Lync と Software-Defined Networking

(この記事は 2013 年 12 月 17 日に The Lync Team Blog に投稿された記事 "Lync and Software-Defined Networking" の翻訳です)

あまり知られていませんが、Lync と Skype のエンジニア チームのメンバーは、多くが Windows Server コア ネットワーク部門の出身です。世界中で優秀な統合コミュニケーション ソフトウェア パッケージとして高く評価されている Lync では、その基盤となるユーザー インターフェイスや機能を構成するために、非常に数多くのネットワーク プロトコル (英語) が使用されています。無線の場合も有線の場合も、通信を利用してさまざまなことが行われていることは、Lync の展開、構成、運用に少しでも関わったことのある方ならおわかりかと思います。

ネットワークは Lync の根幹となるものであるため、この業界で Software-Defined Networking (SDN、英語) が注目を集め始めたとき、私たちは大いに興味をひかれました。SDN の定義については多岐にわたるため、別途お調べいただければと思いますが、一般的には、低レベルのネットワーク機能をソフトウェアベースのプラットフォームで制御される一般的なハードウェアに分離すること、およびアプリケーションのネットワーク要件をソフトウェア コントローラーに伝達することの 2 点であると考えられます。この概念はクラウド規模で運用されるデータ センターから生まれたもので、企業のネットワーク アーキテクチャでの有効性が認識されるようになり、一般市場にも普及してきました。

SDN は、基盤となるネットワーク構造とは独立して仮想マシンを管理するために使用される場合が最も一般的です。また、Lync を導入している組織においては、統合コミュニケーションを利用できるという点も大きなメリットとなります。どのような統合コミュニケーションを導入する場合であっても、ルーター、リバース プロキシ、侵入検知システム、アプリケーション配信コントローラー、ファイアウォール、セッション ボーダー コントローラーなど多数のネットワーク要素が存在する環境で、そのすべてを正しくプロビジョニングして構成しなければ、適切なメディア フローは実現しません。SDN では、これらの要素をすべて個別に構成する必要がなく、単一のポリシーに基づく運用手法が利用できます。この場合、アプリケーションがネットワークに対して何が必要であるかを指示します。

これは大きなパラダイム シフトですが、マイクロソフトはすばやくこの流れに対応し、このたびLync SDN API ( 英語 ) をリリースしました。Lync Server を展開する際にどなたにも無料でご利用いただけます。 この API では、通信開始時のメディア フローに関する情報を RESTful なデータ ストリームで提供します。このデータはさらに SDN コントローラーに送られ、ネットワーク内のどこで何が必要であるかが伝達されます。

ここで、この機能の主要な用途を 3 つ紹介します。

    • 診断 : API から送られるデータを使用することにより、ネットワーク監視システムが Lync のメディア フローと、品質に影響を及ぼすおそれのあるネットワークの動作を関連付けることができます。
    • サービスの品質 (QoS) の自動プロビジョニング : メディア フローが開始されたという情報をコントローラーが取得すると、リアルタイムにこれをネットワークに通知して、該当するパケットに適切なマーキングを割り当てることができます。
    • オーケストレーション : その名のとおり、第 1 層から第 7 層までの各ネットワーク機器をすべて調和して動作させます。

今後数週間、この概念を実現するために 1 年間緊密に連携してきたパートナーと共に、上記の各シナリオについて詳しく取り上げる予定です。たとえば、Nectar (英語) は、Lync SDN API を活用したすばらしい診断アプリケーションを所有しています。また、Aruba Networks (英語) は、同社の最新リリースにこの API を使用して無線通信によるアクセスと優先度を通知しています。この他、業界標準に関する取り組みについてもお伝えすることが多分にあります。マイクロソフトは UCI Forum (英語) および Open Networking Foundation と協力して、SDN フレームワークであらゆるアプリケーションが動作できるようにする方策について検討し、統合コミュニケーションの適用可能性についての議論を進めてきました。

Lync を進化させるために、これからも最先端の技術と機能の開発に注力することをマイクロソフトはお約束します。SDN はまだ誕生したばかりですが、そのチャンスと潜在能力は計り知れません。最後に、Lync Conference (英語) へのご参加をお願いします。SDN と Lync についての詳細や、パートナーやお客様がそれぞれの展開において現在どのように SDN API を活用しているかをお伝えする予定です。