未来は量子コンピューティング:無償の量子コンピューティング開発キットをリリース


Posted by:アリソン リン (Allison Linn

From left, Charles Marcus, Krysta Svore, Leo Kouwenhoven and Michael Freedman are leading Microsoft’s quantum computing efforts. Photo by Brian Smale.

 

量子コンピューターについて学びたいのであれば、そのためのツールキットがあります。

マイクロソフトは Quantum Development Kit の無償プレビュー版をリリースします。本プレビューは量子コンピューター向けのアプリケーションを開発したい人向けに、プログラミング言語 Q#、量子コンピューティングシミュレーターといったリソースを提供します。プログラミング言語 Q#は、特に量子コンピューティングのために開発されたものです。

9月に開催された Ignite カンファレンスで最初に発表された本キットは、量子力学の専門家でない開発者であっても、量子コンピューター上でのプログラミングを学べるようにすることを目的に設計されています。

同キットは、マイクロソフトの開発ツールスイートである Visual Studio と緊密に統合されているため、他のプログラミング言語で開発を行っている人々にとっても馴染みやすくなっています。キットの一部として提供されるローカルの量子シミュレーターを使用して、一般的なラップトップコンピューター上でおよそ 30 論理量子ビットをシミュレートすることが可能です。これにより、開発者は自分のコンピューターを使って量子コードをデバッグし、小規模なコードを実行できます。

大規模な量子計算のために、マイクロソフトはAzureベースのシミュレーターを提供しています。これは、40以上の論理量子ビットをシミュレートすることができます。

キットに加えて、マイクロソフトはドキュメント、ライブラリ、サンプルプログラムの総合パッケージも提供しています。これにより、量子テレポーテーションなどの量子コンピューティングシステムに独自の要素に慣れ親しむための下地が得られます。

量子テレポーテーションとは量子もつれ(エンタングルメント)と呼ばれる量子状態で接続された量子ビットの間で安全に情報を共有するための方法です。

量子ソフトウェアとシミュレーターの開発を統率してきた、マイクロソフト主任研究員のクリスタ スボレ (Krysta Svore) は「量子テレポーテーションなどの概念を実験することで、この分野に関心を持つ人が増えてくることを期待しています」と述べています。

本キットにより現時点でも量子シミュレーター上で実行できるアプリケーションを作成することができ、最終的には、マイクロソフトが汎用の量子コンピューティング向けに開発しているトポロジカル量子コンピューター上でアプリの使用が可能になります。

「素晴らしい点は、量子コンピューターのハードウェアで実行する時にコードを変更する必要がないことです」とスボレは述べます。

人工知能から気候変動まで

専門家は、量子コンピューターには飢餓や気候変動など、世界中で最も困難な課題の対応に貢献できる可能性があると考えています。それは、今日ある最も先進的なコンピューターによっても、宇宙の寿命と同じ時間がかかってしまう様な問題を、量子コンピューターであれば数時間、数分で解ける可能性があるからです。

量子コンピューターは人工知能などの領域においても大きな技術的進化をすることが期待されています。

たとえば、システムに大量のデータを提供することで単語、音声、物体などを識別できるようにするなど、AIにおける現在のブレークスルーの多くが機械学習の領域で発生しています。

スボレは、コンピューターサイエンティストが既に量子コンピューティングシミュレーターによって、この種のAI研究における量子アルゴリズムの適用法を考案していると述べています。シミュレーター上の初期テストでは、量子アルゴリズムによりデータ内の微妙なパターンをより高速に発見できるようになることが示されています。これにより、音声認識、画像認識、言語認識の領域における大きな進化が達成できる可能性があります。

「この領域では大きな可能性があるように思えますが、私たちはまだその一部を見ているだけに過ぎません」とスボレは述べます。

トポロジカル量子コンピューティング

Quantum Development Kit は、ハードウェアとフル機能のソフトウェアスタックを含む堅牢な量子コンピューティングシステムを構築するという、マイクロソフトの計画の一部です。また、マイクロソフトの研究者は量子コンピューティングの世界における暗号化とセキュリティにフォーカスしたプロジェクトにも取り組んでいます。

マイクロソフトのアプローチの中心にあるのはトポロジカル量子ビットです。これは、より堅牢なタイプの量子ビットであり、マイクロソフトの専門家は、スケーラブルな量子コンピューティングを実現するための優れた基盤であると考えています。

量子コンピューティングにおける大きな課題のひとつは量子ビットの扱いがきわめて難しい点です。たとえば、極低温下で保存しないと量子ビットは不安定になり、破損する可能性があります。

量子ビットはきわめて不安定であるため、ほとんどのアプローチでは情報の信頼性を確保するために大規模なエラー訂正機能を提供しなければなりませんでした。トポロジカル量子ビットでは、エラー訂正が量子ビットの物理法則そのものに組み込まれています。これにより、規模を拡大しても信頼性のある結果を出すことが容易になり、他の量子コンピューターシステムよりも少ない量子ビットで、従来型コンピューターよりもはるかに規模の大きな計算処理が可能になります。

量子力学がきわめて複雑であることは言うまでもありません。世界で最も優秀な人々ですら量子コンピューティングの理解が難しいと述べています。

マイクロソフトの量子コンピューティングの責任者であるコーポレートバイスプレジデント、トッド ホルムダール (Todd Holmdahl) は、自社内での量子力学の研究を進めることにより、量子力学の学位がない人でも使用できるQuantum Development Kit のようなツールを提供可能にすることがマイクロソフトの責務であると述べています。これらのツールにより量子コンピューティングの力をより多くの人々に利用されるようになることが期待されています。

「開発者の皆様は既に慣れ親しんだツールやサービスを使って量子コンピューティングを学べます。量子コンピューティングには難解な要素もありますが、できるだけ使いやすいツールを提供することがマイクロソフトの務めです。量子コンピューターによる飛躍的な性能向上が期待されます。従来型のコンピューターであれば数十億時間を要した処理を量子コンピューターであれば数時間で完了できる可能性があります」とホルムダールは述べます。

 

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