ファイル共有による Windows 上での高可用性 ASCS – 共有ディスクが不要に –

執筆者: Cameron (MSFT SAP Program Manager)

このポストは、2017 年 8 月 10 日に投稿された High Available ASCS for Windows on File Share – Shared Disk No Longer Required の翻訳です。

 

SAP 高可用性 ASCS が UNC ソースファイル共有をサポート

このたび SAP 社により、従来からのクラスター共有ディスクの代わりに SMB UNC ソースを SAP ASCS 用に利用できるようにする、新しい Windows クラスター DLL とドキュメントが公開されました。

このソリューションは SAP により、本稼働システム以外の用途での検証および文書化が行われており、Azure クラウドにも対応しています。この機能は、SAP NetWeaver コンポーネント 7.40 以上で使用できます。

Azure クラウド プラットフォームでは、他のクラウド プロバイダーとは異なり、 Windows クラスターや Suse クラスターなどのクラスター ソリューションを完全にサポートしています。

1. ファイル共有上の SAP 高可用性 ASCS の要件

ファイル共有上のSAP ASCS の要件は、以下のとおりです。

  1. SAP Kernel の更新:最新バージョン 7.49 [Netweaver 7.40 以上に対応] が必要
  2. SAP プロファイル パラメーターの設定 service/check_ha_node=1
  3. Windows クラスター DLL の更新 (詳しくは「1596496 – クラスター リソース モニターの SAP リソース タイプ DLL の更新方法」を参照)。
  4. SAP ランドスケープ内に SMB サーバーがあり、ファイル共有 \\<SAPGLOBALHOST>\sapmnt を使用できること

このソリューションをデプロイする前に以下のドキュメントを確認してください。

SAP ASCS でのファイル共有のインストール ガイド (英語)

2. ファイル共有用の SMB サーバーの選択肢

SMB 3.x 互換の高可用性共有機能の実装方法には、多数の選択肢があります。

この方法については、ブログ記事「高可用性の SAPMNT 共有を作成する方法 (英語)」を参照してください。

Azure Files は NTFS ACL をサポートしていないという理由により、現時点では Azure Files サービスは使用できません。

警告: 共有名を \\<SAPGLOBALHOST>\sapmnt から \\<SAPGLOBALHOST>\sapmnt_<SID> に変更することはサポートされていません。

すべての SAP SID  に対して一意の SAPGLOBALHOST  が必要です。

例えば、\\<SAPGLOBALHOST_<SID>>\sapmnt は下記のようになります。

\\sapsmb3_PRD\sapmnt \\sapsmb3_BWP\sapmnt \\sapsmb3_SOL\sapmnt

SAP ノート「2492395 – Can the share name sapmnt be changed?」参照

同様に、以下も参考にしてください。

2287140 – Support of Failover Cluster Continuous Availability feature (CA) 2506805 – Transport Directory DIR_TRANS

SAPMNT 共有に使用される SMB サーバーは、インターフェイス ファイルや DIR_TRANS にも使用されます。

3. Azure Site Recovery との統合

SAP ASCS のファイル共有は、Azure Site Recovery と併用することができます。

Azure Site Recovery は SAP アプリケーションをサポートしています。

Azure Site Recovery での SAP アプリケーションの使用については、こちらのブログ記事 (英語) をお読みください。

Azure Site Recovery による SAP アプリケーション保護に関するホワイトペーパーの全文は、以下で確認できます。

/ja-jp/azure/site-recovery/site-recovery-workload

4. よく寄せられる質問

Q1. ファイル共有上の SAP ASCS に関するドキュメントはどこで入手できますか。

A1. ファイル共有上の SAP ASCS のインストール ガイド (英語) をお読みください。

Q2. ファイル共有上の SAP ASCS は SWPM (SAPInst) に完全に統合されていますか。

A2. SAPInst による初期インストール後に、いくつかの操作を手動で行う必要があります。

Q3. 推奨される SMB サーバー テクノロジはありますか。

A3. 選択肢ごとに一長一短があるため、すべてを比較することをお勧めします。DFS-R は、NFS (Linux システム用) および DR シナリオに対応した成熟したテクノロジです。DFS ではサイトが考慮されています。INSITE オプションについてこちらのドキュメント (英語) を参照してください。

Q4. Windows 2016 に含まれるスケールアウト ファイル サーバー (SOFS) は、SMB ソースとして使用できますか。

A4. はい。SOFS は良い選択肢です。ですが、SOFS はサイトを考慮されていないことに注意してください。SOFS を使用して DR ソリューションを遠隔地に構成した場合、(遅いWAN 回線を経由する場合など) 、SMB クライアント [SAP アプリケーション サーバー] はどのサーバーがローカルにあるかを判断することができません。不安定なパフォーマンスを引き起こす可能性があり、推奨されません。すべての SOFS を同一サイトに配置する場合、SOFS はふさわしい手段です。

Q5. SAP ASCS は Azure Site Recovery と併用可能ですか。

A5. はい。ファイル共有上の SAP ASCS は、Azure Site Recovery と併用できます。

Q6. ファイル共有上の SAP ASCS は古いカーネルでもサポートされますか。

A6. いいえ。7.49 [Netweaver 7.40 以上に対応] が必要です。これより古いカーネルでは実行できません。

パラメーター service/check_ha_node=1 を認識できないため、Kernel 7.22 以前では ASCS ファイル共有を使用できません。

Q7. ファイル共有上の SAP ASCS はクラウド プラットフォームでもサポートされますか。

A7. Azure では ファイル共有上の SAP ASCS を使用できます。IP アドレスの動的割り当て、変更、開始がサポートされていない他のクラウド プラットフォーム上では Windows クラスター ソリューションが正常に動作しません。

Q8. SAP ASCS Enqueue Replication Server はサポートされますか。

A8. はい。SWPM ツールを使用して ERS をクラスターに追加できます。