在宅勤務に必要なルールとテクノロジー


 昨年、2025 年の世代の働き方を予測する、リンダ・グラットンの著書『ワーク・シフト』が大変話題になり、本書は 2013 年ビジネス書大賞にも選ばれました。本書は、未来のビジネスパーソンは、職種や時差を超えて世界中の人との恊働が求められるようになり、時間の「細切れ化」が進む、と予言しています。

2014 年の現在、安倍政権は成長戦略、地方振興・人口減少対策の一環として「世界に勝てる若者」、「女性が輝く日本」といったテーマをあげて取り組んでいますが、場所を選ばない働き方、グローバルな働き方、女性の職場への進出、という点において日本は欧米に大きく後れを取っています。

 

 

リモートワークが前提となっている欧米社会

欧米ではもともと東京のように首都一極集中の構造になっておらず、国や地方をまたいで働くことが進んでいました。国をまたいだ仕事を行うため、ホワイトカラーは英語でコミュニケーションが取れることは当たり前ですし、女性だけでなく男性も含め日本のように長時間オフィスに拘束され働く必要がない、柔軟な時間の使い方を許されています。これは、働き方を支える制度や仕組みの改善、そしてこの 10 年で大きく進化した ICT の力をうまく取り入れた効率的な働き方にシフトしていることが要因として考えられます。日本は労働生産性において19年連続先進国中最下位となっていますが、バブル崩壊後の「失われた 20 年」で「社畜」という言葉まで生み出した働き方の改革を進めてこなかったことが大きく響いていると考えらえます。

たとえばマイクロソフト米国本社の典型的な働き方を見てみると、午前 8 時に出勤しますが (交通渋滞を避けるため) 午後 4 時から 5 時前には退社して保育園/幼稚園/学校に子供を迎えに行きます。夕食は家族で一緒に食べ、子供が寝静まった後に会社にログインして少し残業する、といったスタイルです。ここで注目したいのは、一日の総労働時間は少ないわけではないのですが、会社のオフィスに拘束されている時間はそれほど多いわけではありません。また、出産、育児、介護などの家庭の事情の場合は相当の間、在宅勤務が許されており、休暇も数週間取ることが一般的です。

また、米国では取引先企業が必ずしも自分と同じタイムゾーンに属しているとは限りません。米国は本土だけでも東部標準時 (EST)、中部標準時 (CST) 、山岳部標準時 (MST)、太平洋標準時 (PST) と 4 つ、加えてアラスカとハワイの 6 つの時間があります。シアトルで朝、会社に通勤して働き始めるころ、ニューヨークではお昼を迎えます。このような広大な国土のさまざまな都市に取引先企業が散らばっているため、ちょっとしたことは電話会議やオンライン会議で済ませてしまいます。場合によってはプロジェクトの最初から最後まで物理的に顔を合わせずに終わることもざらにあります。

また、自分の上司やチームメンバーが自分のオフィスの中にいるとは限りません。遠く離れた都市にある他の事業所にいることもよくあり、上司やチームメンバーと長く顔を合わせないことも多くあります。

 

 

働き方を変えてこなかった日本社会

一方、日本の働き方を見てみると、相変わらずオフィスに朝から晩までいることが重要である、という風潮があります。仕事をしている、していないにかかわらず、上司から見て物理的に顔が見えていることが勤勉であることの象徴でした。働いている間はずっと島型対向のレイアウトで顔を合わせながらコミュニケーションをとる、というのが 90% 以上の日本企業で取られている方式です。これは向かい合っている人同士のコミュニケーションが密になるというメリットがありますが、一方、そこにいないことは前提になっていません。そのため、そこにいない人とのコミュニケーション方法があまり発達していません。

その上、日本では東京や大阪などの少数の大都市に大きな支店や取引先が集中しています。そのため、離れた支店や取引先とのコミュニケーションが必要な人は少数の従業員に限られるという特徴もあります。

これらの要因もあり、日本ではなかなか働き方が変わってこなかった、変わるための必然性があまり認識されて来なかったと考えられます。

ところが、2010 年代になっていよいよ日本の人口減少が明確になってくると、経済力の源泉となる労働者を確保するため、いままでの環境では働くことができなかった女性などの新たな労働力確保、そして新たな市場確保のためグローバル市場進出が日本企業にとっても必須の経営課題となってきました。もはやいままでの働き方を維持して働くことが将来的にどんどん困難になっていくことが明白になっています。これからは、自宅や離れた地点とのコミュニケーションをより綿密に行っていく必要があります。

 

 

Lync を使うと在席情報を自動または手動で変化させることで、離れた相手からステータスが確認できます。在席情報の履歴を記録するアプリを作成して、勤務時間終了後に自動的に管理サーバーに記録するようなアプリを開発することもできます。(画面はサンプルイメージです)

在宅勤務を始める際のルール決め

育児をしている 30 代以上の女性、介護を抱える 40 代以上の従業員に、より働きやすい環境を提供するためには、在宅勤務を何らかの形で認めていく必要があります。在宅勤務といっても、長期間にわたり在宅のままの勤務スタイルだけではありません。週一回だけ在宅勤務をする、もしくは逆に週一回だけ通勤する、など通勤と在宅をバランスすることもできます。

また、在宅勤務に向く職種、向かない職種があります。物理的にお客様と接したり工場などの機材が必要になる場合は導入障壁が高くなります。また、入りたての新入社員、一人だけで自律的に働くことができない経験の浅い従業員にも向きません。また時給制の職種よりも成果主義型の職種に向いています。

在宅勤務を導入する際には、勤務をきちんとしているのかどうかが見えにくくなります。勤務開始時/終了時にメールで連絡したりツールに入力する、勤務中は在席していることを示す仕組みを導入するなど、ICT をうまく活用したルール作りをすることをお勧めします。

クラウドベースの情報共有ツールである Office 365 に含まれている Lync を全員がインストールしていると、在宅勤務をしているユーザーの在席情報を他のユーザーが見ることができます。

たとえば、PC などを触っているときのステータス「連絡可能 (緑)」を「勤務中」に割り当て、「応答不可 (赤の進入禁止)」を「休憩」、「業務時間外 (黄色)」を「勤務終了」に割り当てることができます。

このようなツールを手早く導入して運用することも解決策のひとつになります。

 

 

疎外感なくコミュニケーションや共同作業に参加できるしくみ

Lync のインスタントメッセージ機能と在席情報の組み合わせで、離れていても必要な時にリアルタイムなコミュニケーションを始めることができます。

在宅勤務を行っていると、どうしてもオフィスで普通に働いているメンバーとのコミュニケーションがしづらくなってしまいます。電話をかけて話す手もあるのですが、相手が会議などで取り込み中かもしれず、むやみやたらと電話をかけるわけにもいきません。かといってメールを送ったとしても、相手からすぐに返信が帰ってくるとは限りません。ビジネスの世界でメールの平均応答時間は 4 時間と言われていますので、メールによるやり取りは一日に何回も続けられるものではなく、リアルタイムのコミュニケーションには向いていません。そんな時は、Lync の在席情報とインスタントメッセージの組み合わせの利用が便利です。

Lync を関係者全員で入れておくと、その人が連絡可能、会議中、離席中などさまざまなステータスを自動的に表示してくれます。離れていても、連絡を取りたい人がどのようなステータスなのかを連絡を取る前にあらかじめ知ることができます。メンバー何人かの中で知っていそうな人何人かのうちすぐに連絡可能な人を捕まえて、インスタントメッセージのリクエストを送ることができます。

どうしても特定の人とコミュニケーションをとりたいときは、「状態変更通知のマーク」をしておくと、その人のステータスが変更されたときに通知を受け取ることもできますので、機会を逃さずコミュニケーションをすることができます。

Lync でも音声会話をメンバー間で行うことができますが、いきなり音声会話のリクエストをするよりは、まずインスタントメッセージで相手の状況を確認するのがおすすめです。また、音声会話をしなくてもテキストで済んでしまうことであれば、相手が他の作業をしていたとしても受け入れてもらえる可能性が高まります。

このように、離れていても相手のステータスを把握して、必要な時に必要な人をつかまえてコミュニケーションできる仕組みを導入しておくことで、在宅勤務で発生する疎外感を軽減することができます。

左の画像にあるように、Lync クライアントを起動している状態で、緑になっているメンバーを見つけたら、マウスカーソルをあわせて連絡方法のボタン (この場合はインスタントメッセージ) をクリックして、インスタントメッセージを開始することができます。

 

 

離れていても労務管理や成果管理ができるしくみ

在宅勤務を採用する際の一つの大きなハードルとして労務管理があります。上司から見ると在宅勤務者は姿が見えず、どのように働いているのかどうか見えづらくなります。見えていないとついついよくない評価をつけがちですが、ここは成果型の管理に徹して評価することが必要です。労務管理については前述のツールを利用することも効果的です。

また、在宅勤務は育児/介護などで従業員は通常の勤務以外にも二重に労働/作業をしているので、決してサボっているわけではありません。場合によっては、育児/介護の合間時間や深夜に作業をする必要が出てくることもあります。二重の労働/作業に対する気遣いも必要になります。

また、長期間在宅勤務になると精神的に孤独感を感じる場合もありますので、定期的に顔を合わせる仕組みづくりも必要になってくる場合があります。

Lync を使うと、離れた相手の顔を見ながら会議をすることができます。

 

 

在宅勤務者側の気遣いも必要

一方、在宅勤務者側も他のメンバーに過度に気を使わせないための工夫が必要になる場合があります。深夜や週末に作業をする場合は、Lync の在席情報をあえて「離席中 (黄色)」にしたり、メールを出す場合は、次の業務時間の最初にメールが配信されるように指定したりといった配慮をしておくとよいでしょう。

Outlook でメールを配信する際は、配信を行う日時を指定することができます。

実際には、配慮すべき内容は職場環境や慣習によって変わってきますが、働き方や気遣いのルールをあらかじめ作っておくとスムーズに事が運ぶでしょう。

 

 

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。在宅勤務を始める際には、制度面、ツール面、考え方や気持ちの持ちようの変化など、いくつかのことをきっちり準備しておく必要があります。実際に在宅勤務を導入する際には組織に合わせたルールを模索するための試行錯誤も必要になってくるので、段階的に進めていくことをお勧めします。

実際に在宅勤務を導入したお客様が、導入に至るまでに検討したことを説明した記事がありますのでご紹介しておきます。導入の際のご参考になれば幸いです。

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