学校教育でのプログラミング学習普及にむけて ~ 日本初の「Minecraft を活用したプログラミング授業」実証事業のご報告 ~


Posted by: 織田 浩義
執行役 常務 パブリックセクター担当

皆さん、こんにちは。
日本マイクロソフトで、公共・医療・教育機関のお客様を担当している織田です。本日はMinecraft を活用したプログラミング教育に関してご紹介します。

皆さんは、小中学校におけるプログラミング学習が注目されていることはご存知でしょうか。プログラミング学習は論理的な思考を育む効果が期待されるほか、将来のさらなる情報化社会において活躍する人材に必要な能力育成の一つとしても注目を集めています。

日本マイクロソフトでは、Minecraftを利用したプログラミング授業を、総務省様の「ICTドリームスクール実践モデル プログラミング教育とデジタルものづくり教育の実践」の実証事業として、渋谷区立猿楽小学校にて実施しました。 この授業は、課外活動やクラブ活動ではなく、小学校での正規の授業(10コマかけて1つのプログラミング学習を行う授業)でのMinecraftの活用として日本で初めてのものです。Minecraft は、自由に街や公園を作れることなどが日本を含む世界中で小中学生を中心に受けている人気ゲームです。今回の事業ではこのMinecraftを授業や教育で利用するために機能追加された Minecraft EDU を利用しています。

本日その効果や課題をまとめた実証完了報告書を公開しました。この事業により明らかになった課題については、今後当社の新たな取り組みの中で解決して、引き続きプログラミング学習の普及に貢献したいと思っています。

■ 背景

現在、プログラミング学習の必要性が高まっている背景をご紹介します。

  • 世界の様々な国の政府がコンピューターサイエンス教育を支援する政策を発表
    たとえば、米国では、2016 年 1 月 30 日 (現地時間)、コンピューター サイエンス教育を支援する政策「Computer Science For All」を発表しました。また、インドも STEM (科学: Science、技術:Technology、工学: Engineering、数学: Mathematics)  教育に対して熱心に取り組んでおり、人材育成省 (MHRD) では優秀な子どもたちを育成するためのプロジェクト「Rashtriya Avishkar Abhiyan (RAA)」を 2015 年から開始しています。
  • コンピューテーショナル シンキングへの注目
    近年、諸外国では「コンピューテーショナル シンキング」という能力について触れられることが増えています。これは、プログラミング教育を通じて、物事の「抽象化」、「構造化」、「細分化」や「論理化」、「合理化」、「最適化」といったコンピューテーショナル シンキングのスキルを習得し、問題解決能力を養うというものです。プログラミング学習における真の目的は、「コンピューテーショナル シンキングにある」という考え方もあります。
  • コンピューター化が雇用に与える影響とクラウドによって創出される雇用
    2013 年 9 月、英オックスフォード大学マーティン スクールにて、カール ベネディクト フレイ博士とマイケル A. オズボーン准教授は、共著による論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」  (雇用の未来:コンピューター サイエンスの影響を受けやすい仕事) を発表し、今後10-20年の間に、既存の仕事の多くがコンピューターに取って代わられると指摘しています。米国労働省労働統計局 (BLS) の2013 年 12 月 資料 によると、「クラウド技術によって、2022年までに620 万を超える新しい職業が生み出される」と発表されています。

■プログラミング学習におけるMinecraft活用の強み

プログラミング学習に Minecraftを活用するメリットは、ゲーム性と協働性によって子どもの興味関心を引き出し、論理的な思考に挑戦する環境を作ることができる点です。今回の事業では、Windows版の Minecraft に、Minecraft EDU という教育向けの追加機能(MOD)を利用して授業を行いました。教育向けの Minecraft EDU の機能を次のとおりご紹介します。

  • プログラミングの学習
    Minecraft EDUの一部であるCOMPUTERCRAFTEDU  を利用することで、タートルを模したロボットに動作をプログラムし、建設や作業の自動化を行うことができます。プログラミングは主にビジュアル エディター上でドラッグ アンド ドロップによって行うことができ、実際にどのようなコードが書かれているかをコード エディターで確認できます。
  • 仮想世界や教室の作成
    Minecraft EDU でマルチ プレイを行うには、現段階ではサーバーが必要となり、公式のクラウド サービス Minecraft Realms  を利用するか、有志が構成するサーバーにアクセスする必要があります。Minecraft EDU では教員または IT 管理者がサーバーを構築することができ、子どもたちは授業に集中できる安全な仮想世界に参加できます。
  • 教育用途に適した環境設定
    教員または IT 管理者が構築したサーバーでは、教育上不要な機能の制限や子どもたちのアバターの制御、また子どもたちへの教材配布などが行えます。さらに、タートル (プログラム学習用) やコンピューター、数字ブロックを追加することで、教育用途に適した環境の整備が事前に行えます。

■ 実証概要

今回の授業は、Minecraftの世界で子供たち一人一人が自分の家を作り、それを繋げて街を作るというテーマで実施をしています。この街を作るための正確な整地を行うために、タートル(Minecraft EDU の自動処理するロボット)のプログラミングを活用しています。それぞれの子供たちは、縦横20マスずつの敷地を作りそこに家を作ることで、完成後に街となるようにしています。
この授業には渋谷区立猿楽小学校6年生の30名の子どもたちが参加し、10時限(45分 x 10コマ)の時間で、プログラミングの基礎から整地プログラミングの実践、また手作りによる家の創作を行いました。

  • プログラミングの基本
    プログラミングの基本であるである、順次、反復、分岐を使い、整地作業を行うためのタートルの移動、障害物の除去、ブロックの設置のプログラミングを学習しました。条件分岐の課題と達成率の一例
  • ルールの理解と多面的で合理的な思考
    同じ目的を達成する場合でも、様々なプログラミングの方法がありえます。目標の成果を達成した後も、できるだけタートルの動きを少なくするなどの工夫によって、さまざまな改良が加えることができます。こういった工夫には、自動化の際のルールをよく理解し、様々な視点から合理的な方法を探求する思考が求められます。
  • グループによるプログラミング学習
    一般的なプログラミング学習は個別学習になることが多くありますが、今回の実証では子供たちは5~6名ずつのグループに分かれ、それぞれのMinecraftの世界でプログラミング学習を行いました。Minecraft の世界の中でタートルの動きを見て、現実世界で「どうやったの?」と質問しあうなど学びあいの様子を見ることもできました。

■ 子どもたちが身につけたスキル

この度の事業では、子どもたちは様々な新たな技能に触れる機会がありました。たとえば、自分のプログラミングと他のプログラミングを比べて、同じ結果にたどり着くプログラミングであってもそのアプローチの合理性に違いがあること、より高い成果に繋げる上で必要になるコラボレーションの重要性などです。本事業では、開始前と終了後にアンケートを取得していますが、「授業に集中している」という点で、平均にして3人に1人、「話し合いをして取り組んでいる」という点で 3人に2人の子供が開始前よりも1段階上位の回答をしています。

■ 今後の取り組みについて

学校におけるプログラミング教育の今後の普及にあたり、授業そのものの他にも多種多様な準備が必要です。今回の事業では、大きく分けて カリキュラム、環境、講師の3点での課題が明確になりました。 今回の事業には、ソフトウェアベンダーのほかに、プログラミング教育を提供している団体、教科書会社、PCやネットワークなどのインフラにかかわる企業など非常に多くの事業者にご協力いただいており、引き続きこれらの課題に取り組んでいきたいと考えています。

  • カリキュラ
    複数の条件が重なるプログラミングの学習を行う際など、多くの子どもの進捗が滞る場面がありました。プログラミング学習の段階的な進め方について、発達段階に対して最適なツールや課題、または学習時間などの整理を行うために、継続的に実証を行うことが必要であると考えています。
  • 環境
    学びあいを促す点からもグループ学習は、プログラミング学習で有効な学習方法であることを確認できましたが、グループ学習を行う場合にはツール間での通信を行うためのサーバーやネットワークの整備が必要になります。多くの学校にはICTを専門にした職員は不在なため、このような環境を容易に導入するための支援が必要であると考えています。
  • 講師
    新たな学習となるプログラミングなので、講師の準備も進める必要があります。短期的には、民間やボランティアなどによる支援をスムーズにし、中長期的には先生方にプログラミングの指導を可能にしていただけるような研修や資格などの整備について、当社からも協力を進めたいと考えています。

総務省「 ICTドリームスクール実践モデル プログラミング教育とデジタルものづくり教育の実践」詳細

実証事業名  ICTドリームスクール実践モデル プログラミング教育とデジタルものづくり教育の実践
目的 プログラミングの理解とその活用による問題解決の実施
授業実施期間 2015年 11 月 12日 (木) ~ 2016 年 12 月 17日 (木)
実証校 渋谷区立猿楽小学校
生徒数 6年生 30名
実証事業者  日本マイクロソフト株式会社
株式会社 TENTO
特定非営利活動法人 CANVAS
東京書籍株式会社
株式会社カブク
株式会社 東芝
ヤマハ 株式会社
株式会社 NTTドコモ
(順不同)

レポートの全データはこちらをご覧ください。

[プログラミング教育とデジタルものづくり教育の実践 事業完了レポート]
https://aka.ms/DS2015

また、事業者の1団体であります株式会社カブク様より、子供たちが作成した家のデザインを参照できるWebページが同時にオープンされました。こちらも併せてご覧ください。
https://www.rinkak.com/jp/collection/minecraft_ict-dream-school

公開しました事業完了レポートには、実証内容のほかにプログラミング学習の普及に向けた課題として、カリキュラム、環境、指導者 の課題を掲載しています。当社では、今後もプログラミング学習の普及に向けて継続的に取り組みを行い、これらの課題の解決に努めるよう準備を進めていきます。
日本マイクロソフトは、タブレットなどのICT機器の活用を通じ、日本の教育におけるICT活用による学力向上や新たな学びの推進を目指します。

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