15 年以上前から MOS 認定資格を取得できる授業を行っている柳川高校 ~早くから ICT のスキルを身に付けることで卒業後の生徒はどのように変わっていくか【10/24更新】


福岡県・柳川市の柳商学園 柳川高等学校 (以下、柳川高校) は、テニス部や野球部が全国大会の常連となるスポーツ校であるだけでなく、難関大学を目指す普通科特進コースや、グローバルな人材を育てる国際科などもあり、生徒 1 人 1 人の可能性を広げる教育を行ってきました。

柳川高校では、いち早く ICT 教育に取り組み、2002 年に商業科マイクロソフト コースを立ち上げ、Microsoft Office Specialist 認定資格 (MOS) が取得できるように生徒を指導しています。大学生や就職後に取得することが多い MOS を高校生の段階から取得することで、生徒たちにはどのような効果が生まれているのでしょうか。柳川高校の古賀 賢 理事長兼校長をはじめ、先生方にお話をお聞きしました。

写真左より、教諭 情報マネジメント室 主事 山田 孝二 氏、副校長 森 繁光 氏、理事長兼校長 古賀 賢 氏、教諭 国際科 主幹 梅崎 光治 氏、教諭 教務部 古田 晃 氏

 

 

柳川グローバル学園構想を打ち出す柳川高校が ICT 教育を始めたきっかけ

 

―― 柳川高校では、現在どのような取り組みが行われているのでしょうか。

 

古賀 ICT 教育とグローバル教育を進化させていくことに取り組んでいます。柳川グローバル学園構想という計画を立て、2016 年 5 月に、タイ南部のナコンシータマラートに柳川高等学校附属タイ中学校を開校し、現地の子供たちを育てて、日本に留学できるようにしています。また、ラオス、ベトナム、インドネシアにも連絡事務所を立ち上げ、教育のグローバル化を行っています。

 

―― 海外の子供たちを日本の高校が教育することには、どのようなねらいがあるのですか。

 

古賀 日本が少子高齢化を迎える中で、社会を成立させていくためには、さまざまな国の人々の力が必要です。現在でも、さまざまな国の人が日本に来て一緒に働く環境になっていますが、この傾向は今後もっと進んでいくでしょう。しかし、教育の現場はいまだに日本人だけの環境となっている場合がほとんどです。これでは、社会に出たときにギャップを感じてしまうため、柳川高校では海外の子供たちを留学生として受け入れ、生徒がさまざまな国の人と触れ合って生活することで、卒業後の実社会で大きく役に立つと考えています。また、日本を好きでいてくれる国は多いですが、日本の教育の情報が少ないため、留学先は欧米を選ぶケースが多いので、日本でどのような教育が行われているかの情報を伝えるためにも、各国に連絡事務所を立ち上げています。

 

―― 商業科にマイクロソフト コースを設立した経緯を教えてください。

 

古賀 1999 年ごろから IT 革命や E-Japan 構想などが国から出され、ICT に注目が集まってきました。柳川高校も新たな方向性を模索していたのですが、ICT で新たな教育ができないかと考えて、当時のマイクロソフトの阿多社長に直接会いに行ったのがきっかけですね。効率的にコンピューターを仕事に活かせるようにするにはどうすればよいのかと考え、マイクロソフトと共に ICT 教育で手を組んで何かできないかと考えました。その結果、マイクロソフト コースを設立し、現在の MOS 認定資格を取得できるようにしたのです。企業が欲しがる即戦力となる人材を育てられると考えました。

 

―― 企業の方々からは、どのような評価を得ていますか。

 

古賀 毎年 6 月に企業を集めてキャリア ガイダンスを行い、マイクロソフト コースの授業内容や MOS について説明していますが、ハイレベルでスキルを身に付けていると理解してもらっています。キャリア ガイダンスの中での模擬面接の時点で、採用したいという話も毎年出てきています。

 

11 年連続 MOS 試験合格者数日本一を記録

 

―― MOS 取得のために、カリキュラムや教育でくふうされている点を教えてください。

 

 柳川高校には 200 台の PC があるのですが、マイクロソフト コースだけでなく、進学コースや特進コースなどの他の授業でも PC を使っているので、月曜から金曜までフル稼働の状態です。限られた枠の中で、時間割当をどのようにするかが重要ですね。また、生徒は限られた時間の中でしっかりと資格を取りたいという意欲が大きく、たとえば、大学が決まってから卒業するまでの間に集中的に学習して MOS を取得する特進コースの生徒もいます。教員も、一緒に放課後に残って、合格ラインになるまでていねいに指導しています。

 

 

 

 

 

梅崎 授業では、MOS の模擬テストを取り入れて、Microsoft Excel の関数などの難しいところを重点的に、反復して学習させるようにしています。生徒たちも、興味深く取り組んでくれていますし、やり始めてから MOS の重要性に気付いて、がぜん頑張る生徒も多いですね。去年卒業した生徒は、入学した時には Excel のことをまったく知りませんでしたが、一学期間教えると、自主的にどんどん勉強してきて、最終的には MOS 世界学生大会 2015 の日本代表選考で 1 位を取ることができました。また、2016 年 3 月には、高校生部門の MOS 試験合格者数 11 年連続日本一で表彰されていますし、マスター (規定の 4 つの MOS 試験に合格した人に送られる称号) まで取ってしまう生徒もいます。

 

 

 

 

 

山田 入学式で、マイクロソフト コースに関しては、MOS がどのようなものかを説明し、保護者の方にしっかり認知してもらう取り組みを 10 年くらい続けています。中学のころから Microsoft Office を使っている生徒はほとんどいないため、MOS を認知してもらい、将来役立つことを知ってもらうことが重要ですね。

 

 

 

 

大学で取得する MOS をいち早く高校で取得できる意味

 

―― MOS を取得して卒業した生徒は、どのような点で役立っていると言っていますか。

 

梅崎 今年、国際科を卒業した生徒は、大学から就職のために MOS を取ったほうがよいと言われたときに既に持っていると伝えると、授業でみんなに教えてほしいと言われたそうです。大学でも MOS は高く評価されていると思いますね。大学によっては、授業料とは別に講座料を取って MOS 専用講座を開き、就職に有利になると学生たちに受講させているところもあります。高校時代に取ってしまえば、新たに講座料を払うこともなく、大学で学ぶ時間を他の資格を取るために使ったり、研究などに使うことができると思います。

 

 大学の入学式で教授が大学 4 年間で Excel の資格を取ったほうがよいという話をしたときに、ある生徒は、MOS の Excel Expert を持っているけど、違う資格を取らなきゃいけないのかと思った、という話を聞きました。高校での MOS 取得は必須と思っていて、大学ではまた別の Excel の資格を取れると思ったたらしいのです。また、AO 入試で、他校の生徒が模造紙を使ってプレゼンテーションを行うのに対して、Microsoft PowerPoint で資料を作成して USB を持って行った生徒もいました。その生徒は、試験官にその資料は 1 人で作ったのか、と聞かれて、教師にグラフの色のアドバイスを受けたので、先生のアドバイスを受けましたと答えたと言います。プレゼンテーションの質が高かったので、試験官の方は高校の生徒が PowerPoint を使いこなせるわけがないという目で見ていて、教師に作ってもらったと勘違いしたのですね。その試験官の方に、我々の生徒は MOS を取得していることを伝えると、理解してくれて、もちろんその生徒は合格しました。柳川高校で MOS を取得することができてよかった、と言ってくれている卒業生は多いと思います。

 

 

先駆けて MOS を取得することがスタート ラインとなる

 

―― 進学ではなく、就職する場合、MOS はどのように役立っているのでしょうか。

 

梅崎 MOS というよりも、スマホ ネイティブな世代が、高校時代からしっかりとキーボードで入力できるようになって、スキルを身に着けるということが評価されていると思います。卒業生が就職した企業でも、MOS を教えている高校があるのかと言われたという話があり、そういった卒業生の話を聞くと、改めて我々の学校は進んだ ICT 教育をやっているんだという自信になります。ただし、高卒で就職する場合は、Excel や Microsoft Word で一から文書を作成する機会は少なく、作業ベースの仕事が多いため、企業側の MOS の認知度や業種業態、採用状況によって、評価は変わるのではないでしょうか。企業の業務ソフトの習得が早い、案内状などを作るように言われたときに要求+α の質で作ることができる、文書入力や仕事への理解が早いといった評価は得ていると思います。営業職で就職した生徒の場合は、PowerPoint を駆使して営業に役立てることができ、上司に高く評価されたという話を聞いています。もっと MOS の認知が上がれば、我々の生徒の評価も上がっていくと思います。

 

古田 私は、柳川高校に赴任してきて 6 年目で、以前は民間企業で社員に MOS を受けさせる立場でした。社会人が MOS を取得するのは、これまで培った Office のスキルを試し、スキルアップさせることが目的ですが、生徒は将来的に役立てるためのスタート ラインとして MOS を取得するものだと考えています。進学する生徒は、大学や短大から就職するときに役に立つし、就職して責任のある仕事を任されて実践的に Office を使うようになってから、MOS を持っていることが評価されるようになればよいと考えています。

 

 企業の方にも、柳川高校の卒業生はコンピューターを使えるということは浸透してきているし、そのうえで企業から求人が来ているとは思います。しかし、一方で、就職希望者が減ってきており、マイクロソフト コースを受けている生徒の就職希望は 1/3 以下というのが現状です。MOS を取得したうえで大学や専門学校に進み、より高度なスキルや資格を取っていきたいという流れになってきているのではないでしょうか。

 

 

 

 

グローバルでの新たな ICT 教育に取り組んでいく

 

―― 今後の柳川高校の ICT 教育や学校教育の展開について教えてください。

 

 柳川高校は、いち早く ICT 教育に取り組んできました。しかし、それよりも早く ICT 技術の進化やまわりの環境が進んできていると感じています。原点に戻って、しっかりとした ICT 教育を行えるように見直していくことも重要となってきます。将来的には、紙の教科書がなくなり、タブレットなどで授業を行うことになるでしょう。企業と教育の現場での ICT は違うと考えていて、やはり ICT と人間性の共存ということを教育の現場では忘れてはいけないと思っています。我々教員が 1 つになって学校づくりをし、教員と生徒の間にラポール (信頼関係) が築けることを生徒に教え、信頼関係の重要さを学んで卒業してほしいと願っています。

 

古賀 マイクロソフトと共にいち早く ICT 教育に取り組んでマイクロソフト コースを設立したのは、即戦力となる人材を育てたいという思いからでした。柳川グローバル学園構想も、英語を教えるとか、留学できるというだけでなく、日本の高校にいてもさまざまな国の人と触れ合える環境で育つことができ、グローバルな社会で即戦力となれると考えて計画を進めています。アジアだけでなく、世界中のさまざまな地域にネットワークを作っていく中で、ICT 教育で何ができるかをマイクロソフトにも提案していただき、マイクロソフトと共に新しいグローバルな ICT 教育のあり方を探っていきたいと考えています。

 

―― 本日はありがとうございました。

 

 

 

柳川高校 商学科 マイクロソフト コース

全国に先駆けて設立された MOS などの資格取得ができ、コンピューターのスペシャリストを目指すことができるコースです。模擬テストなどの教材も充実し、徹底したキャリア教育を実施して、面接試験への対応力を養うことができます。柳川高校では、MOS 世界大会 日本選抜で毎年入賞者を輩出し、2016 年 3 月には、高校生部門の MOS 試験合格者数 11 年連続日本一で表彰されています。

 

 

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