[パートナー事例]地方のバス会社が抱える課題を最先端技術の活用で解決 ~ Azure 上で「バス予報」を提供するアーティサンの想いと取り組み【8/8 更新】


利用者のバス離れが進むことで経営状況が厳しくなり、過疎地域の廃線も増えているバス業界。この問題を解決するため、最新技術を活用したバス ロケーション システム「バス予報」を Microsoft Azure 上で提供しているのが、アーティサン株式会社 (以下、アーティサン) です。

それでは「バス予報」を普及させるために、アーティサンはどのような取り組みを進めているのでしょうか。そしてその提供基盤として Azure を採用した理由とは。代表取締役の小山 才喜 氏にお話をお聞きしました。

アーティサン株式会社 代表取締役 小山 才喜 氏

 

会社概要と展開しているビジネス

 

―― まず御社の概要についてお教えください。

 

小山 当社は 2014 7 月に設立された IT 企業です。アーティサンという社名の由来はフランス語の「Artisan」に由来しており、この言葉には「腕のよい職人」「職人的芸術家」といった意味があります。主な事業内容はシステムの要件定義支援やシステムの設計、構築、開発コンサルティング、法人向けマイクロソフト製品に関する技術的およびデザイン的な支援などです。翔泳社やジョルダンブックスから書籍も出版しています。

 

―― まだ若い会社なのですね。特に得意とする分野は何ですか。

 

小山 Microsoft Dynamics CRM をベースにした CRM ソリューション、Microsoft SharePoint と Microsoft Office 365 の活用支援、そしてジオ ロケーション システムです。たとえば CRM の領域では、感情分析やロボット、人工知能の各機能を搭載した「EMOROCO (エモロコ)」や、学校情報統合ソリューション、病院情報統合ソリューションなどを製品化しています。またジオ ロケーション システムの領域では、バス到着予測サービス「バス予報」を提供しています。

 

―― 2017 2 月には、国際東北グループの十和田観光電鉄株式会社と、「バス予報」の実証実験を開始したことを発表しましたね。

 

小山 はい。この実証実験は 2017 2 月~ 5 月にかけて、十和田市から三沢市を結ぶ路線で実施されました。当初は 4 月で終了する予定だったのですが、お客様からの評価が高いこともあり、5 月まで延長されました。

 

―― この実証実験を始めることになったきっかけは?

 

小山 実はこれ以前にも宮崎交通で実証実験を行っており、そのことを宮崎日日新聞が 2016 10 月に報道しています。これを国際東北グループ オーナーの本田 社長がお知りになり、私のところに連絡をくださったのが、最初のきっかけです。

 

―― 連絡が来たのはいつですか。

 

小山 2016 年 12 月でした。すぐにオーナーとミーティングを行い、その翌月には実証実験開始が決定していました。

 

 

「バス予報」の特徴と開発の背景

 

―― 実にすばやい決断ですね。その背景にはどのような事情があったのでしょうか。

 

小山 「バス予報」のようなシステムは、一般に「バス ロケーション システム」と呼ばれており、大都市を中心に多くのバス会社が利用しています。しかし従来型のバス ロケーション システムは導入コストが億単位と高く、収益の厳しい地方のバス会社に導入するのは簡単ではありません。しかし本当は、運行本数が少ない地方のバス会社こそ、このようなシステムを導入すべきなのです。「バス予報」は基本的に、導入するバス単位での月額課金にすることで、導入のハードルを下げています。

 

―― 月額課金によって初期投資を抑えられるわけですね。

 

小山 料金体系だけではなく、しくみも従来のものと大きく異なっています。従来のものは、バスに搭載する機器がバスそのもののシステムと連動しているため、どうしても高額になってしまいます。また通信手段もバス無線や PHS を使用しているため、エリアによっては通信が途絶えてしまうという問題も抱えています。これに対して「バス予報」はスマートフォンと同様の技術を採用し、バスのシステムから独立させています。そのため機器のコストを抑えることができ、サイズもコンパクトになっています。また通信手段も、カバレッジの広い LTE を使用しています。

 

―― 利用者に提供しているサービス内容は?

 

小山 スマートフォンで「バス予報」のサイトにアクセスし、近くのバス停を選択することで、次のバスが何分後に到着するのか、定刻に対してどの程度遅れているのかがわかります。またバスがいまどのバス停間を走っているのかも確認できます。近くのバス停を検索して「地図」ボタンをタップすれば、バス停の場所を調べることも可能です。

 

▲ スマートフォンの画面例:左より、トップ メニュー、バス停での表示、現在のバスの位置、時刻表

 

―― 「バス予報」を開発しようと考えた理由は?

 

小山 地方の公共交通が抱えているさまざまな問題を、解決したいと思ったからです。地方では、交通渋滞によるバス遅延、バス利用者離れによるバス事業者の収益悪化、バス路線の廃止による地域の過疎化などが起きています。たとえば宮崎市では、朝夕の交通渋滞が社会問題になっており、バスがいつバス停に到着するのかわからないといった不安を、多くのバス利用者が抱えています。バス ロケーション システムを低コストで導入できれば、このような問題を解決することで利用者離れを防ぐことができ、収益悪化による路線廃止も回避しやすくなるはずです。

 

サービス基盤として Azure を採用した理由

 

―― 「バス予報」の基盤として Azure を採用していますね。これはなぜですか。

 

小山 最大の理由は Azure の利用コストが安いことです。これによって「バス予報」の月額料金も抑えられます。さらには、全世界で提供されているサービスのため費用が低減され、我々のようなスタートアップ企業を支援するさまざまなプログラムが用意されています。また IaaS だけではなく、PaaS の機能も充実しているため、アプリケーションの実行やスケーリングなどの運用も簡単に行えます。他社のクラウド サービスに比べて、スピード感が圧倒的に高いことも大きな魅力です。さらに、当社自身がマイクロソフト テクノロジーに特化した技術者集団だということもあります。アプリケーションの開発も行いやすいので、より使いやすくするための表示方法の工夫や、バス位置情報の精度向上に向けたアルゴリズム改善なども、スピーディに行えます。

 

―― 具体的に Azure のどの機能を使っていますか。

 

小山 PaaS としては、Azure App Service にある Web Apps Mobile Apps を主に利用し、システムの実行やその運用を主に行っています。また、API Apps や API Management 機能を使い、他システムに対する API 発行や管理なども行っています。

 

―― Azure を使うと開発やシステム立ち上げがスピーディになるということですが、実証実験の準備期間はどの程度でしたか。

 

小山 宮崎交通の実証実験は開発も兼ねていたため、約 4 か月かけて準備を行いました。十和田観光電鉄のケースでは、1 か月半で準備を完了しています。その時間の多くは、バス路線と運行ダイヤに関する情報収集と登録に費やされています。

 

 

―― 利用者の満足度は?

 

小山 今、十和田観光電鉄の実証実験に関するアンケート集計を進めている最中なのですが、ほとんどの回答は好意的な内容です。「今後本格的に導入してほしい」という意見が 7 8 割を占めており、「これは便利」「他の路線にも入れてほしい」というコメントも多数ありました。

 

 

 

今後の展望

 

―― 「バス予報」の今後の展望は?

 

小山 国際東北グループには十和田観光電鉄の他に、秋北バスと岩手県交通という 2 社のバス会社があるのですが、2017 年 6 月から岩手県交通でも実証実験を行うことになっています。この実証実験は釜石市の 3 つのバス路線を対象にしたもので、路線の分岐もあるため、これまでよりも複雑です。ここで実績を積むことで、大規模な路線でも活用しやすくなると考えています。

 

―― 機能面での拡張などは検討していますか。

 

小山 「バス予報」のシステムは API モデルを採用しており、外部システムに API 経由で情報を配信できます。この特長を活かし、バス停に設置したデジタル サイネージにバス運行状況を表示する、といった使い方を考えています。ここで問題になるのが電源の確保ですが、当社では太陽光パネルと電子ペーパーを組み合わせたデバイスも開発しており、「省電力 IoT 機器と位置情報を活用した地域情報配信システム」として、平成 28 年度補正予算の「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」に採択されています。

 

―― API が用意されているのであれば、他にもさまざまな使い方が考えられますね。

 

小山 他社の経路検索システムとの連携や、バス停周辺の観光情報の配信なども検討しています。既に岩手県交通のポータル サイトで経路検索サービスを提供する予定になっており、ここから「バス予報」にリンクするという話も出ています。さらに、「バス予報」をベースにしたバス運行管理システムの開発も進めています。これは運行中のバスの位置をトラッキングして地図上で表示し、おかしな動きが見られたらアラートを出すというものです。このようなしくみが普及すれば、バス利用者の利便性向上だけではなく、運行管理の効率化も可能になると思います。

 

 

▲バス運行管理システムの画面例:バス事業者はこの画面にてバスの運行状況の確認が可能

 

―― いろいろと夢が広がっていきますね。本日はありがとうございました。

 

アーティサン株式会社

2014 年 7 月に設立。システムの要件定義支援やシステムの設計、構築、開発支援コンサルティング、法人向けマイクロソフト製品の技術支援事業を展開しています。またここで紹介した「バス予報」などの、独自の製品開発も推進。最先端の技術を積極的に活用することで、企業や社会が抱える課題の解決を支援しています。

 

 

 

 

 

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