SQL Server 2016 の一般提供開始

執筆者: Joseph Sirosh (Corporate Vice President, Data Group)

このポストは、6 月 1 日に投稿された SQL Server 2016 is generally available today の翻訳です。

ついに SQL Server 2016 の一般提供開始が発表されました。SQL Server 2016 は、世界最高クラスの処理速度とコスト効率を誇る HTAP (ハイブリッド型トランザクション/アナリティカル処理) を実現したデータ プラットフォームです。更新可能なインメモリ列ストア (英語) と、R Services (英語) を緊密に統合した高度な分析機能を備えています。複雑な分析処理モデルや機械学習モデルをデータベース内に展開でき、同様のモデルをデータベース外に展開した場合に比べて 100 倍以上の速さでインサイトを取得できます。

インテリジェント アプリケーション向けの新しいプラットフォーム

高度な分析機能をトランザクション データベースに統合できるようになったのは革新的です。現行の高度な分析アプリケーションの大半は、処理を実行する際にデータをデータベースからアプリケーション層に移すという古い手法を使用しています。この手法では、データの移動による大きなレイテンシが発生し、データ量の増大に応じたスケーリングができないうえ、アプリケーション層での分析モデルの管理作業や保守作業が負担となっていたうえ、負荷のかかる処理をいくつも経なければ、リアルタイムでの詳細な分析を実現することはできませんでした。

従来は分析処理を実現するために、分析対象のデータベースから分析用のデータベースを作成し、その上で分析処理を行っていましたが、SQL Server 2016 ではこのような処理を不要とすることで、企業データの管理をシンプルにし、分析作業を簡素化できます。すべてのデータをデータベース外部に移さずに内部で結合、集約して、高度な分析を安全に実行するという新しい概念が導入されているため、高速な並列処理でリアルタイムのトランザクションを分析することができます。その結果、分析アプリケーションの大幅な簡素化が可能となり、データベースに分析結果を問い合わせるだけで済むようになりました。また、アプリケーションの再コンパイルや再デプロイメントを行わなくても、分析モデルの更新や新しいモデルの配置、パフォーマンスの監視をデータベース内で実行できます。さらに、企業の分析モデルのセントラル サーバーとして利用できるため、複数のインテリジェント アプリケーションで同一のモデルを使用することが可能です。このように、企業におけるミッション クリティカルなインテリジェント アプリケーションの構築と管理が徹底的に簡素化されます。

この新しいデータベースによるメリットを活用している企業の一例が、PROS ホールディングスです。同社はデータ サイエンスによって B2B および B2C の顧客のビジネス目標達成を支援し、収益と利益の実現をサポートする企業です。SQL Server 2016 の優れたパフォーマンスと組み込みの R Services を活用 (英語) して、これまでの 100 倍以上の速度で高度な分析を処理し、顧客の利益拡大につなげています。同社の科学研究部門シニア ディレクターを務める Royce Kallesen 氏は、「マイクロソフトの R の並列処理と、高度なサーバー メモリ管理が SQL Server に統合されていることにより、セキュリティ機能が組み込まれている一般的なプラットフォームで格段に速く分析結果を得ることができます」と話しています。

分析時にデータベース外にデータを移動する必要がなくなるため、インサイトを得るまでのレイテンシが劇的に短縮されます。たとえば、クラウド スケールのオンライン ERP ソリューションである Microsoft Dynamics AX では、トランザクション テーブルで非クラスター化列ストア インデックスを使用してインサイトをリアルタイムに取得することで、数時間かかっていた集約時のレイテンシを数秒にまで縮小しています。

SQL Server 2016 は、クロス プラットフォーム分析をサポートする機能やツールを複数備えています。Polybase (英語) を使用すると、HadoopAzure Blob Storage (英語) などの外部データに対するクエリを実行できます。必要に応じて計算処理を Hadoop にプッシュできるため、大規模なデータ ストアのデータとリレーショナル ストア内のデータを結合、統合することができます。SQL Server に統合されている Microsoft R Services (英語) は、複数の Hadoop ディストリビューション上で実行可能で、Azure HDInsight および Spark とも統合されているため、どちらの選択も可能なうえ、分析コードの開発を標準化できます。さらに、R Tools for Visual Studio (英語) を使用すると、最新の Visual Studio IDE での R 言語の分析コード開発が容易になります。

最新ハードウェアの有効活用によりベンチマークでトップの性能を記録

SQL Server 2016 は画期的なレベルでパフォーマンスを最適化、効率化しており、パフォーマンスやスケールが新たなレベルへと進化しています。最新のサーバーは複雑なベクトル命令を多数のコアで処理でき、テラバイト単位のメモリを保持できるほか、ローカルのフラッシュ ストレージとの間で非常に高い I/O 帯域幅を実現します。このようなサーバーに同時並列処理による最適化が備わることで、大規模な処理が劇的に速くなり、大型の分散データベースをしのぐパフォーマンスを見せることも珍しくありません。

たとえば、最近マイクロソフトが Intel と協力して実施したデモでは、4 つの Intel Xeon E7 プロセッサを搭載した 1 台の SQL Server 2016 サーバーで、巨大な 100 TB のデータ ウェアハウス (英語) に対する驚くべきパフォーマンスを記録しました。TPC-H で生成された複雑なスキーマを 1 時間あたり 1.6 TB の速度で読み込み、100 TB のデータベース全体に対する複雑なクエリ (最小コスト サプライヤー クエリ) の実行はわずか 5.3 秒でした。また、クエリの同時実行においても非常に良好なパフォーマンスを発揮し、すべてのクエリを同時実行した場合、連続的に実行した場合よりも所要時間が短くなりました (下図参照)。スケール、パフォーマンス、効率の面においてこれだけの結果を収めたデータベースは、これまでに存在しません。

Intel100TB_Concurrency

業界標準のデータベース ベンチマークでも SQL Server のパフォーマンスの先進性が示されています。SQL Server は、業界標準のトランザクション処理ベンチマークの TPC-E (英語) と、データ ウェアハウス ベンチマークの TPC-H (英語) (非クラスター化部門の 30 TB (英語)10 TB (英語)3 TB (英語)1 TB (英語) の各スケール ファクター) で同時に首位を獲得した唯一のデータベースです。この結果は、他のデータベースよりもきわめて高い価値を示すものであり、ユーザーにとっては、OLTP とデータ ウェアハウスの両方のワークロードをシンプルな 1 つのシステムに統合して、総所有コストを大幅に削減できるということです。

前のバージョンから大幅にパフォーマンスが向上

SQL Server 2016 では、価格を据え置きながら大幅にパフォーマンスを向上させ、お客様に大きな価値をお届けすることを重視しました。多くのお客様からは、SQL Server 2016 にアップグレードしただけでワークロードのパフォーマンスが大きく向上したという声をいただいています。実際、同一ハードウェアで実行した 3 TB の TPC-H ベンチマークではパフォーマンスが 48% 向上しました。1

ここからは、アップグレードにより大きな成果が得られたお客様やパートナー様の例をご紹介します。

住宅情報の提供と分析を手掛ける RealtyTrac ( 英語 ) では、データ ウェアハウスに高い可用性と災害復旧機能を持たせるために、オンプレミスと Microsoft Azure にまたがる可用性グループで Always On を使用しています。また、セカンダリ レプリカにクエリをオフロードすることで、大幅なパフォーマンス向上を実現しています。同社の最高データ責任者を務める Richard Sawicky 氏は次のように述べています。「一部の抽出処理が最大 10 倍スピードアップしました。Azure のハイブリッド クラウド環境で SQL Server 2016 を実行していますが、大規模なデータ セットの管理に必要なすべての設定はあっという間に完了しました」。

Saxo Bank ( 英語 ) は、世界大手のオンライン トレード サービス企業の 1 つです。同社では、さまざまなテーブルで SQL Server 2016 の強化された列ストアを使用して分析速度を向上させました。Saxo Bank のデータ ウェアハウス アーキテクトを務める Francesco L’Erario 氏は次のように語っています。「クラスター化列ストア インデックスによりストレージ使用量が大幅に削減され、テーブルのディスク領域の使用を最大 80% カットできました。SQL Server 2016 の列ストアのおかげでクエリ パフォーマンスが 10 倍向上し、クエリの実行速度が最大 2 倍になりました」。

大手 SaaS EIM ベンダーの M-Files ( 英語 ) では、非常に重要なデータを SQL Server データベースに格納しています。M-Files の創設者であり CTO を務める Antti Nivala 氏は次のように述べています。「SQL Server 2016 でのリアルタイムOperational Analyticsにより、同一データ ソースから分析クエリを実行できるようになりました。特に重要なクエリでは 10 倍の速度が実現されましたが、運用ワークロードへの影響はほぼありませんでした。現在は、革新的なパフォーマンスを備えた 1 つのデータ ソースに当社の “分析データベース” を集約しています。データ ソースは、運用ワークロードとして機能する同一トランザクション境界内で SQL Server によって自動的に更されます。これは当社にとって非常に大きな強みです」。

SQL Server 2016 の機能は最初に Microsoft Azure でリリースされ、実在する 170 万以上の Azure SQL Databaseでストレス テストが行われました。一般提供開始前から大勢のお客様がオンプレミスの運用ワークロードを SQL Server 2016 で実行しており、多くの運用実績を積み重ねてきました。製品としての完成度が進んでいる確かな証です。

他に類を見ないセキュリティ実績

堅牢なセキュリティは、あらゆるビジネス アプリケーションで不可欠な要件です。データベースには企業の機密データや知的財産が大量に格納されます。データベースのセキュリティが不十分だと、企業全体がリスクにさらされることになります。

テクノロジ、ベンダー、製品のセキュリティ脆弱性 (英語) を監視する政府機関である米国標準技術研究所 (NIST) によると、6 年間の運用実績2 の中で SQL Server に見つかった脆弱性は、その他のどの主要データベース プラットフォームよりも少ないものでした。現在、SQL Server 2016 のセキュリティ機能はさらに進化しています。Always Encrypted (英語) では格納中およびメモリ内のデータを保護し、透過的なデータ暗号化機能ではパフォーマンスのオーバーヘッドを抑えながらすべてのユーザー データを暗号化します。Dynamic Data Masking (英語)行レベル セキュリティを使用すると、アクセスを制限してデータを保護するアプリケーションを構築することができます。

たとえば、DocuSign (英語) の場合、1 枚の書類、1 つのファイル キャビネットも使用しない承認ワークフローの構築を支援する企業として、今日のあらゆる企業との関係構築においては安全性と信頼性がきわめて重要となります。DocuSign ではサービス内のテレメトリ取得と監視に SQL Server 2016 を使用し、グローバルに顧客エクスペリエンスを監視し、問題の発見と解決を迅速に行っています。DocuSign の顧客は同社のサービスを利用してミッション クリティカルなワークフローを運用し、DocuSign は SQL Server を活用して同社のビジネス全体を展開しています。チーフ アーキテクト兼プラットフォーム担当副社長の Eric Fleischman 氏は次のように述べています。「自社プラットフォームに SQL Server を選択したポイントは、そのパフォーマンスとあらゆる種類のデータを管理できる機能です。きわめて大規模な銀行や保険会社、その他の金融機関から信頼を受けているからには、当社の環境には安全なソフトウェアを配置しなければなりません。Always Encrypted などの SQL Server 2016 の新機能は、お客様へのお約束どおりにサービスを配信するうえで不可欠なものです」。

他社製品にはない価値を提供

SQL Server 2016 は、あらゆる機能が組み込まれた包括的なデータ プラットフォームとして提供されます。インメモリ機能を搭載した強力なデータベース エンジンには、モダン アプリの構築を目的とした JSON のサポート (英語) や、Azure でデータをクエリ可能な状態に維持しながらストレージ コストを削減する Stretch Database (英語)、地理的に離れた場所に対する高速なクエリ実行のサポート、過去の時点に戻すことができる Temporal Tables (英語)、一貫したパフォーマンスを保証するクエリ ストアなど、独自の機能が含まれています。SQL Server Integration Services (SSIS)Data Quality Services (DQS)マスター データ サービス (MDS) といった強力なデータ統合機能もバンドルされています。また、世界最先端のデータ ウェアハウス機能に、R による高度な分析機能や機械学習が緊密に統合されており、世界最高クラスのビジネス インテリジェンス エンジンにはTabular モデルと多次元モデルが使用されています。あらゆるデバイスで使用可能なエンドツーエンドのモバイル BI ソリューション (英語) も提供され、セルフサービスの Power BI はわずかな追加コストで付加できます。下の表は、SQL Server パッケージの価値を競合製品と比較してわかりやすく示したものです。

TCO

現時点では、Oracle よりも高速で安全性の高いインテリジェント アプリケーションを配置することが可能であり、同じようなトランザクション、データ ウェアハウス、データ統合、ビジネス インテリジェンス、高度な分析のワークロードを実行した場合、Oracle を使用した場合に比べて総コストは 10 分の 1 以下になります。より多くのお客様に SQL Server 2016 を採用していただけるように、マイクロソフト以外の商用有料 RDBMS プラットフォームでアプリケーションやワークロードを実行しているお客様に向けて、特別価格の SQL Server ライセンスを使用して既存アプリケーションの移行を開始していただけるキャンペーンを実施しています。

データ、インテリジェンス、そしてクラウドの分野におけるマイクロソフト製品の機能の高さと幅広さは、業界アナリストとお客様の双方から認知されています。マイクロソフトは、ガートナーによるデータベース (英語)ビジネス インテリジェンス (英語)高度な分析 (英語)データ ウェアハウス (英語)クラウド インフラストラクチャ (英語)クラウド アプリケーション プラットフォーム (英語) の各分野のマジック クアドラントで、ビジョンの完全性と実行能力の両方の面からリーダーとして認定 (英語) された唯一の企業です。さらに、オペレーショナル DBMS の分野では、下図のように最高の評価を受けました。

GartnerMQ_ODBMS

Gartner Magic Quadrant for Operational Database Management Systems (2015 年 10 月)4 Azure SQL VM でテスト環境を構築すると、SQL Server 2016 の驚異的な性能を手軽にお試しいただけます。無料の開発者向けエディション (英語) では、すべての機能が提供されます。新機能の詳細については、SQL Server 2016 の Web ページをご覧ください。SQL Server 2016 の電子ブック (英語) もダウンロードしてご覧いただけます。

分析用の新機能、記録を打ち破るパフォーマンス、インメモリ処理、比類ないセキュリティ、他社をしのぐ提供価値など、これらのすべてを備える SQL Server 2016 は、データの蓄積と管理、分析によるインサイトの獲得、それらのミッション クリティカルな製品への反映を可能にするデータ プラットフォームとして最適なソリューションです。ぜひ今すぐお客様のビジネス刷新にデータ主導のインテリジェンスをご活用ください。

–Joseph Sirosh

 

1同一のマシン (Lenovo System x3850 X6) での SQL Server 2016 を使用した TPC-H 3 TB ベンチマーク (https://www.tpc.org/3319、英語) と、SQL Server 2014 を使用した TPC-H 3 TB ベンチマーク (https://www.tpc.org/3313、英語) の比較

2米国標準技術研究所、National Vulnerability Database の統計 (2016 年 2 月 1 日時点)、https://nvd.nist.gov/ (英語) 3https://www.oracle.com/us/corporate/pricing/technology-price-list-070617.pdf (英語) 4このマジック クアドラントのグラフは、より大規模な調査ドキュメントの一部としてガートナーから発表されたものであり、そのドキュメント全体の文脈において解釈されるべきものです。ガートナーのドキュメントは本文中のリンクから入手できます。ガートナーは、ガートナー・リサーチの発行物に掲載された特定のベンダー、製品またはサービスを推奨するものではありません。また、最高の評価を得たベンダーのみを選択するようテクノロジの利用者に助言するものではありません。ガートナー・リサーチの発行物は、ガートナー・リサーチの見解を表したものであり、事実を表現したものではありません。ガートナーは、明示または黙示を問わず、本リサーチの商品性や特定目的への適合性を含め、一切の保証を行うものではありません。