フレキシブル ワークスタイル実現のポイント(1) ワークプレイスの形態と課題


東日本大震災以降、災害時のリスク低減や、省電力化への対応のために、テレワーク (在宅勤務) やフリーアドレスの導入、オフィス再編などを検討する企業が増えています。このような、デスクを固定しないワークスタイルをマイクロソフトでは 「フレキシブル ワークスタイル」 と呼んでおり、私たち自身も日々実践しています。しかし、フレキシブル ワークスタイルの実践には多様で複雑なハードルがあり、それらを一つ一つ解きほぐして、答えを出していかなければなりません。ワークスタイルは、単なるワークプレイス (場所) の問題ではなく、企業や組織の風土、マネジメントの考え方、ワーカーのスタンス、ライフスタイルとのバランスなどの複合的な要素の組み合わせによって作り出されるためです。もちろんすべてをクリアにすることは難しいですから、何を追求し、何をあきらめるのか、総合的な ROI を前提としたバランスを十分に考慮する必要があります。

ワークプレイスの主要 3 形態と課題

フレキシブル ワークスタイルは、いくつかのシーンに分けて考えることができます。一般的な営業マンの場合、以下の3つの形態のワークプレイスに分類できるでしょう:

  1. オフィス … 自席 (固定席)、フリーアドレス デスク、共有エリア、会議室
  2. 外出先 … カフェなど共有エリア、客先会議室、電車やタクシーなど交通手段内
  3. 自宅

オフィス では固定席、つまり一人一人が自分の専用デスクを持っている場合が多いでしょう。日本の企業や組織は特に 「席」 に対するこだわりが強いように感じます。その配置が組織におけるポジションを表していたり、席にひもづく役割 (「箱」 と呼ぶこともあります) が業務内容や責任を表現したりするからでしょう。このような企業や組織では、人ではなく箱を基準に業務が設計されています。

しかし近年は、コスト削減や営業効率向上を主目的として、固定席を撤廃する 「フリーアドレス化」 を実践する企業や組織が増えてきました。営業マンは営業が仕事ですから、社外活動の時間が長いはずです。日本マイクロソフトでも、ほぼ全員が固定席だった 2011 年 1 月以前のデータによると、自席の利用率は平均 4 割程度でした。つまり、6 割分のスペースが使われていなかったわけです。もちろんピークタイムの考慮などより緻密な計算は必要ですが、固定席を撤廃すればデスク スペースはかなり削減できるのは明白で、その分をゆとりのある作業空間や会議室、カジュアルに談話できるスペース (日本マイクロソフトでは 「ハブ スペース」 や 「コネクション ルーム」 などと呼び、アドホックな打ち合わせに利用しています) に回すことができます。

フリーアドレス化での問題は、今まで 「島」 のボスとして部下を一望にしていた上司の感情、同僚が隣にいないことでのコミュニケーション効率の低下、席が固定されないことによる作業環境の制約 (たとえば電話など)、の 3 点に集約されるでしょう。後半2点は技術的な問題でありITの力でかなり解決できます。1 点目の問題は、マネジメントであり、制度と教育でクリアしなければなりません。そしてこれらはその他のワークスタイルにも共通する基本的な問題ですから、別途詳細に述べたいと思います。

外出先 では、出張での宿泊先などの特例を除けば、基本的にプライベートなスペースを確保するのが困難でしょう。また、PC を使えるほど十分なスペースが確保できない場所や状況、ネットワーク帯域が十分に確保できない状況にある可能性があります。よって、安全かつ利便性の高い情報アクセスのための仕組みとデバイスの組み合わせの検討が必要です。これについても後に詳細を述べます。

自宅 については、今や自宅に PC を持っていないビジネスマンはまずいないでしょうし、場合によってはオフィスの PC を持ち帰るという選択もありますから、自宅での作業では、いかにオフィスの作業環境を再現できるか、が焦点となります。これには技術的な観点と、ライフスタイルとの関係性の観点の 2 点があります。

技術的観点では、オフィスと同等レベルの生産性を維持しつつ、セキュリティの確保とアクセス性の両立が必要です。自宅はフレキシブル ワークスタイル実践において、オフィスと並ぶ重要なハブ (拠点) であり、オフィスと比べて生産性が著しく悪いようでは、存在意義がないからです。結局は皆オフィスに出勤することにもなりかねません。

「自分は在宅勤務に向いていない」 という誤解 ~ ワークスタイルの新ルール

自宅はプライベートと仕事の接点ですから、ライフスタイルとのバランスは重要なポイントとなります。在宅勤務の話を持ち出すと、「家族に邪魔をされて集中できない」、「気持ちの切り替えができない」、「ついだらけてしまう」 と言う人が相当数います。これは、メインのワークプレイスであるオフィスに対して、補助的なワークプレイスである自宅という、二択の関係性で考えてしまうためです。自宅にメインのワークスタイルを持ち込むことで、デメリットが目に付きやすくなるのです。

むしろ前述のように、日常の様々なシーンで常に最大限のパフォーマンスを維持することができるという観点で考えたらどうでしょう?家族に邪魔されるのであれば、図書館など一時的に近所の別の場所に退避できますし、集中できる時間や状況を自由に選択すればいいのです。それに残念ながら、その在宅勤務が普通の状態になったとしたら、そのうち家族は邪魔などしてくれなくなるでしょう。

同じことはオフィス内での働き方にも言えますし、外出中の時間の有効活用まで含めれば、その生産性の高さは言わずもがなです。それに、オフィスにいたところでずっと集中できているわけではないでしょう。集中したいときに邪魔をされる可能性もありますし、また時には思い切って昼寝したほうが、生産性が高いこともあるはずです。私もこのブログ原稿やセミナースライドなど、一定時間の集中が必要な作業は、ほとんどすべて自宅で行っています。つまり従来の、オフィスの固定席におけるワークスタイルをそのまま在宅勤務に置き換えようとするから無理が先に立つのであって、新しいワークスタイルには新しいルールと勘所があるのです。そのルールを受け入れれば、新しいワークスタイルは、無理なくライフスタイルの一部に組み込まれるはずなのです。

次回以降、その新ルールについて考察します。変更の可能性がありますが、以下のようなことを検討していきたいと思っています:

  • 評価システムをどう考えるべきか
  • なぜ会社に集合しなければならないのか
  • 会議をどうしていくべきか
  • 日常のコミュニケーションはどうあるべきか
  • デバイスはどうあるべきか

続く・・・

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