PST ファイルを廃止する


(この記事は 2015 年 7 月 8 日に Exchange Team Blog に投稿された記事 Deep Sixing PST Files の翻訳です。最新情報については、翻訳元の記事をご参照ください。)

 

2 年ほど前、組織での PST ファイルの廃止について説明し、その作業をサポートするツールを紹介しました。そのときの記事が「.PST を撤退させよう」です。以来、マイクロソフトではこのツールを更新し、新機能を追加してきました。今回の記事では、次の点についてご説明します。

  1. PST ファイルを廃止する多くの理由
  2. PST ファイル内のデータに対する処置
  3. PST データを新しい場所に移行する方法

PST ファイルを廃止する多くの理由

まずは簡単に、企業のお客様が PST ファイルを廃止したいと考える理由を挙げていきたいと思います。

企業のセキュリティとコンプライアンス

  1. ユーザーによって作成される PST ファイルは、管理対象外のデータです。大半の企業が、PST ファイルがどこに作成されるのか、ユーザーがそのファイルをどのように保持しているのか、ファイルがどこに保存されているのか、そしてファイル内には正確にどのくらいの量のデータが格納されているのかについて、ほとんど把握できていません。
  2. PST ファイルは、企業が明確に定めているデータ保持ポリシーを侵害します。PST ファイル内のデータには Exchange のアイテム保持ポリシーが適用されず、PST ファイルに保持タグを設定することはできません。
  3. PST の最大ファイル サイズは現在 50 GB ですが、これ以外にサイズを制限するものがありません。
  4. いずれかのマシンまたはいずれかのユーザーの PST ファイルを、別のユーザーがネットワークを経由せずに簡単に開くことができます。また、PST ファイルは、紛失や盗難のおそれのあるポータブル メディア (サム ドライブ、USB ストレージ メディア、DVD、個人のクラウド ストレージ) にも保存可能です。そのため、たとえファイルがパスワードで保護されているとしても、データ漏えいのリスクに晒されていることに変わりありません。
  5. 企業のバックアップ対策しだいでは、PST ファイルがどこにもバックアップされない事態も起こり得ます。そのような状況では、ユーザーのコンピューターのディスクに問題が生じた場合、データが失われる可能性があります。
  6. PST ファイル内のデータは、組み込みの Exchange 検出ツールで検索することができません。これは、法務部門にとって証拠開示上の複雑な問題となり、証拠開示プロセスに多大な費用がかかることになります。
  7. レコード管理の重要性の詳細については、何年も前に Exchange チーム ブログで記事を公開しています。こちら (英語) からご覧ください。

ユーザー エクスペリエンス

  1. ユーザーが複数の PST ファイルを使用している場合、マシンを切り替えたり OWA を利用したりすると、データが断片化され、統合して表示することができません。PST ファイルは 1 台のコンピューターにしか格納されないため、ユーザーがそのデータにアクセスする手段が限られてしまうのです。そのため、スマートフォン、タブレット、ノート PC、ワークステーションを利用する現代のモバイル ワーカーにとっては、データがそれぞれのデバイスに散在することとなり、必要なときに必要なデータにアクセスできなくなります。
  2. PST ファイルに適用される Outlook のルールは、PST が格納されているコンピューターに対してのみ有効であり、ルールが適切に処理されるように Outlook を実行する必要があります。
  3. ディスク領域も理由の 1 つです。PST の最大サイズは 50 GB で、ユーザーは複数の異なる PST を作成できるため、ワークステーションやデバイスのディスク領域が圧迫される可能性があります。

さて、ここからは PST ファイルを撤廃する方法について話を移していきましょう。

ただしその前に、決めておくことがあります。

データをどこに格納しようと考えていますか?

先にデータの格納先を決めてから、データの移行方法について説明したいと思います。

PST ファイル内のデータに対する処置

それでは、PST を強制的に廃止する前に、すべてのデータをどこに格納するか決めましょう。一般的には 4 つの選択肢があります。

以下の中から、データをどこに格納するか決めてください。

  1. ユーザーのメールボックス
  2. ローカルのアーカイブ メールボックス
  3. クラウドのアーカイブ メールボックス
  4. 思い切って削除する

選択肢 1: シンプルに保存する。Exchange 2013 のメールボックス サイズの性能を考慮して、すべてのメールをユーザーのメールボックスにまとめることができます。

メリット

  • 簡単: 領域さえ確保されていれば、PST Capture ツールを使用してすべての PST データを簡単にメールボックスにまとめることができます。データを 1 つのメールボックスに保持すると、ユーザーごとに各自のアカウントに関連付けられた 1 つのメールボックスを所有することになり、管理の複雑さが解消されます。
  • データの検出が容易: メールボックスは、ネイティブの Exchange 検出ツールを使用して検索できます。
  • データの管理が容易: メールボックスのデータにはアイテム保持ポリシーが適用されます。
  • データが分割されない: Exchange 2013 以降は、サイズの大きなメールボックス (100 GB 超) を処理できるように設計されています。クライアント側としては、どのクライアントからでも各ユーザーのデータにアクセスできるほか、同期スライダー (英語) を使用して OST のサイズを制御することができます。

デメリット

  • コスト: ブログ記事「推奨されるアーキテクチャ」で推奨されているとおりに物理ハードウェアを展開していない場合は、全ユーザーのメールボックス サイズが肥大化し、そのデータの複数のコピーがサーバー ストレージに保持されるため、非常にコストがかかる可能性があります。
  • オーバーヘッド: データベースとログ ファイル用のディスク領域を管理する必要があります。インジェスト処理中は、そのプロセスが管理されていない場合、データベースとログ ファイルがすぐに増大します。
  • 古いバージョンのクライアントでは OST のサイズが巨大になる: 2010 以前のバージョンの Outlook を展開している場合、または Outlook の Mac クライアントを使用している場合、キャッシュされたメールボックスのサイズを制御することができません。

選択肢 2: 個別に保存する。Exchange 2013 では、アーカイブ メールボックスを作成し、そこにすべての PST データをインポートすることができます。

メリット

  • データの検出が容易: アーカイブ メールボックスは、ネイティブの Exchange 検出ツールを使用して検索できます。
  • アーカイブ メールボックスは管理が容易: エージングおよびアイテム保持ポリシーが、メールボックスとアーカイブ メールボックスの両方に適用されます (PST には適用されません)。
  • セキュリティ: ユーザーのローカル ドライブではなく、企業の Exchange サーバー上でデータが保護されます。
  • 安全性: 継続的なレプリケーションによってデータの回復性が確保されます。
  • アクセス性: メールボックスへのアクセス権を持つユーザーは、ほとんどのクライアント (英語) からアーカイブ メールボックスにアクセスすることができます。クライアントには OWA も含まれます (クライアントによってアクセスに違いがあります。PC 向け Outlook については 2011 年 2 月の累積更新プログラムが適用された Outlook 2007 SP2 以降が必要)。

デメリット

  • ストレージのコスト: その後も、すべてのデータを引き続き企業のメール環境にインポートする場合、データ、データのコピー、データのバックアップのためのディスク スペースがストレージとして必要です。

選択肢 3: Office 365 に保存する。Exchange 2013 および Office 365 では、プライマリ メールボックスがオンプレミスに存在するままでも、アーカイブをクラウドに格納することができます。

メリット

  • データの検出が容易: アーカイブ メールボックスは、ネイティブの Exchange 検出ツールを使用して検索できます。
  • ストレージ コストの削減: Enterprise CAL スイートを利用している場合、アーカイブ メールボックスは追加料金なしで使用できます。詳細については、Enterprise CAL スイートのページ (英語) をご覧ください。無制限のアーカイブ メールボックス用ストレージ領域がユーザーごとに提供されます。
  • アーカイブ メールボックスは管理が容易: エージングおよびアイテム保持ポリシーを適用することができます。
  • セキュリティ: ユーザーのローカル ドライブではなく、Office 365 のサーバー上でデータが保護されます。
  • 安全性: Office 365 のクラウド内でデータの冗長性と安全性が確保されます。
  • アクセス性: メールボックスへのアクセス権を持つユーザーは、ほとんどのクライアント (英語) からアーカイブ メールボックスにアクセスすることができます。クライアントには OWA も含まれます (クライアントによってアクセスに違いがあります。PC 向け Outlook については 2011 年 2 月の累積更新プログラムが適用された Outlook 2007 SP2 以降が必要)。
  • ストレージ用ハードウェアの削減: Exchange Online Archiving は Office Online のストレージを使用するため、インジェスト対象の PST 用に追加でストレージを構築する必要がありません。
  • 管理コストの削減: Exchange Online Archiving のセットアップが完了した後は、マイクロソフトがクラウド ストレージのバックエンドの管理を担当します。

デメリット

  • 初期セットアップ: もちろん、クラウドへの移行に伴い、多少のセットアップ作業を行う必要があります。ただし、組織内のすべての PTS ファイル用にストレージの設計と追加を行うことに比べれば、たいした作業ではありません。

選択肢 4: すべてを削除する。あくまでも選択肢の 1 つですが、削除するという方法もあります。

メリット

  • PST ファイルを見つけて削除するのはきわめて簡単です。

デメリット

  • データの消失: すべての PST ファイルは理由があって保存されていたはずです。中には、ビジネス上欠かせないほど重要なデータもあります。
  • ユーザーの怒りを買う: 説明するまでもなく、どのユーザーも怒り心頭に発するでしょう。

以上が、PST データに対する処置の主な選択肢です。以降のセクションでは、データを目的の場所に移行する方法について説明します。

PST データを新しい場所に移行する方法

ここからは、移行の手順について扱います。

  1. ポリシーを通知する
  2. PST ファイルをロックする
  3. データを移行し、PST をワークステーションから削除する

手順 1: ポリシーを通知する

これが最も重要な手順です。

データの保持計画と PST に関するストレージ計画を策定したら、それを通知する必要があります。この通知は、IT 部門から行うのではなく、ポリシー策定者、法務部門、業務部門などから行うべきです。ユーザー側の理解や浸透を促進するには、「PST ファイルを廃止する多くの理由」のセクションで述べたユーザー エクスペリエンス上の問題を指摘すると効果的です。

手順 2: PST ファイルをロックする

ユーザーが元のように PST ファイルを利用できる状態のままにしてしまって、PST ファイルを廃止する意味がありません。以下の Outlook ポリシー関連のレジストリ キーを使用すると、すべてのデータを最終的な場所に移行する前、移行中、移行した後にわたって、挙動を制御することができます。

  1. DisablePST – ユーザーが Outlook プロファイルに PST を追加できないようにする。
  2. PSTDisableGrow – ユーザーが PST ファイルにアイテムを追加できないようにする。
  3. DisableCrossAccountCopy – ユーザーが PST ファイル間でアイテムを移動できないようにする。
  4. DisableCopyToFileSystem – ユーザーがファイル システムにメールをコピーできないようにする。

ユーザーが PST ファイルにアイテムを追加できないようにするためのオプションの詳細については、http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ff800883.aspx を参照してください。

手順 3: 現在の PST ファイルのデータを移行する (方法は 3 つ)

  1. PST Capture ツール (英語) を使用して移行を自動化する
  2. ユーザーが各自のデータを移行できるようにする
  3. PST ファイルをマイクロソフトにアップロードまたは発送し、インポートを依頼する

方法 1: PST Capture ツールを使用して移行を自動化する

PST Capture ツールは、組織内のすべての PST ファイルを検出し、それらを一元的な場所にまとめます。その後、目的の場所 (メールボックス、アーカイブ メールボックス、クラウドのアーカイブ メールボックス) にインポートします。

方法 2: ユーザーが各自のデータをメールボックスまたはアーカイブ メールボックスに移行できるようにする

優秀な自動化ツールをご紹介したばかりですが、オプションとしてユーザーが手動で各自のデータをインポートする方法を挙げたのには理由があります。

このツールは便利ではあるものの、一定の制限があり、一部のお客様には有効ではありません。

  1. 柔軟性がない: このツールで PST からメールをインポートする際に、内容や作成日時でフィルタリングを行うことができません。
  2. 各デスクトップにエージェントが必要: このツールを使用するには、すべてのデスクトップにエージェントをインストールする必要があります。
  3. PST Capture ツールで PST の移行を完了するには、Outlook をシャットダウンする必要がある

この方法で移行作業を行うと、管理者に多大な負担が発生します。管理者は次のようなプロセスを管理する必要があります。

  1. ユーザーに対するデータの移行方法と移行先の通知
  2. データベースとログの管理にまつわる問題への対処 (オンプレミス環境にアップロードする場合)
  3. PST をロックするための各設定のスケジュール策定
  4. ユーザーのフォローアップ
  5. ユーザーのフォローアップ
  6. ユーザーのフォローアップ

つまり、この方法で移行することは可能ではありますが、非常に時間と手間がかかるのです。

方法 3: PST を Office 365 のメールボックスまたはアーカイブ メールボックスに格納するようにマイクロソフトに依頼する

マイクロソフトがお客様に代わって PST をクラウドに移行いたします。大量のデータをアップロードする場合は、これが最適な方法です。Azure AZCopy ツールを使用して PST ファイルを直接アップロードしていただくことも、ディスクを送付していただくことも可能です。一般的に、データが 10 TB を超える場合はディスクの送付をお勧めします。

要件

  1. PST ファイル: ドライブを送付する場合も、ネットワークからアップロードする場合も、ハード ドライブにコピーする、またはクラウド ストレージにアップロードするために、お客様ご自身が PTS ファイルを収集する必要があります。
  2. アクティブなユーザーが設定されている Office 365 テナントと、データ インポート用の全ユーザー分のメールボックス: 現時点では、Office 365 に既にメールボックスをお持ちの場合にのみ、この方法をご利用いただけます。
  3. PST マッピング ファイル
  4. Mailbox Import Export 管理役割を持つユーザー アカウント

ドライブ送付時の追加要件

  1. ハード ドライブ: PST のインポート サービスでは、3.5 インチ SATA II/III ハード ドライブのみがサポートされています。4 TB を超える容量のハード ドライブはサポートされていません。インポート ジョブでは、ドライブ上の最初のデータ ボリュームのみが処理されます。データ ボリュームは NTFS でフォーマットされている必要があります。SATA II/III USB アダプターを使用すると、ほとんどのコンピューターに SATA II/III ディスクを外部接続することができます。
  2. BitLocker による暗号化: ハード ドライブ上のすべてのデータは、BitLocker を使用して、数字パスワードで保護された暗号化キーによって暗号化されている必要があります。暗号化には Office 365 のドライブ準備ツールを利用できます。ドライブ準備ツールは、Office 365 管理センターの [IMPORT] タブから利用できます。
  3. 配送を依頼する業者の情報 (ドライブの送付を希望される場合)

Office 365 のインポート サービスの詳細については、下記をご参照ください。

       ブログ記事

       TechNet 資料 (英語)

       TechNet 資料の FAQ (英語)

その他にも関連記事が公開されています。

       インプレース アーカイブ – http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/dd979800(v=exchg.150).aspx

       Outlook 2010 の法令遵守とアーカイブを計画する – http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ff800883.aspx

       個人アーカイブについて – http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/dd979795(v=exchg.141).aspx

       Office 365 インポート サービス (英語) – https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ms.o365.cc.IngestionHelp.aspx?v=15.1.166.0&l=1

       SPO 移行向け Office 365 インポート サービス (英語) – https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/mt210445.aspx

Mike Ferencak
シニア プレミア フィールド エンジニア

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