DevOpsインタビュー: 第 3 回 楽天さんのDevOpsについて聞いてみた ~後編:スモール チーム・マイクロ サービス・DevOps がエンタープライズに与えるインパクト~


後半戦では、なぜ楽天さんのような大手企業で DevOps が今必要とされるのか? ということを話してくださいました。楽天川口さんが考える、今の大手企業に必要な 3 つの要素とは? ぜひお楽しみください!

 牛尾: 川口さんは、DevOps 会議をなぜ始めたのですか? どういうパッションがあったのですか?
 川口: きっかけは、2009 年に知り合ったアジャイル コーチの Ed Kraay が、いま米 Yahoo! で仕事をしていて、8 月の Agile Conference で Yahoo! の事例としてDevOps とリリースの話をしたんです。
 牛尾: この人ってもしかすると Rakuten Conference で来る人ですか?
 川口: はい。今年は DevOps セッションが充実していて、この Yahoo! の方、そして、もちろんマイクロソフトの DevOps グルも来てくれます。さらに、Ryuzee さん、DevOps with chocolate,lego and scrum gameの Dana Pylayeva さんもあつまります。
 牛尾: おー、これは豪華ですね! ちなみにそのYahoo!の人にどうインスパイアされたのですか?
 川口: 新興の Netflix や Facebook ならわかるのですが、Yahoo! は 20 年企業です。多くのレガシーをもった企業です。それが、たった1年で、1 日数回デプロイするような DevOps の環境を作り上げたんだそうです。これに衝撃を受けました。Facebook とかなら、きっと最初からそういう環境だから、いまは会社が大きくなったとしても、そらできるかなって感じですよね。Yahoo! はそういう文化はなかったところから、DevOps 環境を作り上げたんですよ。
 牛尾:それは素晴らしい!
 川口: 開発に 2 か月、リリースの QA に 4 か月かかっていたのが、1 日に何回もリリースできるようになったそうです。
 牛尾: それはすごいですね。
 川口: Yahoo! さんが DevOps に取り組んだのは理由があると思っています。昔はサービスを作るのも圧倒的に大企業が有利でした。なぜなら、資金力があるので、QA に十分な投資ができる力があったからです。
 川口: ところがリーマン ショック以降、スタートアップが活性化します。今のソフトウェアの開発技術が 3-5 人のスモール チームだけで儲かるソフトウェアが作れるようなった背景があります。大企業はそういう小さくて素早いところとサービス競争をして、勝っていかなければいけなくなりました。いまは「QA に 4 か月かかる」ことが新規サービスの足を引っ張る時代なのです。
 牛尾:おっしゃるとおりと思います。

 川口: 私はいまが DevOps がスパークする時期だと思っています。
 牛尾: スパークというのは具体的にはどういうことですか?
 川口: 世の中が本当に大きく変わるときには、通常のマネジメントではジャッジできないタイミングが訪れます。既存の部門だけのジャッジでは対応できなくなってしまうからです。例えば、仮想化技術が導入されたときは、サービス部門と運用部門がありました。一般的に OS はサービス部門の担当で、基盤は運用部門ですが、VM に OS が入ってブートされるので、これはいったいどちらのの担当なんだということになります。クラウドもそうですが。
 荻野: 今でもそうですね。インフラの Chef のレシピはいったい誰の担当なのか? コードなのか、インフラ設計なのか、、、
 川口: 過去には先ほど述べた仮想化技術、スクラムでソフトウェア開発の考え方自体が変わってきました。DevOps、スモール チーム、マイクロ サービスがでてきて、同じことが起ころうとしています。
 牛尾: つまり、世界がまた変わるタイミングが来ているわけですね?
 川口: そうです。先ほどの話で、今は大企業が小さな企業に勝てる方法がわからなくなっていたのですが、やっとそのやり方が業界的にわかってきたのです。
 牛尾: 詳しく教えてください
 川口: スタートアップのほうが小回りが利くので、スモール チームのほうが素早くソフトウェアをつくれるようになりました。しかし、大企業がそれができなかったので、マイクロ サービスが登場してきたので、大きな組織でも、中にスモール チームを作って、疎結合のサービスを作り、DevOpsをつかって、1 日数回デプロイできる状況をつくれるようになってきたのです。
 牛尾: Divide and Conqure ですね。
 川口: そうです。大きなサービスであってもマイクロ サービスに分割することで、大企業でもスモール チームを作れるようになってくる。DevOps でさらに高速にリリースできるようになってくると、今度は大きなリソースをもつ大企業が再び強くなる状況を作ることができるのです。
 牛尾: これは、大きな転換ですね。破壊的な状況です。
 川口: だから、大企業にとって、スモール チーム、マイクロ サービス、DevOps に取り組むことはいま非常に重要だと思うんです。だいたいいつも私がこういう世界が転換するタイミングに気づくと、3 年後ぐらいにはみんなやり始めてたりします。
 牛尾: 詳しく教えてください!
 川口: Netfilx が 2011 年、Fowler が 2014 年にスモール チーム、マイクロ サービス、DevOps に関するブログポストをすでに書いているんだけど、私が気づくのが大体 1 年ぐらいはかかるんです。Cookpadさんとかはすでに2014年に気づいている。私が気づいたら大体3年。スクラムの時の大きな転換も、私達が企画してジェフ・サザーランドが来日したのが 2011 年ですが、その 3 年後の 2014 年あたりにかけて、日本でもスクラムが大きく浸透していったと思います。
 牛尾: たまに、DevOps で向いている分野とかありますかとか聞かれます。例えば Web のフロント系は向いているけどバックエンドは向いていないとか。でもそんなのんはナンセンスだと思っていて、DevOps のプラクティスは今後のソフトウェア開発の基本的なプラクティスで当たり前のものになると思っています。例えば金融のバックエンド システムでも、誰がインフラが自動化されたり、リリースが品質高く早くできて困ることがあるでしょうか?
 荻野: 今の外国から来た新卒は当たり前にスクラムとか知っていますね。TDD とか CI も大学で学んだとか。
 牛尾: えー。すごい時代ですね。
 牛尾: ちなみにこのスパークの要素には、Lean Startup や Jeff Patton のアジャイル プロダクト オーナなどの考え方も影響していると思います。例えばリリース サイクルが早くなることの価値としては、フィードバック ループは高速になることが。Jeff Patton の書籍は川口さんが監訳されていますが、どう思いますか?
 川口: 大きな病院と、一軒家の病院で比較してみましょう。なにか問題が起こった時に、一軒家なら、すぐに「これどうしよう」となるのですが、大病院だと、「まぁ、避難するまでもないよね」とかになります。これがフィードバックループの差です。しかし、マイクロ サービス化で大きな企業でもスモール チームで成功できるようになります。今までは多段階のマネジメントが必要だったのが、IT の世界でもアメーバ経営の組織ができるようになるわけですね。
 荻野: ちなみに、スモール チームですが、昔は天才があつまれば 3-5 人でできるよねという話になっていましたが?
 川口: 必要なのは、パッション・スキル・スモール チーム。特にパッション。スキルは蓄積されるから。
 牛尾: 私も同意です。パッションは必須。例えば私が2番目にやったアジャイルのプロジェクトでもTDDできるのは最初私ふくめて 2 人で、新人君も含まれていました。
 荻野: ちなみにスモール チームの 5 人は Dev だけで 5 人それとも Dev/Ops/QA で 5人?
 川口: クロスファンクショナルな 5 人。1 人でなんでもできる天才とかでもない。
 荻野: スモール チームの原型は QC 活動とか、小集団活動とか、日本のボトムアップな改善活動が逆輸入されたものだと思います。
 川口: 日本の現場中心なチーム作業、血の通った小さなチーム。それにジェフ・サザーランドが注目した。また西欧諸国とアジアの文化は違っていて、西欧は個人のハッピーがまずあってこそのチームだけど、アジアの文化は、チームが中心で個人はあとなんだよね。スモール チームの話は日本やアジアだけじゃなくて、ミリタリーの世界では一般的なんだと思う。ゲリラ戦術とか海兵隊とか。
 川口:トヨタ生産方式にしても、最初はテイラーの科学的管理法で、GM の複数車種大量生産に勝つ方法を探す必要があった。そして戦後でお金もなかった。物量で負けているところに勝つために設計・工員とわかれていたところに、多能工の考えを導入していった。テストとかも最後にどっかんだったのが、各工程に分散されていった。

と、話は尽きないですが、非常に興味深いお話しが聞けました。大企業がスタートアップに再び勝てるための考え方がスモール チーム、マイクロ サービスそして DevOps によって実現するという考えは非常に意義深いことです。楽天チームの皆さま、そしてゲストでご参加いただいた永和システム マネジメントの家永様。本日はありがとうございました!

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