Azure Site Recovery の操作性の簡略化と、ARM と CSP のサポートを発表

執筆者: Manoj Kumar Jain (Principal Program Manager Lead, Azure Site Recovery)

このポストは、5 月 12 日に投稿された Azure Site Recovery now has a simplified experience plus support for ARM and CSP の翻訳です。

 

現行の Azure ポータルがアップグレードされ、Azure Site Recovery (ASR) の一般提供が開始されました。この一般提供版では操作性がシンプルになったほか、Azure Resource Manager (ARM) との連携が実現しました。また、Cloud Solution Provider (CSP) プログラムでも利用が可能になりました。今回の一般提供版のリリースにより、ASR で掲げている「災害復旧の一般化」という使命をさらに前進させることができました。ASR は Operations Management Suite (OMS) の一部として設計されたコスト効率がよく使いやすいソリューションであり、多くの企業の自社環境の保護に使用されています。

信頼性が高くコスト効率に優れた災害復旧を実現することは、企業とサービス プロバイダーのどちらにとっても重要なことです。企業はミッション クリティカルな LOB アプリを保護することを最優先とし、サービス プロバイダーは自社データセンターで実行するテナントのワークロードをさらに高度に保護することを最優先と考えています。ASR では、企業とプロバイダーの両者が直面しているこうした課題に段階的に対応してきました。

a) 異種混在環境: 多くのお客様の環境には、VMware、Hyper-V、物理マシンといったさまざまなシステムが混在しています。ASR ではこれらをすべて保護し、復旧先として Azure とセカンダリ データセンターのいずれかを選択することができます。さらに、Hyper-V の場合は、SCVMM のお客様も SCVMM 以外を VM 管理に利用しているお客様も、ASR を使用して保護することができます。

b) 複雑なアプリケーション復旧: 複数のレベルのアプリケーションをサポートできるよう、ASR ではアプリケーションの復旧を自動化する復旧計画を提供しています。

c) セカンダリ データセンターは不要: 世界各地のリージョンにデータセンターが設置されているため、Azure がアプリケーション保護に最適な復旧先となり、企業で設備投資をする必要がないというメリットもあります。

 

操作性

今回のリリースにより、機能強化された現行のポータルから ASR を使用できるようになりました。現在地を簡単に把握したり、項目をピン留めしたり、作業を保存して後からタスクを再開したりといったあらゆるポータルのメリットを活用できます。この変更は災害復旧を簡略化するという目標に向けて大きな一歩です。これらのことは、コストや信頼性という面で直接的な影響をもたらすものです。この変更により、[Management] セクションの [Backup and Site Recovery (OMS)] タイルから単一の Recovery Services コンテナーを作成できるようになりました。

今回の操作性強化によって、既存のすべてのシナリオで新たな操作が可能になりました。主な強化点は以下のとおりです。

1) お客様が失敗することなく確実に災害復旧を設定できるように、「利用開始」エクスペリエンスを合理化しました。災害復旧には動的に設定を行わなければならない部分が多いため、1 つステップを間違えただけで保護や復旧が失敗することがあります。従来はこれが原因で災害復旧ソリューションが適切にデプロイされず、多くのワークロードが保護されないということが発生していました。災害復旧を確実に設定できるようにするには、手順を丁寧に示したガイドが必要です。このため、マイクロソフトは利用開始エクスペリエンスの開発を重視して取り組んできました。

利用開始エクスペリエンスでは、最初に保護の目的を確認します。次に、その目的に合うよう残りのエクスペリエンスを設定します。具体的には、まず復旧元を設定して、次に復旧先が準備できていることを確認します (Azure のストレージとネットワークをチェック)。その後、レプリケーションの設定とポリシーを対象のサーバーと関連付け、キャパシティ プランニング ツールの利用を促すようにします。この一連の手順は、お客様からいただいたフィードバック、サービスの使用状況やエラーに関するデータ、各種フォーラムへの投稿などをもとに用意しました。マイクロソフトは、お客様がデータ保護のための手順を 1 つも見逃さないようポータルを設計しました。

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2) 次に重要なのが保護エクスペリエンスです。この設定ウィザードには適切な既定値が表示され、サーバーの保護を手順を追って設定することができます。このウィザードでは、まず復旧元に関する情報を取得し、次にチェックを実行して復旧先の準備が完了していることを確認します。次の 3 つ目のブレードでは保護するサーバーを選択し、4 つ目ではサーバーの情報を入力します。最後はレプリケーションの設定で、使用するプライマリ ポリシーを指定します。

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ASR の目標は「災害復旧を一般化する」ことであり、それにはすべての復旧元から復旧先への保護を実現するほか、パフォーマンス向上、簡略化、診断の提供といった取り組みを包括的に行う必要があります。マイクロソフトはこうした取り組みを行うことで、お客様が ASR でより多くのワークロードを保護できるようになるものと考えています。また、お客様がワークロードを追加で保護する際には、さらに効率的な操作性を実現できることを目指しています。ウィザードには選択した内容がそのまま記憶されるため、VM を追加する際の設定がよりシンプルになります。

 

Azure Resource Manager (ARM)

今回のリリースでは、ARM のストレージ アカウントを復旧先として仮想マシンや物理マシンを保護することができます。フェールオーバー時には、ARM ネットワークに接続された ARM Virtual Machines としてサーバーが表示されます。ARM のメリットの詳細についてはこちらの概要ページをご覧ください。以下に、ASR に関連する重要なメリットを 2 つご紹介します。

a) 復旧計画であらゆるサイズの VM やネットワーク構成を共存させられる: 従来のポータルでは、単一のクラウド サービスで一部のサイズを共存させることが不可能なため、アプリケーションの復旧が困難になったり、サイズを妥協する必要がありました。たとえば、SQL には DS シリーズが必要で、フロント エンドは Standard A4 で十分で、両方を単一の復旧計画に含めるという場合、復旧計画のフェールオーバー ワークフローの一部として作成されるクラウド サービスでは DS と A4 が共存できないため、フェールオーバーが失敗する可能性がありました。このような問題は、ネットワーク構成で NIC の数が異なる場合にも発生します。ARM アーキテクチャでは、これらの課題にすべて対応しています。

b) リソースへのアクセスを制御できる: ARM では Role Based Access Control を利用して、ARM リソースへのアクセス許可を詳細に管理することができます。作成した複数のリソース グループへのアクセス許可を適切なユーザーに付与し、マシンが適切なリソース グループに表示されるように設定できます。

ARM リソースの使用は任意です。既存の IaaS デプロイメントを利用していて、そのデプロイメントと災害復旧を共存させる必要がある場合には、代わりに従来のリソースを使用することもできます。ARM リソースと従来のリソースは、VMware、企業の Hyper-V (SCVMM ベースのデプロイメント)、ブランチ オフィスの Hyper-V、物理マシン、AWS から Azure への移行など、すべてのシナリオで選択できます。さらに、単一のシナリオで一部の VM に ARM リソースを使用し、残りの VM に従来のリソースを使用することも可能です。

 

単一のコンテナーへの Backup と Site Recovery の統合

バックアップ ソリューションと災害復旧ソリューションは、企業のお客様の BCDR やコンプライアンスのニーズに対応するうえで切り離せないものであり、多くのお客様が両方のソリューションを使用しています。従来のポータルでは、Site Recovery と Backup の 2 つのコンテナーを別々に作成する必要がありました。エクスペリエンスもそれぞれ異なり、管理するオブジェクトも多数ありました。そこで今回、簡略化という目標に向けてこれらのエクスペリエンスを Recovery Services コンテナーに統合しました。今後は 1 つのコンテナーからサーバーを保護して災害復旧またはバックアップのいずれかを行うことができ、両方で類似のエクスペリエンスを得ることができます。

 

クラウド ソリューション プロバイダー (CSP)

CSP は、パートナー様がマイクロソフトのクラウド テクノロジに関するビジネスやソリューションの再販を行うことができるプログラムです。CSP となることで、パートナー様はお客様のニーズに対応する最初の窓口としてカスタマー リレーションシップの中心に立ち、エクスペリエンスの包括的な管理を担当してお客様と強力な関係を築くことができます。

DRaaS はビジネスとして多くのパートナー様で実施されており、災害復旧のコンサルティングからフル マネージド サービスまで、幅広いサービスを通じてお客様に大きな付加価値を提供しています。パートナー様からはこれまで、CSP で ASR をサポートし、ユーザー インターフェイス (UI) からすべてのエクスペリエンスを使用できるようにしてほしいというご要望が寄せられていました。今回の更新により、CSP で ASR のすべてのシナリオを利用できるようになり、完全な UI のサポートが追加されました。

 

ディスクの除外

お客様からはよく次のようなご質問をいただきます。「SQL でサイズの大きな tempDB ボリュームを使用しているが、大規模なレプリケーションは避けたいと思っています。ASR なら可能ですか?」、「頻繁に更新されるページ ファイルがあります。Azure への保護を行う場合、このファイルを除外できますか?」、「帯域幅の問題を抱えていますが、サーバーは保護する必要があります。一時ファイルを除外して、別のディスクに保存することで帯域幅を節約したいのですが、どうすればよいですか?」。今回のリリースでは、レプリケーションを実行する際にボリュームを除外することができます。この機能は現在、Azure を復旧先とする VMware の保護シナリオで提供されており、近いうちに Hyper-V シナリオでも提供される予定です。

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この機能を使用するには、サーバーにモビリティ サービスがインストールされている必要があります。モビリティ サービスは、ボリュームに関する情報を収集して ASR サービスに送信します。これにより、ASR サービスにボリューム一覧が表示されるので、tempDB、ページ ファイル、一時ファイルなどを含むボリュームを除外できます。

 

Premium Storage とローカル冗長ストレージ (LRS) のサポートの追加

よく寄せられるフィードバックの 1 つに、「ワークロードに高い IOPS が必要なのに、Azure では Premium Storage アカウントでしか提供されていない」というものがあります。今回、頻繁に更新されるワークロードの保護に対応するために、Premium Storage アカウントを復旧先とするサーバーの保護機能を追加しました。この機能は現在、VMware から Azure への復旧シナリオで提供していますが、近いうちに Hyper-V シナリオでも提供する予定です。この機能を使用するには、2 つのストレージ アカウントが必要になります。1 つはフェールオーバー後に最終的なサーバーが表示される Premium Storage アカウント、もう 1 つは復旧元から送信されるログを受信するストレージ アカウントです。

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この機能の設計上の考慮事項については、私の同僚が内部の処理について別の記事を書く予定ですので、そちらをご確認ください。

マイクロソフトのデータセンターのサービスが中断されてもお客様の環境が保護されるよう、グローバル冗長ストレージを使用していただくことを強くお勧めします。また、マイクロソフトでは、お客様が重要性の低いアプリケーションでも低コストで保護を実現したいと考えていることを理解しています。このニーズに対応するために、今回のリリースでは LRS のサポートを追加しました。これはすべてのシナリオでサポートされています。

今回の記事をまとめると、エクスペリエンスが強化された ASR の一般提供開始に伴い、お客様やパートナー様は ARM リソースや CSP サブスクリプションを使用できるようになり、ボリュームを除外して帯域幅を節約する機能や、コストの要件やワークロードの性質に合わせて新しい種類のストレージを選択できる機能を新たに利用できるようになりました。

以下に、よく寄せられる質問をいくつかご紹介します。

Q: この新しいエクスペリエンスは ARM リソースでしか利用できないのですか。

このエクスペリエンスは、ARM リソースの他に、既存のデプロイメントと共存している場合は従来のリソースと ASM リソースでも使用できます。このエクスペリエンスは、VMware、VMM、Hyper-V のいずれかから Azure への復旧、VMM 間の復旧など、サポートされているすべてのシナリオで提供されています。

Q: 従来のエクスペリエンスを使用しています。新しい Azure エクスペリエンスへの移行方法を教えてください。

新しいサーバーのマシンを保護する際に、新しい Azure エクスペリエンスを使用することができます。従来のエクスペリエンスで保護されている既存のサーバーについては、新しい Azure エクスペリエンスへの移行機能を近いうちにリリースする予定です。

Q: 今回のリリースによる料金変更はありますか。

今回のリリースによる料金への影響はありません。エクスペリエンスの合理化と診断機能の強化により、災害復旧ソリューションのデプロイに関する全体的なコストが低減されることになります。