フレキシブル ワークスタイル実現のポイント (2) ~ 組織と仕事の作り方の関係


前回は、フレキシブル ワークスタイルを導入にあたって直面するであろう課題の分類を行いました。今回以降、それぞれについて考察を進めていきます。

評価システムをどう考えるべきか

組織としてまずに気になるのは、ワーカーをどう管理すべきか、という点にあるでしょう。よく耳にするのは、「働いているかどうかが分からないため正しく評価できない」 という問題です。しかし、想像に難くないと思いますが、働いているかどうかを技術的に知る方法はいくらでもあります。たとえば、当方が担当するユニファイド コミュニケーション製品である 「Lync」 が持つ 「プレゼンス機能」 を使えばワーカーの連絡可能状態として活動状況が分かりますし、単にシステムへのログオン/ログアウトを記録しておくだけでもいいかもしれません。こう説明すると、今度は 「PCを使っているからといって、働いているという保証があるのか?」 と問い返されるときもあります。それは確かにその通りです。しかし、同じオフィスの 「島」 に集合しているからといって、部下が働いているかどうかを監視しているような上司など、よほどのヒマ人でもなければいないでしょう。「PC に向かっていれば仕事をしているように見える」 のは、近くにいようが離れていようが大差はないでしょう。つまり、現状レベルの時間管理は、リモート ワークにおいても同程度に実現可能なのです。

もちろん、成果の正しい評価ができる体制は必要です。同僚の勤務状況が見えなくなるため、自分への評価に対する不公平感がより強く出る可能性があるからです。しかし、この低成長時代において勤務時間を中心にパフォーマンスを評価しようとすることが、多くの場合すでに無理があり、フレキシブル ワークスタイルの採用いかんにかかわらず、評価システムの改善は必要です。それに、様々な失敗はあるものの、成果主義制度はそれなりに浸透してきてもいます。つまり時間管理そのものは、評価システムにおいて本質的な課題ではないということです。

仕事の組み立て方を変える

業種や業務によって事情が異なりますが、仕事の組み立て方が問題になる場合があります。Lync をご提案する中で真っ先に 「組織ツリーを上からたどって人を探したい」 というご要望をいただく場合、その問題を抱える可能性があります。もちろん、フレキシブル ワークスタイル導入を前提としたプロジェクトでなければ課題とはなりませんので、それ自体を否定的にとらえているわけではないことはあらかじめご了解ください。また、Lyncの標準インターフェースはあくまで 「人」 単位のものですが、いわゆるツリー型の電話帳形式のインターフェースを簡単に作ることもでき、実際弊社内でも運用はしています。これはこれで便利なシーンはあるからです。

営業、マーケティング、サポート、管理部門など、縦方向の統制が強い組織を 「機能 (職能) 別組織」 と呼び、既定の方向性に対して強い団結力を持ってドライブできる、日本企業の典型的な組織構造だといわれてきました。これに対し、特に米国において顕著な 「プロジェクト型組織」 と呼ばれる、一定期間を過ぎれば解散するプロジェクト単位で戦略立案と活動が行われる組織構造では、イノベーションやスピードに強いといわれます。その両方の利点を組み合わせた 「マトリックス型組織」 運営を試みる企業もありますが、統制の2重化など調整の難しい課題があります。

機能別組織では、同一職種の人材がグループを形成します。よってオフィスでは近くの席に座ります。みな似たような仕事をするわけですから、ベストプラクティスなどはわざわざ文書化するまでもなく、共同体験や口頭ですみやかに伝承されます。一方、他の部門のメンバーとのコミュニケーションは希薄になり、そのような相手とのコラボレーションは、いったん組織の上を通すことになります。つまり、先ほど指摘した 「組織ツリーを上からたどって…」  という連絡方法が必要なのは、機能別組織統制が強いことの表れである可能性が高いということです。

「人」 か 「箱」 か

ただし、フレキシブル ワークスタイルにおいて問題になるのは、統制の方向性そのものの話ではありません。機能別組織統制であろうと、期初における戦略のディスカッションと合意、それに基づく最前線までの適切な責任と権限の委譲、進捗確認とフィードバックのサイクルができているような組織なら、フレキシブル ワークスタイル導入の障害とはなりません。しかし、意思決定の単位が常に 「組織」 である場合には、フレキシブル ワークスタイルの導入には困難が伴います。観念的な表現で恐縮ですが、人の専門性に対してではなく 「箱 (席)」 に対して仕事が降ってくるような状態です。

同じような職能を持つ人たちが集合していて、誰が何を受け持つのかをタスク単位で上司の判断や組織全体の合議に基づいて振り分けられているような場合、個人のスキルや役割が明確ではないため、仕事の依頼は組織に対して行われます。たとえば定例会議の場で、組織に依頼された新しい仕事がいくつかのタスクに細分化され、メンバーの反応や綱引きの結果として、誰が担当するのを決めているような場合、フレキシブル ワークに移行し、上司や同僚と顔を合わせなくなれば、タスク割り当ての機会がおのずと減ります。定例会議はせいぜい週に1回しかないでしょうから、このままでは、1週間分の仕事がなければ、何もできない日があるかもしれない、ということです。

専門性を軸に仕事を取り組み立てる

一方、プロジェクト型組織の場合、現在担当しているプロジェクトに対して、自分の部門や専門性の 「代表者」 としての責任と権限を持たされて参加しているわけですから、自分のパフォーマンスを最大化するためには自ら仕事を組み立てることになります。重複タスクなどの無駄が起きやすい反面、もう何もすることがない、という状況には陥りにくいのです。しかし、機能別組織においても、組織におけるその人の役割が明確なのであれば、それに近いやり方ができるはずです。したがって、その人の専門性や職務歴 (ポジションではなく業務内容)、現在関わっている業務などの情報をつまびらかに公開し、それに基づいてその 「人」 に対する仕事の依頼が来るように、また自分の専門性を武器に仕事を取りに行けるように、働き方を変えればいいのです。マイクロソフトの 「SharePoint」 には、各個人のそのような仕事上のプロファイルや、過去のコミュニケーション履歴や作成したドキュメント、情報へのタグ付けなどに基づいて自動的に生成されるメタデータを用いて、人の専門性を判別する仕掛けが組み込まれています。知りたい情報をキーワードで検索すると、そのキーワードに専門性を持つと思われる人を探し出すことができるのです。

さらに Lync はその標準インターフェースから SharePoint のスキル検索機能にアクセスできるため、必要な情報を持つ可能性の高い人のプレゼンス一覧を表示することができ、そこから相手にダイレクトにコミュニケーションを呼びかけることができます。いわば 「企業内ソーシャル ネットワーク」 構造です。このような仕組みがあれば、たとえ自分の席にいなくても、自分を必要としている人に見つけてもらいやすくなります。

このような働き方に変えるのは、いま十分な動機があります。特にスピードが求められる大競争時代に突入した現在、組織論の観点でも機能別組織が持つ問題の大きさは否定しようのない事実です。フレキシブル ワークスタイルを採用するか否かとは関係なく、その働き方が現在のビジネスに対して十分な妥当性がない限りは、改めることを検討すべきだと考えます。

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