クラウド サービスのバイブル

皆様こんにちは。日本マイクロソフトのチーフ クオリティ オフィサー (CQO: Chief Quality Officer)、後藤です。 日々、お客様のご期待とマイクロソフトの製品、テクノロジのギャップを縮めるために様々な活動を行っております。そういった活動の中で学んだ、クラウドが実際には従来型 IT とどう違うのか、その違いは利用部門や IT 部門にどういう影響を及ぼすのか、といったことを、本連載でざっくばらんにご紹介させていただきたいと思っております。 このブログを通じて、クラウドのことをもっと知ってもらい、もっと活用してもらえる、そういうブログを目指しています。

1

第 3 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話)

第 2 話では、電話交換機の例をお話ししました。第 3 話では、これまでの話の総括をします。 旧式、手動の回線交換と、生産性が高い機械式回線交換の比較について、一点補足しておいたほうが良いと思う点があります。手動での回線交換は生産性では明らかに劣っていますが、すべての面で劣っていたわけではありません。柔軟性やきめ細やかなサービスという観点では、人が介在するほうが自動化されたシステムよりずっと優れています。実際のところ今現在でも企業の社長や役員の皆さんは、電話は秘書の方が介在してつないでおられるケースがあるのではないでしょうか。人が介在するサービスのほうがきめ細やかで気が利いているけれども、ごくごく一部の人しか享受することができない贅沢なのだということの実例だと言えるでしょう。 ITに関しても、IT部門やSI業者が介在してきめ細やかなコーディネーションをしてくれる運用スタイルは、今後もなくなることはないのでしょう。ただ、クラウド利用が今後さらに一般的に普及するにしたがって、従来型のIT運用は特別なぜいたく品と認識されるようになっていくのではないかと思います。 冒頭で申し上げた「クラウドは今後さらに広範に活用され、より一般的な方式になる」という、あまり新鮮味のない予想は、実はこうした背景から申し上げたことでした。 ちょうど自分で正しい番号を入力しなければいけない自動交換の電話のように、利用者がセルフサービスで対応する範囲をひろげ、その代わりより気軽により高度な機能がすぐに利用できるというクラウドの特徴を活かした IT が、今後どんどん一般的になっていくのではないか、というのが私の予想の根拠です。 ここまでの話をまとめてみます。 ・クラウドのIT運用は、従来型と比べ人手の関与が劇的に少なく、生産性が高い ・生産性の高いプラットフォームによって、IT は今まで以上に幅広い利用者に開放され「みんなのもの」になる。ちょうど電話が手動交換から自動交換に切り替わることによって普及速度が向上したのと同じように ・効率、生産性とは対極の「個別対応」「きめ細やかさ」などの面では従来型の IT 運用にメリットがあるため、従来型の運用も引き続き残るが、ぜいたく品の位置づけになる 次回のテーマでは、クラウド化に関連するその他の IT の変革について紹介し、今後の IT とビジネスの関わりについて考えてみたいと思います。 第 1 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話) 第 2 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話)

0

第 2 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話)

第 1 話では、ハードウェアの老朽化に対処するために更新する手順を追ってみました。第 2 話では、クラウドの場合をみていきます。 まずハードウェアの導入は年間など中期スパンで計画が定められ、継続的・日常的に追加作業が行われています。 データセンターへの所定の場所へのハードウェア設置は専門の業者が人手で行いますが、クラウドの上で稼働する各種システムには影響しませんのでスケジュールは完全に独立しており、そのためのコーディネーションは必要ありません。 ハードウェアが追加された後は、システムが自動的にそれを認識し、OSやミドルウェアが導入され、クラウド上のどの領域に割り当てるのかが決定され、それに従ったアプリケーションのセットアップが行われ、クラウドのリソースとして組み込まれます。これらの作業は、人による判断やコーディネーションを待たず、クラウド内部の運用システムがすべて自動で行います。 システムの切り替えというのも、オンプレミスと同じような関係各所との調整作業は一連の流れの中に存在しません。ユーザー利用環境は仮想化され物理的リソースとは切り離されており、また高度に多重化されているので、任意のタイミングで稼働環境が新しい物理的リソースに移動するだけです。利用者はそのような変化があったことにすら気が付きません。 老朽化が進んだハードウェアはこれらの処理の結果、「空き家」になります。その後適切なタイミングでデータを完全消去(物理破壊含む)され、破棄されます。久しぶりにこの部分はまたハードウェアの業者による手作業を含みます。 比べてみると、従来型ITとクラウドでは運用に対するアプローチが全く違うことがお分かりいただけることと思います。クラウドではそもそもユーザーとの運用上の調整が必要ないことが前提となっており、全体のコーディネーションが簡略化されています。また、作業のほとんど全てが自動化されており、人手の介入を必要としません。 この対比を考えるにつけ、私の頭に浮かんでくるイメージは、電話の交換手の仕事です。 かなり古い話ですが、昔は電話にはダイヤルやボタンがついておらず、電話をかける際にはまず電話局の交換手とつながるようになっていました。交換手に「xx町の○○さんを頼む」と告げると、交換手が手作業で通話相手を呼び出し、その後電話回線を手動で接続し、それによってやっと通話ができるようになった、という話です。もちろん効率は今と比べてよくありません。電話利用者が増えてきてからは、市外通話だとつながるまでに数時間かかるのが当たり前だったと聞いています。 今や携帯電話どころかスマホでLineが当たり前で、そんな時代は想像もつかないような話ですが、考えてみると手動の交換手というのは親切な側面もありますよね?通話相手の電話番号を自分で調べる必要はありませんし、相手につながるまでの待ち時間は交換手に任せておいて、自分自身は電話から離れて別の作業をしていてもよかったそうです。 しかし、電話の爆発的な普及は、ダイヤルでの電話番号入力による自動交換が一般化するのと合わせて起こったのでした。回線の接続という電話のインフラが人力に依存しており生産性が低い段階では、電話は限られた一部の人たちだけのものに留まっていて、自動交換機によってインフラ運用の生産性が劇的に改善したことによって初めて、電話は「みんなのもの」になったのでした。 今クラウドで起こっている運用生産性の劇的な改善は、まさに電話の交換が手動から自動に変わったのと同じように、ITを本当に「みんなのもの [2] 」に変えていく変革なのではないかと思います。 [2] マイクロソフトのCEOサティア・ナデラが、2016年のIgniteというイベントのキーノートで繰り返し「AIをdemocratizeする」という表現を使っていました。Democratize は直訳すると「民主化する」となりますが、この文脈では「一部の専門家だけしか利用できなかった高度な処理が、みんなの手の届くものになる」というニュアンスがより自然だと思います。私がここで使っている「みんなのもの」というのも、同じニュアンスです。これまではIT部門などの専門家の助けを借りなければ新たなIT活用を始めることができませんでしたが、これからは専門家の手を借りずともユーザー部門だけで積極的にITをビジネスに活用することができるようになってきました。これにはメリットもデメリットもあると考えていますが、詳細は今後の連載の中で書かせていただきます。 第 1 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話) 第 3 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話)

0

第 1 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話)

今や新鮮味のある予想ではありませんが、私は「クラウドは今後さらに広範に活用され、より一般的な方式になる。一方、従来型の IT 運用はなくなることはないが、縮小する」と考えています。その根拠を、クラウドの裏側での運用の生産性 [1] という観点でご説明してまいります。   コンピューターの提供形態は皆さんご存知の通り、大型ホストから始まりクライアント サーバー、イントラ ネットなどと変化してきました。その中で IT プラット フォームの運用効率も着実に改善してきたのは間違いありません。しかし、クラウド コンピューティングというのは、この効率/生産性がこれまでの改善とは全く別次元のレベルで劇的に変わります。従来型の IT プラット フォームとクラウドの特徴的な違いはたくさんあるのですが、その中でこの運用生産性の違いはこれまであまり語られていないように思われます。   クラウドの中では、すべてのコンポーネントは徹底的に仮想化され、作業手順は標準化され、人手の介入を排除すべく自動化されます。この取り組みは、以下の観点でメリットがあります。 マニュアル作業のミスによる品質低下を極小化する お客様ニーズに合わせた迅速な、機能及びキャパシティの拡張を実現する スケール拡大に伴う人件費コストの拡大を抑える   これらについて次回以降の連載の中でも繰り返し触れることになると思いますが、今回は「運用の生産性」という観点で掘り下げてみたいと思います。 従来型の IT の運用では、様々な場面で人によるマニュアル操作が介入し、それによって運用に柔軟性を生みユーザー インパクトを回避するのが一般的になっています。たとえばハードウェアの老朽化を更新する作業を考えてみましょう。ざっとした流れはこんな感じでしょうか。 新規ハードウェアの調達の調整 ハードウェア セットアップ OS とミドルウェアのセットアップ アプリケーションのセットアップ システム切り替えタイミングのユーザーとの調整 切り替え作業 旧ハードウェアの撤去 これらの作業のうちどこまでが自動化で実現されているかは企業によって異なりますが、作業全体のコーディネーションは必ず人の手によって行われています。対象システムの重要度、業務の繁忙期、予算と会計年度の兼ね合いなど四方八方をにらみつつ、いつまでに各作業段階が完了しなければいけないのかが計画され、様々な制約条件との関係から各ステップの実施時期が綿密に計算されます。特にユーザー影響が避けられない作業のタイミングは利用部門と十分に調整を行い、業務影響を最小に抑えられるよう万全の体制で臨む、というのが企業 IT では一般的なパターンかと思います。こういった複雑きわまりないコーディネーションを人が根回し、調整しコントロールしています。 個々のステップの作業内容についても、繰り返しの頻度がよほど多くない限り、つまりシステム規模がよほど大きくない限り、投資対効果の観点からわざわざシステム化して自動化するのは「割に合わない」という結論になり、人によるマニュアル作業の割合が多くなる傾向にあります。 では、クラウドの場合はどのように進むのか、次回をお楽しみに。 [1] 「生産性」には様々な定義方法があります。ここでは、ひと一人あたり何台のサーバーを管理、運用できるか、という意味だと考えてください。 第 2 話 産業革命としてのクラウド (全 3 話) 第 3 話 産業革命としてのクラウド (全…

0