LinuxCon の現地から: マイクロソフトのオープンソースの取り組みに関する最新情報

執筆者: Wim Coekaerts (CVP, Enterprise Open Source)

このポストは、8 月 22 日に投稿された Live from LinuxCon – Sharing the latest news and learnings on Microsoft’s open journey の翻訳です。

 

皆様、こんにちは。私は今カナダのトロントにいます。なぜトロントにいるかと言うと、実は今回マイクロソフトの代表として LinuxCon North America の基調講演を任されることになりました。この基調講演では、マイクロソフトのオープンソース関連のさまざまな開発事例や、Linux やオープンソースの取り組みの中で学んだことなどをお話しする予定です。もちろん、お客様やパートナー様とお会いしたり、久しぶりの友人の近況を聞けることも楽しみです。

この 2 ~ 3 か月は、「なんでマイクロソフトに移籍したの?」と何度質問されたかわかりません。Linux を押していた私の立場からすると、外から見てマイクロソフトがオープンな会社だったかと聞かれたら、お世辞にも Yes とは言えません。しかし、何人かのマイクロソフトの経営陣と話しをしていく中で、「マイクロソフトはもう、閉鎖的だった時代から抜け出した」ということも実感したのです。

お客様の今日の環境を見てみると、さまざまなツールやプラットフォームを駆使して事業を運営していることがわかります。つまりお客様は、Linux と Windows のいずれにも対応するツールとアプリケーションを実行できるクラウドを必要としています。私は以前、マイクロソフトが Linux に巨額の投資をしていることに驚いたことをお話ししました (linux.com (英語) 参照)。.NET Core、PowerShell、SQL Server を Linux に対応させ、Visual Studio Code や PowerShell もオープンソース化していました。コミュニティ プロジェクトにも積極的に貢献していました。これはとても素晴らしいことです。

マイクロソフトのオープンソースと Linux に関する最新の取り組みの成果

今マイクロソフトが特に力を入れているのは、オープンな管理ソリューションを提供することです。今日お客様は、マルチクラウド、マルチ OS の環境の複雑さを軽減するシンプルな統合ツールセットを必要としています。こうした声にお応えするために、マイクロソフトは先週 PowerShell のオープンソース化と Linux 対応を実現しました。これで Windows ユーザーも Linux ユーザーも、PowerShell のおなじみのコマンドライン シェルとスクリプト言語を使ってほぼすべての環境からほぼすべての項目を管理できるようになりました。PowerShell をオープンソース化する取り組みと、その基となったお客様中心という考え方については、私の同僚 Jeffrey Snover か執筆した良い記事がありますのでこちらからお読みください。

私たちは他にも、Azure をはじめとするクラウド環境のアプリケーションとワークロードを包括的に可視化、制御する Microsoft Operations Management Suite (OMS) を、Linux 環境管理の定番ツールにするための取り組みも行っています。具体的には先週 OMS Monitoring Agent for Linux の一般提供を開始し、お客様が求める Linux ワークロードの詳細な分析、リアルタイムの可視化、スピーディな問題対応にお応えできるようにしました。また、Fluentd を採用したり Auditd と統合するなど、追加されるツールの多くがオープンソースベースのものになっています。

そして本日、OMS Docker コンテナーの監視機能のプレビューを開始しました。コンテナーの軽量でプロビジョニングが容易という特性を考えると、管理や深刻な問題にすばやく対応するには統合監視のしくみを構築することが必要になります。OMS Docker コンテナーの監視機能なら、コンテナーの実行環境がクラウドであってもオンプレミスであっても、コンテナーのインベントリ、パフォーマンス、ログを一元的に可視化できるため、コンテナーの使用状況を簡単に把握して問題を診断することができます。これらの機能については、Mark Russinovic が 6 月の DockerCon でデモを行いました。皆様もぜひその目で機能をお試しください。

マイクロソフトがこれまでに学んだこと、そしてこれから

マイクロソフトはオープンソースのアプローチの中でさまざまなことを学び、考え、たくさんの重要なマイルストーンを達成してきました。インフラストラクチャへの投資、コミュニティとの連携における新たなガバナンス プロセス、お客様とパートナー様の声を集めるための新しいフィードバック システム、すべての組織に最適なエクスペリエンスを提供するためのパートナーシップの強化などです。明日の基調講演では、これまでの経験がどのように Linux エコシステムに還元されているか、オープンソースに対するマイクロソフトのアプローチとはどのようなものか、そのアプローチが Linux ユーザーに何をもたらすのか、そうしたアプローチのレベルアップのために私とチームがどのように取り組んでいるかについてお話ししたいと思います。

現在 Azure 上の VM の 3 分の 1 で Linux が稼働しています。Azure で Linux をサポートするという経験があってこそ、お客様との関係をより深め、この変化の激しい市場で成功するためにお客様に何が必要なのかが以前よりもよくわかるようになりました。その結果私たちは、マイクロソフトのプラットフォームをオープンソース ソフトウェアの実行に最適な環境にするために多くの投資を行っているのです。今後数ヶ月は、私をはじめチーム一丸となってこの取り組みをさらに加速させてまいります。

マイクロソフトのプラットフォームで重視しているのは、選択肢と柔軟性の提供です。また、オープンソース プロジェクトへの貢献、オープンソース テクノロジとマイクロソフト プラットフォームの融合、エコシステムを通した商業ベンダーやコミュニティとのパートナーシップ強化も同様に重視しています。私たちが進めているのは、単なるオープンソース化や Linux 対応ではありません。オープンソース プロジェクトに積極的に参加し、貢献することです。OMI と Fluentd への投資、Chakra や TypeScript での取り組み、その他数多くのプロジェクトがそのことを物語っています。もちろんマイクロソフト リサーチ部門も数々の優れた成果を上げています。これは私とチームが新たに学んだことでもありますが、この取り組みをさらに進めるためには、コミュニティと連携し、コミュニティに利益をもたらしながら、マイクロソフトの貢献を持続的に発展させていくことが重要です。この点については、基調講演で実例をいくつか交えてお話ししたいと思います。

私がマイクロソフトに入社して数か月が経ちましたが、ここで働く毎日は本当に刺激的です。Linux とオープンソースはマイクロソフトの日々の事業活動にとってなんら違和感のある存在ではありません。社員にとっても製品にとっても、ビジョンや投資対象としても、そうなのです。これからのことを考えると本当にわくわくします。さらに多くのファーストパーティ製品、サードパーティ製品、テクノロジ、パートナーシップが誕生し、Linux とオープンソース テクノロジをお使いの皆様により快適なエクスペリエンスがもたらされるはずです。

LinuxCon にお越しの際は、ぜひ LinuxCon の 3 番ブースにお立ち寄りください。私と共にマイクロソフトのオープンソース チームがお待ちしています。私の基調講演に関する詳しい情報は Twitter でも発信しますのでフォローしてみてください。LinuxCon に参加されない方は、Azure.com サイトの Linux に関するページで Linux とオープンソース テクノロジに対するマイクロソフトの取り組みをぜひご確認ください。