IT 管理者は Office 365 とどう付き合えば良いか #1

(この記事は 2014 年 6 月 26 日に Office Blogs に投稿された記事 Office 365 for IT professionals: part 1 の翻訳です。最新情報については、翻訳元の記事をご参照ください。)

今回は、Office 365 チームのシニア オペレーション プログラムマネージャーを務める Alistair Speirs の記事をご紹介します。

先日、マイクロソフトは、Microsoft Virtual Academy で Office 365 Fundamentals オンライン コース (英語) をリリースしました。このコースは IT プロフェッショナルに Office 365 の基礎を学習していただくためのものです。さらに高度な内容については、Office 365 の ID とサービスの管理コース (英語) をご覧ください。これらのコースは、MCSA: Office 365 証明書 (英語) のコースを学習する際の基礎として役立ちます。

この新しいブログ シリーズでは、上記のコースに含まれていない内容について解説します。まずは、皆様からよくいただく「IT プロフェッショナルとして、製品の観点から、また、クラウド コンピューティングの観点から、Office 365 をどのように捉えればよいのか」という疑問にお答えしましょう。

一般ユーザーが持つイメージ: クラウドはあらゆる面で最高のサービス

これまでにクラウド コンピューティングに関するニュースを聞いたことはありますか?空に浮かぶ雲を見上げて、クラウドも実際に (比喩ではなく) そのような姿をしているのだろうと想像している方や、クラウドの世界とは新機能やユビキタスなアクセス、可用性が約束された、まさに空には虹が掛かり、お菓子があふれ、ユニコーンが住むような、失望とは無縁の世界であるとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。


IT プロフェッショナルはクラウド コンピューティングをブラックボックスとして扱わずに、
ユーザーが使用するツールとして理解を深める必要があります。

IT プロフェッショナルである私たちは、これまでにもこうした過剰な宣伝文句をよく耳にすることがありました。そして、クラウドコンピューティングがあらゆる問題に対する決定的な解決策であるという評判を聞くたびに、驚かされるというよりは、むしろ残念に思ってきました。IT プロフェッショナルは、クラウドが空の上にある、広大でふわふわした幸せな場所ではないことを知っています。しかし、その一方で、クラウド活用には、作業負担が軽減され、時間を有効活用できるようになる可能性を秘めていることも、容易に見てとれるはずです。これにより、重要な IT 構想に集中して取り組み、高度に管理された地理冗長システムを有するデータ センター内の、巨額な資金が投じられたインフラストラクチャを活用できるようになるでしょう。

クラウド サービスは、電子メール、オンラインゲーム、ソーシャル ネットワーク、写真の共有、アプリケーションのダウンロード、音楽の購入やストリーミング配信、動画の視聴などで、既に生活の一部として利用されています。私たちはこれまで、日々の生活の中でこのようなクラウドサービスの恩恵を受け、積極的に活用してきましたが、一方でこれらのサービスをブラック ボックスとして扱い、内部の動作は見えないものであると考えてきました。

しかし、クラウド サービスがビジネスの場にも浸透し始めている現在、これをブラックボックスとして扱うべきではありません。ユーザーが使用するクラウド サービスを理解し、管理および実装を行うことが IT プロフェッショナルの仕事であり、これができてこそ IT における真の専門家であるといえます。

長期的視点: ユビキタス コンピューティングの先駆けとしてのクラウド

これまでにコンピューターによってもたらされた革命には、職場や家庭への PC の導入、グラフィカル インターフェイスの発明、インターネットの普及など、さまざまなものがありました。また、技術的には、1 台のコンピューターが全体で使用されていた時代に始まり、単純にコンピューターが共有のものであるか個人のものであるかで区別される時代、さらには専門分野に特化した商品であるかどうかで区別される時代へと移り変わってきました (下図参照)。


出典:「BEING HUMAN: HUMAN-COMPUTER INTERACTION IN THE YEAR 2020, MICROSOFT RESEARCH, APRIL 2008 (人類であること: 2020 年における人類とコンピューターの関係)」(英語)、マイクロソフト リサーチ、2008 年 4 月

これらのコンピューターによる革命は、すべての企業で同時に進行したわけではありません。それと同じようにクラウドコンピューティングの場合も、まず一部の企業が、他社に先駆けて自社の IT アーキテクチャとして採用するでしょう。William Gibson 氏の言葉を借りると、「未来は既にここまで来ている。しかし均等に浸透してはいない」という状態なのです。

また、クラウド コンピューティングはユビキタスコンピューティングの先駆けであり、ユーザーはこれにより数千台ものコンピューターの能力を利用することができます。誰もがアクセスできるこの技術は、小規模な企業に大企業と同様の処理能力を与え、部署間の壁をなくし、マネージャー、スタッフ、ベンダー、請負業者、顧客の間に従来とはまったく異なる生産性エクスペリエンスを提供します。

Office 365 の現在: マイクロソフトのパブリック クラウドと最新のアプリケーションで実行される新しい生産性サービス

Office 365 は、Exchange Online、SharePoint Online、Lync Online などのマイクロソフトの各生産性サービスすべてを指します。しかし、Office 365 は、単に使い慣れたサーバー製品のクラウド版であるだけでなく、Windows PC や Mac で生産性アプリケーションを利用したり、Windows Phone や iOS、Android でモバイル アプリを利用したりするための配信サービスや管理サービスも提供します。これらのアプリケーションは現在 Office 365 ユーザーの大部分が実際に利用しているサービスですが、一部のユーザーはそれをクラウド サービスと認識してさえいません。

Office 365 では、従来の生産性サービスのクラウド配信版以外にも、複数のワークロードにわたってサービスを利用でき、疎結合サービスに一貫したエクスペリエンスを提供します。その一環として、ドキュメントの共同編集機能の強化、よりスマートな受信トレイの管理を推進するための機械学習の利用、Yammer および Outlook Web App によるグループ ディスカッションの統合などの機能が、今後導入される予定です。

この他にも、オンプレミス版には存在しない、新しい独自の生産性エクスペリエンスを配信しています。Office 365 のエンタープライズ ソーシャル ネットワーク サービスである Yammer などは、クラウド ファーストを実現し、Office 365 のインフラストラクチャのスケールと他のワークロードを活用して独自のユーザーエクスペリエンスを提供できるように開発されています。


Office 365 は互いに連携しているサービスをまとめた集合体です。

ユーザーから見えない場所に、ユーザーに表示されるサービスやアプリケーションの管理とサポートを支援する共有プラットフォームサービスが存在します。その中には、Office 365 のアプリケーションやサービスだけでなく、他のマイクロソフトのビジネス サービスのユーザーも含めて管理する ID プラットフォームが含まれています。場合によっては Windows Azure Active Directory サービスや、すべてのサービスの正常性を確保するためのシステム監視サービスとのフェデレーションを行う他の任意のサービスのユーザーも、このプラットフォームで管理されます。

皆様のご想像のとおり、このような多様なサービスの集合体を管理するには、Office 365 チームが提供する非常に厳格な運用が必須です。これらのサービスの多くは、サービスのインシデント、更新の管理、およびコンプライアンス要件の処理がソフトウェア的に自動化されています。マイクロソフトはこれらの日常的な運用を担当しますが、それと同時に、統合レポートサービスやサービスの要求の処理、ドキュメントの管理などを通じて、その内容を管理者の皆様にわかりやすくお伝えしていくことも非常に重要です。

IT プロフェッショナルにとっての Office 365: マイクロソフトにすべてお任せ

突き詰めて言えば、Office 365 の特長はお客様がそれぞれのユーザーに集中できることです。マイクロソフトは、それを実現するような機能を皆様にお届けしたいと考えています。展開している各製品やメンテナンス、修正プログラムの管理について、十分な容量や負荷に耐える能力があるかどうかについて、また、サーバーの追加を考慮したシステム構築やデータセンターの湿度についてなど、お客様はさまざまなお悩みを抱えていることでしょう。お客様のそうした課題をこれまでよりも大幅にコスト効率のよいスケールで解決できるように、マイクロソフトの専門家たちがお手伝いいたします。

修正プログラムによるメンテナンスやアップグレードなどは、すべてマイクロソフトが行います。お客様は、ご自身でこのような作業を行ったり、数年ごとに巨額の設備投資費の承認を取ったりしなくても、月額料金をお支払いいただくだけで常に最新で最上級のエクスペリエンスを確実にご利用いただけます。Office 365 を使用すると、社内のユーザーのために新しいテクノロジを最大限に活用したり、IT プロフェッショナルのみが完全に把握できるビジネス チャンスを開拓したりすることに、より多くの時間を費やせるようになります。

—Alistair Speirs