今、政府によるデータ アクセスに関する国際協定を考える


(この記事は 2014 年 1 月 20 日に Microsoft on the Issues に投稿された記事 Time for an international convention on government access to data の翻訳です)

 

投稿者: Brad Smith
マイクロソフト法務本部ゼネラル カウンセル兼エグゼクティブ バイス プレジデント

先週、オバマ大統領は国家安全保障局の役割について語り、米国政府の監視活動の方法にいくつかの重大な変更を行うことを発表しました。大統領が発表した取り組みは、米国以外の市民のプライバシー保護を含む重要な問題が進展することを意味しており、マイクロソフトはこの取り組みを評価しています。課題はまだ残っており、ある程度詳細を詰め、追加のプロセスを定める必要があります。そのため、今後も政権と議会の両方に働きかけて、私たちの業界で 12 月に概要がまとめられた原則に沿った改革を主張していくつもりです。

今週、世界経済フォーラムの年次総会がスイスのダボスで開催されます。この会合では、データのプライバシー保護と政府の監視活動の改革に関するこれらと同様の問題が議題として予定されています。私たちは、これらの議論により、政府間で連携して実施できる国際的な取り組みに注目が集まることを期待しています。これらの問題に対するアメリカ人のリーダーシップと行動力は不可欠ですが、それに加えて国際的な幅広い議論を行うべき時が来たと感じています。私たちには、監視活動とデータ アクセスに関する国境を越えたルールを作成するための、国際的な法的枠組み、つまり国際協定が必要です。

歴史的に見れば、国家的危機の時代には、公共の安全と個人の自由の間でしばしば衝突が生じます。ナポレオン戦争の時代には、ジョン・アダムスが外国人・治安諸法に署名し、これを成立させました。南北戦争の時代には、リンカーン大統領が人身保護令状の発行を停止しました。第二次世界大戦では、日系アメリカ人が米国政府によって強制収容所に送致されました。特定の時代背景の中では、世論は安全保護を重視するように大きく傾きます。そしてその時代が過ぎると、人々は、いかに公共の安全と個人の自由をより永続的に両立すべきかについて議論するようになります。

現代においては、以前にも増して問題は複雑になっています。対テロ戦争は、これまでの戦争よりもさらに永続的です。争いのない状態でも懸念が払拭されることのない時代が今後も続きます。

それに加えて、IT 技術が以前よりも至る所に存在しており、関連する問題もグローバル化が進んでいます。昨年の問題により、米国憲法および米国の法律によってもたらされる強力な安全保護が、米国以外の市民にはほとんど適用されないことを世界中が再認識させられました。さらに、監視活動が各国政府によって国際的に行われていることを私たち全員が再認識しました。また、多くの業界レポートで明らかになっているように、世界各国の政府が顧客データへのアクセスを要請しています。

結果として、私たちはこの話題をさらに広めて、新しい国際的な法的枠組みが作成されるように、各国政府を集める必要があります。

このような協定は、人権と個別のプライバシーの尊重を土台とする必要があります。特に、この協定によって、各国政府が自国以外の関係国の一般市民に関する情報を求める場合に、法的基準と適法手続きが遵守されることを徹底する必要があります。

1791 年にアメリカ合衆国憲法修正第 4 条が米国憲法に追加されて以来、この個人のプライバシーの尊重は、アメリカ人の価値観の一部となっています。この修正第 4 条により、「不合理な捜索および逮捕押収に対し、身体、住居、書類および所有物の安全を保障される」米国市民の権利が保護されます。

しかし、これはアメリカ人だけの価値観ではありません。実際には、アメリカ独立の 20 年前に、米国から大西洋を挟んだ英国のコモン ローとして策定されたときから生まれていました。この価値観は、2 世紀以上前でも同様に、多くの国で取り入れられていたのです。

国際協定では、こうした共通の価値観を取り入れ、新しい共通のプロセスと併用されるようにする必要があります。このような取り組みを推進する機運が政治的に高まっているのは、一部には、多くの法執行機関が、犯罪を調査して、公共の安全を守るという任務を遂行するために、より良い国際的規則を必要としているという理由もあります。

今日の問題の 1 つは、各国政府がまだ 1800 年代に作られた国際的な法手続きに頼っているという点です。いわゆる刑事共助条約 (MLAT) の下で、19 世紀のスピード感で 21 世紀の問題が扱われている官僚的対応を政府当局が打開する必要があります。

私は、パリのマイクロソフトのオフィスにいた、1994 年のある日の出来事を今でも覚えています。連続殺人犯を追跡している北欧の国の警察から電話を受けたのです。その犯人はさらに犯行を重ねるおそれがありました。警察は犯人の PC のハード ディスクを復元しましたが、犯人は逃亡中であり、警察はコンピューターのファイルの意味を理解するのに大変手間取っていました。警察は MLAT のプロセスを十分に理解しており、それによると、警察が米国の法的要請を得るまでには 2 か月もの期間を要すると思われました。

この一件で、時代遅れの国際的なシステムの欠陥によって、公共の安全が不意に脅かされる可能性があることを見せつけられました。ここ 1 年で私たちが学んだのは、一部の政府の対応が、一般市民に関する情報を得るために、この国際的システムを外れて一方的な行動を取っていたということです。米国以外の民主主義国の一般市民も対象になっていました。

これは最善の方法ではありません。そこで、個人の適切なプライバシー保護を保証すると同時に、必要な場合にデータにアクセスすることを容易にして公共の安全を推進する、新しいプロセスを作る必要があるのです。新しい協定では、これを実現できるよう、既存の MLAT の規則を補足する新しいプロセスを作成します。

たとえば、ある国の機関が調査すべき脅威があると考えており、その他の国の一般市民に関するデータにアクセスする必要がある場合は、この合理化された新しいプロセスを使用して、情報を求めることができます。要請を行う機関は、制定されている適法手続きの基準の遵守を徹底する措置を含め、相手方の国の法の原則と安全保護を遵守する必要があります。

批判的に言うと、効果的なプロセスを持っており、国際基準を満たす方法で適法手続きを遵守している各国政府のみに対して、小規模な活動を開始したどこかの国が、このような協定を開示する程度のことは、これまででも可能だったでしょう。このような動きがあれば、各国政府が短絡的な手段を取って人権を侵害するリスクを防げたかもしれません。

新しい協定への取り組みにより、時間と共に、さらに多くの国の政府の参加が促進されるでしょう。参加するだけで、政府は、公共の安全に対する脅威を調査するためのこれらの新しいプロセスを利用でき、自国の市民の安全保護をさらに強化できます。

最後になりましたが、このような取り組みは透明性を向上させ、法的不確定性を低減させます。法的不確定性は、目下、国際的な新しいクラウド ベースのテクノロジのサービスを停滞させる危険がある問題です。国際的なデータ アクセスの規定を明確化すると、国際間のやり取りがより自由になり、ある国の企業が他の国の市民のためにサービスおよびデータをホストできるようになります。

まだまだ多くの複雑な問題が残されています。しかし、私たちが新しい年を迎えるころには、消費者、企業、政府が一様に、技術の活用に伴い、市民の自由と公共の安全の双方に対処した、公平かつ効果的な新しい国際的取り組みを必要とするようになるのは明白です。

このような取り組みを立ち上げる最良の方法は、米国が主導することです。

 

編集メモ: Brad Smith は、今週水曜日の世界経済フォーラムの年次総会でパネル ディスカッションを行う予定です。パネル ディスカッションのテーマは "The Big Brother Problem - What are the consequences of growing public alarm over personal privacy, data security and intelligence gathering? (政府の問題 – 個人のプライバシー、データ セキュリティ、機密情報収集に関する一般市民の不安の増大により引き起こされる結果とは)" です。

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