azure Stack では、従量課金制を通じてクラウドの経済モデルをオンプレミスに提供します。
  • ロードマップの更新: TP3 のリリース後まもなく、TP3 で Azure Functions を実行できるようになります。その後、Blockchain (英語)Cloud Foundry (英語)Mesos (英語) の各テンプレートにも対応する予定です。Azure Stack の一般提供が開始されるまでも、それ以降も、継続的なイノベーションが提供されます。TP3 は予定されている Technical Preview の最後のメジャー アップデートで、2017 年中旬には Azure Stack 統合システムの受注が開始されます。

オンプレミスへの Azure の拡張

Azure Stack は、クラウドおよびオンプレミス環境で新しいアプリの開発や既存アプリの刷新を検討している企業のお客様向けに、次のような 3 つの独自のハイブリッド クラウド シナリオを実現可能にします。

  • ハイブリッド アプリケーション開発の一貫性を確保: 人材、プロセス、アプリケーションに投資している企業は、それらを Azure と Azure Stack 間で移行できます。また、スキルの習得を目指している個々の開発者は、Azure を使用している企業であればどこでもそれらのスキルを活用できます。Azure と Azure Stack に一貫性があるため、企業としてはプロジェクト間での異動が容易な即戦力となるスタッフを、世界中の人材プールから採用することができます。Azure のスキルを持つ人材は、プロジェクト、チーム、DevOps プロセス、企業を問わず容易にキャリアを選択できます。なぜなら、API、Portal、PowerShell コマンドレット、Visual Studio のすべてでエクスペリエンスが共通 (英語) しているからです。
  • Azure サービスをオンプレミスで利用可能に: インフラストラクチャ サービスとプラットフォーム サービスは、次世代アプリケーションのイノベーションを促進します。企業は Azure IaaS および PaaS サービスをオンプレミス (英語) で提供できるため、自社のビジネス要件と技術要件に基づいて、ハイブリッド クラウド コンピューティングの採用が可能になります。また、パブリック展開、サービス プロバイダー利用、オンプレミス展開というデプロイメント モデルの適切な組み合わせを柔軟に選択できます。アプリを別の環境にデプロイする必要があると判断した場合は、アプリを変更することなく簡単に移行できます。
  • 専用システムでオペレーショナル エクセレンスを実現: 企業がビジネスの推進に集中できるように、Azure Stack 統合システムは、Azure のイノベーションを予測可能な形で、サービスが中断されることなく継続的に組み込める (英語) ように設計されています。

Azure と Azure Stack のハイブリッドのユース ケース

クラウド戦略についてお客様にお話を伺ったところ、ハイブリッドは安定した運用モデルとして期待を集めていることがわかりました。このことから、マイクロソフトは以下の主要なシナリオで Azure Stack を通じてお客様のクラウド戦略をサポートします。

  1. エッジおよび非接続ソリューション: レイテンシおよび接続性の要件に対応するために、データをローカルの Azure Stack で処理してから、Azure で集約とさらなる分析を行います。アプリケーション ロジックは、Azure Stack と Azure で共通です。
  2. クラウドとオンプレミスで一貫した最新アプリケーション: オンプレミスとクラウドで一貫性のある DevOps プロセスを使用しながら、Azure の Web およびモバイル サービス、コンテナー、サーバーレス、マイクロサービスの各アーキテクチャを利用して、Azure Stack で従来のアプリケーションを更新、拡張します。
  3. あらゆる規制に対応するクラウド アプリケーション: Azure で開発、デプロイしたアプリケーションを規制やポリシーの要件に対応させる場合に、コードを変更することなく柔軟に Azure Stack 経由でオンプレミスにデプロイします。

工場におけるオートメーションの課題、クルーズ船や採鉱などでの遠隔使用のニーズ、政府システムなどの分離要件を抱える企業のお客様は、最先端の設計でクラウドでの開発とオンプレミスへのデプロイを行うことができます。

Azure Stack TP3 の新機能

Azure Stack TP3 では、製品の改良を目指してお客様と協力し、TP2 からは多数のバグ修正と更新を実施したほか、デプロイメントの信頼性と互換性の向上を図りました。Azure Stack TP3 では次のことが可能です。

  • 非接続環境のシナリオで ADFS を使用してデプロイする
  • スケールアウト ワークロードに Azure Virtual Machine Scale Sets を使用する
  • Azure Marketplace からコンテンツを配信して Azure Stack で利用できるようにする
  • Azure の D シリーズの VM サイズを使用する
  • Azure と一貫性のある一時ディスクを使用してテンプレートをデプロイ、作成する
  • セキュリティが強化された独立した管理者ポータルを使用する
  • IaaS と PaaS への機能強化を活用する
  • アラートの改良など、強化されたインフラストラクチャ管理機能を使用する

ロードマップの更新

マイクロソフトの継続的なイノベーション モデルの一環として、TP3 のリリース後まもなく、Azure Functions、VM 拡張機能の配信、マルチテナントのサポートを追加します。その後、Blockchain、Cloud Foundry、Mesos のテンプレートなど、新しいワークロードにも対応する予定です。TP3 の更新は、2017 年中旬の一般提供開始時まで継続されます。

2017 年中旬には、PoC (概念実証) デプロイメントの名称が Microsoft Azure Stack Development Kit に変更されます。この単一のサーバー開発/テスト ツールでは、ハイブリッド アプリケーションのプロトタイプを作成して検証を行うことができます。このツールは、Azure の新機能をお客様に迅速に提供するために Azure Stack が採用する継続的なイノベーション モデルの重要な一要素であり、新しい更新プログラムを早い段階で配布して、お客様による試用、学習、フィードバックの提供を可能にします。

TP3 は、一般提供開始前に予定されている Technical Preview の最後のメジャー アップデートです。Azure Stack Development Kit の一般提供開始と同時に、Azure Stack ソフトウェアをハードウェア パートナー各社にリリースし、2017 年中旬のマルチサーバーの Azure Stack 統合システムの提供に向けた共同開発作業の最終段階を完了します。

一般提供開始後も、頻繁に更新を行うことで継続的に新機能を提供してまいります。一般提供開始後の最初の更新では、1) アプリケーションの刷新シナリオの強化、2) システム管理と拡張の強化という 2 つの分野に焦点を当てます。これらの更新により、アプリケーション開発時の IaaS および PaaS テクノロジの選択肢が拡大すると共に、管理性が向上します。また、Azure Stack がカバーする範囲を広げ、拡大するアプリケーションのポートフォリオに対応します。

従量課金制を通じてクラウドの経済モデルをオンプレミスに拡張

Azure Stack では、従量課金制を通じてクラウドの経済モデルをオンプレミス (英語) に提供します。Azure と同様に、Azure Stack で Azure サービスを使用するためにライセンス費用を前払いする必要はなく、サービスを利用した場合にのみ料金をお支払いいただきます。サービスは Azure と同じ扱いとなり、請求書やサブスクリプションも共通です。サービスは通常 Azure と同じ単位で測定されますが、お客様が独自のハードウェアと設備を運用するため、料金は安くなります。お客様が測定情報を Azure に送信できない場合には、システムのコア数に基づく固定料金の「容量モデル」が提供されます。

Azure Stack ハードウェアの販売は、ハードウェア パートナーの Dell EMC、HPE、Lenovo、(今年後半に加わる予定の) Cisco が行います。ハードウェア パートナー各社の協力により、統合システムの基盤となるハードウェアについて、従量課金制を含む柔軟な購入オプションを提供できることを嬉しく思います。

詳細な価格情報については、マイクロソフトおよびハードウェア パートナー各社のアカウント担当者にお問い合わせください。

まとめと今後のステップ

世界中のあらゆる業界のすべての企業が、単にデジタル テクノロジを使用するだけの企業から、真のデジタル企業へと変身を遂げています。マイクロソフトは、企業がそれぞれのお客様に向けて常に進化した製品を開発し、成長できるように支援しています。

Azure と Azure Stack 統合システムにより、企業はアプリケーション ポートフォリオを戦略的なビジネスの差別化要因に転換することに労力と人材を集中的に投資することができます。このアプローチにより、お客様はビジネス ニーズに最適な方法でアプリケーションをデプロイ、運用するための選択肢と柔軟性を得ることができます。また、IT 部門は、開発チームにセルフサービス プロビジョニングとクラウド サービスを提供して支援すると共に、開発チームと協力してビジネス ポリシーやビジネス要件に対応する DevOps ワークフローを確立することで、はるかに大きな価値を実現できます。

Azure Stack の詳細と Azure Stack TP3 のダウンロードについては、こちらのページ (英語) をご覧ください。

Jeffrey Snover
Azure インフラストラクチャおよびマネジメント テクニカル フェロー
Twitter (@jsnover)