【先駆け! AI 塾】AI をビジネスで「使いたくない」その理由とは?


 

「先駆け! AI 塾」ブログ
本シリーズでは、AI を "誰にとっても身近なもの" と捉え、あらゆるビジネスを発展させ、人々の生活をより豊かにするための「ツール」として活用していくための情報を発信していきます。

 

Chapter 1-3: AI をビジネスで「使いたくない」その理由とは?

AI の研究・開発が世界的な規模で進み、実際にビジネスシーンで AI を活用する取り組みも本格化する中、一方では、導入に対してある種の不安や抵抗を抱いている人も少なくありません。その理由としてよく耳にするのが「お金がかかるだけで、大した効果は望めないだろう」との意見です。これは「流行物は廃り物 (急激な流行は、間もなく衰退する)」という言葉にもあるように、安易なブーム便乗への警戒感を示しているとも言えますが、果たして実際のところはどうなのでしょうか。今回も引き続き本記事の掲載に先立って行った調査結果※1をもとに、IPA (独立行政法人情報処理推進機構) の古明地 正俊 (こめいち まさとし) 氏にご指摘をいただきながら、探っていきましょう。

AI は「お金がかかる」もの?

まず、現在職場で AI を導入していない方を対象に、「今後 AI を導入して業務を効率化したいですか?」と質問しました。結果は「とてもそう思う」「ややそう思う」という回答が 61% で、残りの 39% は「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」となり、約 4 割の人が導入に消極的だということがわかりました。

次に AI 未導入で、かつ業務に AI を取り入れて効率化したいと思わない層に対して、その理由を質問しました。回答で最も多かったのは「費用対効果がわからないから」が 34%、以下「自分の業務は AI ではできないから」「複雑な処理判断が必要な業務だから」と続いています。さらには「そもそも AI で何ができるのか、わからないから」という回答もありました。

この結果から、AI 導入に消極的なユーザーの多くは AI 導入に必要となるコストが、それに見合う成果に結びつくかどうかについて疑問を持っていることが分かります。また、AI の能力自体は認めているものの、人が行ってきた仕事を代替するにはまだ不十分だと考えていることもうかがえます。これについて古明地氏は次のようにコメントしました。
「企業にとってコストや費用対効果は投資において非常に重要な論点です。大きな話題になっているプロジェクトでは億単位の投資が普通に行われていますから、”AI はお金がかかるもの” という印象を持つ人も少なからずいるでしょう」。

ビジネス課題解決に AI が効果的?

続いて、「費用対効果がわからない」と答えた方が、普段の業務でどのような課題を持っているかを調べてみましょう。ここで最も多かったのが「帳票・伝票等、業務内容がデジタル化されていない」という回答でした。以下「業務が属人化されている」「業務が標準化されていない」「人為的ミスが起こりやすい」と続いています。

これらの課題は程度の違いはあっても多くの企業に存在するものであり、「属人化の防止」や「業務の標準化」、「人為的ミスの削減」は、AI が得意とする分野です。具体的には、

  • 属人化の防止
    あらかじめ決めた仕事を AI が行うことで、特定の担当者に頼らない環境づくりが可能
  • 業務の標準化
    AI 導入によって仕事のルールが明確になり、効率化と品質向上が期待できる
  • 人為的ミスの削減
    データ照合など定型業務を中心に、AI でミス発生を最小限に抑えることが可能

などが挙げられます。

その課題、AI で解決できることかも知れません

 AI への「脅威」を払しょくし、AI と「共存」する時代に

ここまでの調査結果から、ビジネスの課題解決に AI が効果的であることは徐々に認知が進んでいるものの、必要なコストについてはあまり知られていないことが分かりました。
これまで IT 分野で話題になったもの (コンピューター、データベース、顧客管理システムなど) は、登場当時は総じて高価で、普及が進むにつれて安くなる傾向がありますが、AI 導入に抵抗感を持つ人の中には、そういった過去の経験から「今はまだ早い」という判断を下しているというケースも考えられます。

これについて、古明地氏は次のように語ります。
「AI にはさまざまな領域があり、必要となるコストにも大きな幅があります。ディープラーニングやビッグデータを活用した AI を自社開発するにはそれなりの投資が必要ですが、たとえば市販の AI ツールを使った顧客分析や需要予測など、それほど負担を感じずに導入できるソリューションも増えてきました。あとは、企業にとって投資に見合うリターンがどれだけあるのかが、判断のポイントになると思います」。

一方、AI を導入した場合にどんな効果が期待できるか、またどんな悪影響が出ると思うかについての質問では、「人為的ミスを減らせる」「業務スピードが向上する」などのポジティブな効果が挙げられている反面、「AI の操作スキルを習得するのが大変そう」「システム エラーによる事故が起きる」といったネガティブな意見も出ています。しかし、操作スキル習得やシステム エラーに対する懸念は PC の普及が始まった 1980 年代にも問題になりました。AI に限らず、大きな変化を迎えたときや、新しいものを取り入れる際に必ずでてくるネガティブな意見といえるでしょう。

 

ビジネス効率化の事例

ここまで AI 導入がビジネスにもたらす効果について考えてきましたが、一口にビジネスと言っても多くの業種、職種があり、期待されるニーズもそれぞれ異なります。ビジネスと AI のかかわりについて、古明地氏は次のようにも指摘しています。「いくら AIで効率化できると言っても、具体的にどの業務で、どのような効果が上がっているのかがわからなければ導入にはつながりません。現在、AI 活用事例として公開されているものは海外の事例が多いですが、今後は日本でもますます AI 導入が加速すると思われます。自社の業態に参考になる事例を探して、検討を進めるべきでしょう」。

AI 導入事例に関する情報は当ブログをはじめ多くの AI ベンダーから提供されていますが、国内の事例に限定すれば、まだまだ豊富に揃っているとは言えない状況です。ただし、日本のビジネス パーソンが「AI は役立つ!」と確信できる材料が充実すれば導入は一気に進み、AI そのものに対する認識も変わってくるはずです。まずはウォーミング アップから全力疾走に向けて、自社のビジネスへの活用を具体的にイメージしてみてはいかがでしょうか。

※1 リサーチ内容: 「AI に関する動向調査」(調査主体 日本マイクロソフト)
ビジネス パーソン/500 サンプル回収 インターネット調査(2018 年 3 月実施)
※ 記事中のグラフについて、パーセンテージの表記合計が四捨五入により100%にならない場合があります

 

2018 年 12 月 11 日 (火) に、IPA (独立行政法人情報処理推進機構) から「AI白書2019」が刊行されました。本書では、AI の技術動向や、国内外の各産業・分野における活用事例、社会実装に向けての課題などが総合的に解説されています。また、日本の各産業での AI 実装化推進のため、日本の経営者層に向けた、業界有識者による対談記事なども収録されています。

「AI白書2019 ~企業を変えるAI 世界と日本の選択~」 印刷書籍版

発行日:2018 年 12 月 11 日

定価:3,600円 (消費税別)

発行:株式会社角川アスキー総合研究所

発売:株式会社KADOKAWA

ISBN:978-4-04-911014-2

Web:https://www.ipa.go.jp/ikc/info/20181030.html

 

取材協力
古明地 正俊(こめいち まさとし)氏
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)イノベーション推進部部長。東京工業大学修士課程修了後、大手メーカーの研究部門においてパターン認識の研究に従事。2001 年野村総合研究所に入社し、IT アナリストとして先端テクノロジーの動向調査および技術戦略の立案などを行う。現在は IPA において IT 社会の動向調査・分析を行い、「AI白書」などの形で情報発信している。
主な著書:
図解 人工知能大全 AIの基本と重要事項がまとめて全部わかる(SBクリエイティブ)
AI(人工知能)まるわかり (日本経済新聞出版社)

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