テレワークのベストミックスを考える


安倍政権下でも成長戦略のための重要な施策のひとつに入っている「テレワーク」ですが、今年 3 月に国土交通省が発表した「平成25年度テレワーク人口実態調査」の結果によると、「週 1 日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数」は全国で 260万人、全労働者に占める割合は 4.5% となっています。これは、「世界最先端 IT 国家創造宣言」(平成 25 年 6 月 14 日閣議決定)で定義された指標で、この人数を国家戦略として今後増やしていこう、というものになります。

「テレワーク」という単語は和製英語ですが (=アメリカ人に言っても通じません)、テレワークは 6 つのタイムゾーンにまたがる広大な国土を持つ米国で、1970 年代より進められてきている概念です。東京に一極集中である日本と違い、米国では早くからテレワークに対する取り組みが行われてきており、特に近年では ICT の力を利用したテレワークが進んでいます。

シアトルで朝、会社に通勤して働き始めるころ、ニューヨークではお昼を迎えます。このような広大な国土のさまざまな都市に取引先企業が散らばっているため、ちょっとしたことは電話会議やオンライン会議で済ませてしまいます。場合によってはプロジェクトの最初から最後まで物理的に顔を合わせずに終わることもざらにあります。また、自分の上司やチームメンバーが自分のオフィスの中にいるとは限りません。遠く離れた都市にある他の事業所にいることもよくあり、上司やチームメンバーと長く顔を合わせないことも多くあります。

しかし、一方、誰でもどんな職種でも簡単にテレワークを始めることができるわけではないということも昔から指摘されています。この記事では、いままでにある主要な議論についてみてみるとともに、日本マイクロソフトで持っている知見も踏まえ整理をしてみたいと思います。

 

テレワークには自己管理と成果管理が求められる

まず、テレワークをすることができる人は、自分から進んでどんどん仕事を行える人でなければなりません。オフィスで他の人に見られていないと仕事がはかどらなかったり、サボってしまうような人には向かないといえます。また、まだ新人もしくは異動したてで人から密接に教えてわないと作業や判断ができない段階にある、など、その職種におけるスキルレベルにもよってきます。他人からのフィードバックがない環境でも自己管理をしっかり行え、パフォーマンスをあげられることが求められます。

また、成果に対する報酬には「時間報酬型」「固定報酬型」「成果報酬型」の 3 つがありますが、管理者側から見ると見えない場所で働くテレワーカーに対しては成果報酬型が一番見通しがしやすいと言われています。人事評価制度についても、「人物評価」重視の評価システムから「仕事や業績評価」の成果主義重視の評価システムに変更するほうがテレワークが導入しやすいといわれています。

テレワークは国策で進めていることもあり、2014 年は総務省佐賀県岡山県をはじめとしてさまざまな官公庁・地方自治体でも導入・推進が進みました。

  

分業/オペレーションワークには相性がいいテレワーク

他の人とのやり取りが少ない状態でも仕事が進めやすい職種からテレワークを導入するとうまくいきやすい傾向にあるようです。テレワークをやりやすい職種については、個人の作業やオペレーションワークに分解できる仕事があるもの、と言われています。マイクロソフトでもオペレーション部門を中心に、世界中の様々なビジネス拠点に分散して人が配置されており、国をまたいだチーム編成やレポートラインが構成されています。日本マイクロソフトでは 2007 年から育児・介護 (看護) ・自身の傷病などの場合に適用される部分的な在宅勤務制度を開始し、当初はバックオフィス部門を中心に導入してきました。

 

共同作業やコミュニケーションもツールの力でこなすことができる

そして 2012 年 7 月からの現制度では、日本マイクロソフトでは入社後 3 ヶ月間が経過した社員を対象にすべての職種で週 3 日まで適用できるようになっています。テレワークが広げられるようになってきた理由としては、ノウハウがたまってきたことに加え、テクノロジーの進化により、より柔軟な仕事環境の構築が可能になってきたことが挙げられます。

従業員が PC に加えスマートフォンやタブレットなど複数のデバイスを、私物も含めて所持するようになってきたことを加え、インターネット/無線 LAN/携帯電話ネットワークの強化、私物デバイスから仕事環境にログインをしたりデータにアクセスする際のセキュリティの確保Lync や Officeファイルの共同編集など、離れた場所からも音声、映像、資料をリアルタイムで共有して仕事を進める技術が進んできている、というのは在宅勤務、テレワークが実際に活用されるための大きな要素となります。

これにより、ちょっとしたコミュニケーションであれば、わざわざ物理的に会わなくても、オンライン会議やチャットでコミュニケーションを済ませることができてしまうため、離れた場所からでも十分にコミュニケーションに参加することができます。会議についても、オンラインでできてしまうものとできないもの (人の顔色を見ながらの密接なコミュニケーションが必要、緊急度が非常に高い、など) の 2 種類に分けることができ、前者についてはリモートでも問題ない、ということにしてしまいます。会議出席依頼に 「Lync 会議への出席」リンクをつけておけば、人によっては離れた場所から参加できることになります。また、「在席情報」を活用することで、離れた場所からでも相手の状態を知ることができ、在宅勤務で一番問題となる「疎外感」を軽減することにつながります。

  

テレワークはクリエイティブワークには向かないのか!?

一方で、米ヤフー CEO のマリッサ・メイヤー氏が「在宅勤務は仕事とは言えない」と言ったように、IT 企業であってもテレワーク、在宅勤務を肯定しない経営者もいるようです。また、人によってはクリエイティブ ワークは「メンバーが盛んにブレストをして作り上げるので、顔を合わせて行う以外の方法は不可能」と言い切る人もいるようです。他方、クリエイティブワークだからこそ在宅勤務ができる、と言っている経営者もいます。この辺は意見が分かれるところで、それぞれの人の概念に対するイメージがかみ合っていないようにも見受けられます。「クリエイティブワーク」とは何か、ということをもう少し分解して考えていく必要があります。

どんな仕事にもクリエイティブに考えないといけないところはあるものです。「新しい物を生み出す」仕事をしている場合だけでなく、仕事の新しいやり方を考えてみたり、課題の今までにない解決策を考えてみたり、など、たとえばバックオフィス業務の中にでもクリエイティブな要素は存在します。

デザイン、ソフトウェア開発、アート制作、ビジネスプランの作成など、創造性が求められる仕事では、ブレーンストーミングと呼ばれる、少人数による顔と顔を突き合わせて喧々諤々とディスカッションを行いながら新しいことを生み出していく過程が少なからず求められることがあります。創造性とは「新しいアイディアを生み出す」こと、そしてそれに求められるのは、それぞれの人が持っているアイディアを掛け合わせて新しい何かを作るということです。相手の言ったこと、その言葉や微妙なニュアンスを感じながら言うことを変えたり、話の流れを変えていったりということが求められます。そのような場合は、たしかにテレワークで対応するのではなく、物理的に会って話をすることが適切です。

ただし、クリエイティブワークは四六時中ブレストをやっているのかというと、そういうわけでもありません。ひとりで静かに考えてみたり、何かほかのことをやっているときに偶然ひらめく、ということもあります。また、ブレストである程度プランの方向性が決まってしまえば、あとはコーディングやテストをしたり、試作品を作ったり、調べ物をしたり、と、オペレーションや作業になることもあります。

つまり、クリエイティブワークにも「多人数でアイディアを出し合う過程」と「1 人で行う過程」の 2 種類の過程があることが分かります。前者の場合は会って話し合うべきですが後者の場合はテレワークでも十分対応できる、またはむしろテレワークのほうがはかどる場合もある、ということになります。

  

極端になりすぎず有事に対応できる日頃からの準備が肝心!

結局のところ、職種によらず大抵の人の仕事の中には「多人数でアイディアを出し合う過程」と「1 人で行う過程」の 2 種類の過程があります。それぞれの割合については、職種によって変わってくるかもしれません。前者の場合は集まったほうが捗るものと、リモートでも可能なものに大別されます。後者の場合、テレワークでも対応が可能です。また、お客様や動かせない施設との対面業務がある場合、たとえば営業で客先に行く、患者を診る、大規模な設備を使って作業をする、などの場合、テレワークが難しいことが多いので、それを行っている時間はテレワークができないことになります。

これらを総合的に考えたときに、「すべてをテレワークで行う」「テレワークは全く導入しない」といった極端な議論はいずれも実際に仕事をしている人の状況を踏まえない意見ではないでしょうか。実際には、それぞれの担当業務の中でテレワークができる部分についてはうまくテレワークができるように調整して、一定の割合でテレワークをできるようにする、もしくは実際にはやらなくてもできるよう準備をしておく、ということが、今後の時代の働き方を考えたときに重要になってくるでしょう。

少なくとも、テレワークができる部分に対してテレワークを行えるようにすることで、子育て、介護が必要な世代も仕事ができるようになりますし、東京にいなくても仕事ができる人の割合を増やすことができます。今後の日本の働き方の将来像を考えるには必須です。週に 1 日でもテレワークができるようになれば、働きやすさがかなりアップする人も多くいるはずです。

加えて、日頃からテレワークの働き方に慣れておくことで、東日本大震災のような不測の事態が起こった時にも、安否確認からその後の事業継続まで、あせらずに対応することができるというメリットもあります。

 

テレワーク導入を検討してみよう

実際に在宅勤務を導入したお客様が、導入に至るまでに検討したことを説明した記事がありますのでご紹介しておきます。導入の際のご参考になれば幸いです。

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