第 3 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話)

STB13_Ken_08第 2 話では、電話交換機の例をお話ししました。第 3 話では、これまでの話の総括をします。

旧式、手動の回線交換と、生産性が高い機械式回線交換の比較について、一点補足しておいたほうが良いと思う点があります。手動での回線交換は生産性では明らかに劣っていますが、すべての面で劣っていたわけではありません。柔軟性やきめ細やかなサービスという観点では、人が介在するほうが自動化されたシステムよりずっと優れています。実際のところ今現在でも企業の社長や役員の皆さんは、電話は秘書の方が介在してつないでおられるケースがあるのではないでしょうか。人が介在するサービスのほうがきめ細やかで気が利いているけれども、ごくごく一部の人しか享受することができない贅沢なのだということの実例だと言えるでしょう。

ITに関しても、IT部門やSI業者が介在してきめ細やかなコーディネーションをしてくれる運用スタイルは、今後もなくなることはないのでしょう。ただ、クラウド利用が今後さらに一般的に普及するにしたがって、従来型のIT運用は特別なぜいたく品と認識されるようになっていくのではないかと思います。

冒頭で申し上げた「クラウドは今後さらに広範に活用され、より一般的な方式になる」という、あまり新鮮味のない予想は、実はこうした背景から申し上げたことでした。
ちょうど自分で正しい番号を入力しなければいけない自動交換の電話のように、利用者がセルフサービスで対応する範囲をひろげ、その代わりより気軽により高度な機能がすぐに利用できるというクラウドの特徴を活かした IT が、今後どんどん一般的になっていくのではないか、というのが私の予想の根拠です。

ここまでの話をまとめてみます。

・クラウドのIT運用は、従来型と比べ人手の関与が劇的に少なく、生産性が高い

・生産性の高いプラットフォームによって、IT は今まで以上に幅広い利用者に開放され「みんなのもの」になる。ちょうど電話が手動交換から自動交換に切り替わることによって普及速度が向上したのと同じように
・効率、生産性とは対極の「個別対応」「きめ細やかさ」などの面では従来型の IT 運用にメリットがあるため、従来型の運用も引き続き残るが、ぜいたく品の位置づけになる

次回のテーマでは、クラウド化に関連するその他の IT の変革について紹介し、今後の IT とビジネスの関わりについて考えてみたいと思います。


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