『入試で使えるIME』、できました。 ~「キッズIMEスイッチ」が無償公開された理由~


 

 技術と開発を担当している加治佐です。先ごろ、東京大学先端科学技術研究センター様(以下東大先端研)が中心に行っている「DO-IT Japan」において、私たちが開発をお手伝いしたWindow IME、Office IME向けの「キッズIMEスイッチ」が無償で公開されました。今日はその背景を少しだけご説明させてください。

 CEOのサティア ナデラがあらためて所信表明で強調した通り、マイクロソフトのコアは「プロダクティビティソリューションとプラットフォームの提供企業であること」です。地球上のあらゆる人とあらゆる組織が、より多くのことを達成できるように、テクノロジを用いて支援してゆくことが、私たちの役割だと考えています。「あらゆる人」には、もちろん、障碍のある方や、病気の方も含まれます。

 この考えのもと、私たちは自社製品のアクセシビリティ機能の改善を続ける一方で、2007年より、東大先端研様と「DO-IT Japan」プロジェクトを通じ、障碍のある方の学習・進学をICTでサポートすることに取り組んでいます。今年から東芝様にもご賛同いただき、学習に困難のある子どもに使っていただく最新のWindows デバイスを提供する「DO-IT School」もスタートします。

  

 今年も8月4日に「DO-IT Japan」夏季プログラムが当社品川オフィスで開催され、全国から10人の中高生が集まってくれました。

  

 東芝さんには、「DO-IT School」に8インチと10インチのWindowsタブレットをご協力いただきます。今日はまだ希少な実機をお持ちいただき、先生方にもその使い勝手を確認していただきました。

 

 さて、今回公開された「キッズIMEスイッチ」とは、ひとことで言うと、「子どもたちがパソコンを使うとき、まだ学校で習っていない漢字を、IMEの変換候補に一切表示させない」ためのソフトウェアです。

 

 「キッズIMEスイッチ」を2年生に設定し、「きょうと」と入力した様子。小学校2年生では、『都』をまだ学習していないので、IMEの変換候補にも表示されません。

 

 日ごろパソコンを使い慣れている大人のみなさんは、「そんなもの、何かの役に立つの?」と思うかもしれません。しかし、この機能を必要としている子どもたちが、実はたくさんいらっしゃいます。

 ICT利活用教育の普及にともない、障碍のある児童・生徒・学生が、学校生活においてパソコンやタブレットを活用する例が増えています。ところが、ふだんの授業でパソコンを使って勉強しているのに、定期テストや入学試験ではその使用が認められない、というケースが、これまで何度も報告されています。

その理由は

「日本語入力ソフト(IME)を使うと、漢字が表示される可能性があり、ペーパーテストを受けている他の受験生と公平でない」

といったものです。

 過去には、筋ジストロフィーの生徒が、入試でパソコンの使用は認められたものの、上記のような理由でワープロソフトの使用が認められず、結局『ペイント(お絵かきソフト)』を使って、マウスで文字を描いて試験に回答した、という例がありました。これではパソコンを使う意味がないばかりか、受験する子どもたちが、本来持っている知識や能力を証明できないですよね?
(参考:学習における合理的配慮研究アライアンス

 『学習するうえで何らかの支援を受けている児童生徒』は、米国には650万人いる一方で、日本では34万5千人だそうです。学習に困難のある子どもたちの数にこんなに差があるわけがなく、つまり日本では学習するうえで困難のある児童生徒が、様々な理由で、適切な配慮や支援を受けられていないことが推測できます。

  

 教育における「合理的配慮」の必要性を説明中の東大先端研 中邑賢龍教授。私も「キッズIMEスイッチ」についてご説明させていただきました。

 

 こうした状況を、当事者の声で変えてゆくのが、「DO-IT Japan」の狙いです。夏季プログラムに参加した彼らはこれから、勉強のためのITの活用方法だけでなく、「試験でパソコンの使用を認めてもらうためには、いつ、どんな申請を、誰に対して出せばいいか」といった、進学のための具体的な手法を学んでいきます。私たちが「キッズIMEスイッチ」を公開した理由も、彼らが「これを使えば不公平にならないから、ふだん使っている道具でテストを受けさせてよ!」と言える状況を整えるためです。

  

 今日のプログラムでは、実際に「キッズIMEスイッチ」や、Windowsの読み上げ機能を使った模擬テストも実施。読みに困難のある子どもたちは、こうしてWordファイルに書かれた問題文を読み上げることで、試験問題に集中することができます。こうした対応は、市販のパソコン/タブレットで実現可能です。

 障碍のある方にとって、日々の学習で道具としてICTを活用することは、近視・乱視の方がメガネを使うのと同じく、ごくごく当たり前のことです。彼ら、彼女らの「もっと勉強したい」、「もっと活躍したい」という願いを実現できるよう、『プロダクティビティとプラットフォームの会社』である当社も、ITの側面から支援を続けたいと考えています。

 


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