事業所グローバル展開時の IT インフラ・考 (1) ~ 情報共有システムの基本設計


近年の日本企業は超円高によるコスト高を回避し、力をつける海外企業との競合に勝つために東南アジアの安くて優秀な労働力確保のため海外に生産拠点を現地に移動したり、もしくは中流階級が台頭してきている中国やアジアをはじめとする成長マーケットにも事業展開を行うために店舗を開設したり、と海外展開をおこなって現地スタッフを取り込んだグローバルな組織づくりを行う必要性が急速に高まってきています。これらのことを実際に強く感じているお客様も多いのではないかと思います。

 

海外展開時のITインフラの課題

現地に拠点や店舗を開設するにあたって固定電話、携帯電話と並んで必要になる情報共有インフラが、電子メールやファイル共有サーバーなどの情報共有インフラです。また、一部の従業員には、報告書をまとめたり資料を作成するためのOfficeソフトウェアも必要になってきます。これらのインフラについては、構築するに当たり以下のようなことが気になってくるでしょう。

  • Ÿ人数増減の柔軟性: 世界情勢の変化に伴い、拠点の新設や引上げを柔軟に行う必要がある。また、ほかの国と地域に人員を異動させる場合も柔軟に対応できる必要がある。
  • ŸIT管理者の不在: 各拠点の正社員の人数は少なく、その中でIT管理者に人を割くことができない。
  • Ÿ世界中の拠点で利用: 拠点を置くところからは常に利用可能な仕組みである必要がある。拠点によって異なるインフラを使うのは非効率であり、中国やタイ、ベトナムなど東南アジアの国々からも利用したい。また、対応言語もなるべく多いことが望ましい。

これらのことを考えたとき、内部設置型のサーバーを各拠点に設置していったり、Officeソフトウェアを現地で管理していくのはあまり現実的な選択肢となりません。また、日本にサーバーを集約して各拠点にサービスを展開するにしても、一緒の認証基盤やファイル共有サーバーを利用するためには拠点と日本を専用線やVPNなどでつなぐ必要があり、インフラコストがかさみます。

 

グローバル クラウドの活用でインフラ投資は最小限、かつスピードを確保

そこで、より低コストかつ短期間で導入できるオプションとして検討材料にあがってくるのが、クラウドコンピューティングです。クラウド事業者は国内外にいろいろな選択肢がありますが、情報共有インフラのように世界中で利用する可能性があるものについては、地理、対応言語の両面でグローバルに展開している事業者を選択することをお勧めします。

クラウドを使うことで、現地での投資は最小限に抑え、PCのブラウザーからメールやOffice文書を利用することもできるようになります。また、Officeクライアントを使わせたい場合でも、クラウドアカウントごとにライセンス認証をして利用させることができるため、現地で知らず知らずにライセンス違反をしてしまうこともなくなり、ライセンス管理を自分で行う必要がなくなります。

マイクロソフトでは、グローバルに展開可能な情報共有基盤をクラウドで提供しており、それはMicrosoft Office 365 と呼ばれています。Office 365 はクラウド上の一か所の管理ポータルでユーザー管理、メールやファイル共有ポータルについてのアクセス権限も含めすべて日本からWebコンソール上で行うことができ、必要に応じてActive Directoryと連携してユーザー管理を統合することができます。

 

グローバル クラウドの選択と構築時の注意点

グローバル クラウドで海外拠点のシステムを構築する場合、注意すべき重要なポイントが何点かあります。ここでは、そのうち最も重要なものを3点取り上げます。

IDとディレクトリの配置

まず、IDとディレクトリ管理をどのように設計するかというところが大きなポイントとなります。ライセンスについては、人員が拠点間を異動することを考えると、日本でまとめて購入して国と地域間を自由に異動できるようにしておくことが好ましいでしょう。また、Active Directoryなどの認証基盤を各拠点に配置するかどうかは展開する人数次第になります。

拠点に100人以上の従業員がいる場合、すでにローカルでActive Directoryを展開してしまっている場合もあるでしょう。Office 365でアカウントを管理する際は、クラウド上のみで管理するか、日本の本社のActive Directory上で海外拠点分のユーザーも登録管理してしまうことが望ましいです。その場合は、ローカルのドメインへのログイン (Windowsログイン) とクラウドへのログインはドメインの名前が微妙に異なる形になり、パスワードも別になります。

パスワードもWindowsログオンと同じにしたい場合は、Active Directory Federation Services (AD FS) を日本の本社で構築することになります。拠点との間でVPNなどを用意しなくても、Webポータル上からWindowsログインと同じアカウントとパスワードを入力することでログインを行うことができます。

利用する機能設計における拠点のチーム分け

次に、情報共有インフラで利用する機能と、その共有範囲を明確に定義します。たとえば、ファイルの共有はチーム単位と、拠点全体の2通りで共有されるパターンがあるとします。そして、アドレス帳はメールなら全社単位、社員名簿のレベルでは拠点単位、詳細な連絡先の共有はチーム単位、といった具合に、情報共有の深さと共有範囲を定義していきます。以下の図は、そのように定義していったひとつの例です。

利用する機能と共有範囲が決まったら、次にそれぞれの共有形態を実現可能なExchange/SharePoint の機能と対比して、実装に落としていきます。たとえば、アドレス帳であれば、Exchangeのアドレス帳は全社に公開する情報を掲載するのが適切なのに対して、SharePoint 上ではアクセス権をコントロールして共有する範囲をチームに限定することができるので、より詳細な連絡先情報を共有できる、また、名刺情報などの個人情報の保持にはExchange の連絡先が適切である、など、似たような機能であっても可能な共有範囲が異なることがありますので、吟味が必要です。その際には以下の表を参考にするとよいでしょう。チームや拠点については、クラウド上でセキュリティグループを定義して、その中に必要なメンバーを登録することで便利に運用することができます。

機能

全社

拠点

チーム

個人

Exchange  メール

Exchange  アドレス帳

Exchange  予定表/施設予約

Exchange 連絡先

SharePoint 個人用サイト

SharePoint 予定表/施設予約

SharePoint 連絡先

SharePoint ポータル

SharePoint ファイル共有

 

法的課題への対応

最後に、見落とされがちですが重要な項目をひとつ、挙げておきます。それはグローバル展開をする際の各国の法令対応です。法令対応については、クラウド事業者が守るべきものと利用者側で確認をしていただくものに大きく分かれます。クラウド事業者側で気を付けるべきものとしては、たとえば米国が定める禁輸国では利用者が利用できないように周知をしたり、VoIPサービスを提供する際の通信事業者としての要件を満たしているかどうか、ということ、さらには関係国の税法上問題にならないように購買プロセスやデータセンターの場所を定める、などです。これらに限らず必要な項目をマイクロソフトが考慮して定めている購入可能国、利用可能国の一覧が、「Office 365 のライセンス制限について」にまとめられています。中国やタイ、ベトナムなど日本企業が多く進出している地域でもご利用いただくことが可能です。利用国については Office 365 の各エンドユーザーの属性情報として指定しておき、特定のエンドユーザーが国と地域に異動になっても、利用国の属性情報を変更すればほかの国でも利用することが可能です。

一方、利用者であるお客様側で検討する必要がある項目も数多く存在します。たとえばEUに拠点がある場合には、クラウドが扱う個人情報の保護について一定の基準を満たす必要があります。極論を言うとすべてのデータをEUから出してはいけないことになりますが、ある一定の条件 (EU標準契約条項) を満たす場合に条件が緩和される場合があります。Office 365 は 2011 年 12 月現在、EU 標準契約条項について契約で準拠を表明する唯一のグループウェア クラウドサービスです。また、外為法などある特定の種類の情報については、データが転送されるデータセンターの所在地等が関係してくる場合があります。マイクロソフトでは、データセンターが所在する国と地域を公開していますので、お客様がこのような検討をする際の検討材料をご提供しています。クラウド事業者によっては、これらの情報を開示していない場合もありますので、その場合にはお客様が法令準拠するために必要な情報が入手できないことになりますので注意が必要です。

Office 365 のセミナー、ハンズオン、各地で開催

このように、海外展開時の情報共有インフラを考える際には、クラウドを選択する場合でもいくつかの考えるべき重要なポイントがあることがわかります。この記事ではすべてをご紹介することはできませんでしたが、より詳細について知りたい場合、また実際にサービスを触って確かめたい場合などは、日本各地で頻繁に開催されているOffice 365 の無料セミナーやハンズオンにご出席されることをお勧めします。

無料のセミナーやハンズオンの開催スケジュールは以下をご覧ください。

http://cot.ag/qudgOx

次回は、海外展開を行うに当たって使うことが可能な Office 365 の便利な機能についてご紹介したいと思います。

 

「事業グローバル展開時の IT インフラ・考」シリーズ

事業所グローバル展開時の IT インフラ・考 (1) ~ 情報共有システムの基本設計

事業所グローバル展開時の IT インフラ・考 (2) ~ クラウドのグローバル展開における法的課題の検討

事業所グローバル展開時の IT インフラ・考 (3) ~ Office 365 グローバル展開の導入事例

 

Comments (1)

  1. Anonymous より:

    近年、Office 365 の採用がさまざまな理由で加速していますが、多くのお客様に指摘していただくメリットとして、グローバルに利用することができるという点が挙げられます。いまや多くの企業が中国をはじめとする東アジア

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