ビジネスを止めないための事業継続計画を考える


(この記事は 2011 年 7 月 13 日に here IT is online に掲載された記事のクロスポストです)

予期せぬ事態にも打ち勝つスタイルへ~止まらないビジネスのために IT ができること

このたびの東日本大震災で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。今回の震災では、改めて多くの企業が、事業の継続性を確保することの重要性を認識する結果となりました。予期せぬ事態が起こったとき、ビジネスを継続できる体制を整えるためにできることは何か? 3 月 11 日のマイクロソフト自身の事例を交えながら、ご紹介します。

     

今、改めて見直しが叫ばれる事業継続計画

今回の震災は、被害が甚大であったため、多くの企業が事業継続への取り組みの見直しをする機会となったのではないでしょうか。

予期せぬ事態に際してどのように対処し、事業を継続させるかを定めた「事業継続計画(Business Continuity Plan : 以下 BCP)」の重要性を、改めて感じられたことと思います。

企業を経営していくうえで BCP 立案対象は多岐にわたりますが、経済産業省が策定したガイドラインによると、BCP では IT サービス分野は必要不可欠であると考えられています。

『IT サービスの継続性を確保することは、必ずしも事業継続性を全て担保するものではないが…(中略)… IT サービスのマネジメント体制を事故前提の考え方に基づいて構築・維持していくことは、これからの安心・安全な社会の実現にとって必要不可欠である』
(出典:経済産業省「IT サービス継続ガイドライン」1 ページ平成 20 年 9 月)

2011 年 2 月に本社オフィスを品川に移したばかりの日本マイクロソフト株式会社は、このたびの震災により移転後わずか 1 か月で自らの BCP の効果を試されることとなりました。マイクロソフトの BCP がどのように機能したのか。震災当日のようすについて、施設管理を担当する総務と営業を統括するマネージャー、そして営業スタッフの 3 名から話を聞きました。

マイクロソフトの 3.11 ~社員はどのように行動したのか~

Case 1: IT によるリアルタイム コミュニケーションが支えた
管理本部不動産・施設管理部 コーポレートリアルエステートグループ 長坂将光

私は主に、施設の管理/運用を担当しています。所属は、多くの企業では総務部に当たると思います。震災当日、私は 26 階の会議室で同じ部の 4 名と会議中でした。地震発生直後、全員がノート PC を抱えながら、1 人を社長室へ向かわせ、残りは分担して各フロアの安全確認を行いました。ひととおり確認を終えたのが、最初の揺れから約 20 分後。そこで手持ちのノート PC を開き、Microsoft Lync のグループ チャット機能で状況の入力を開始したのです。

全社員の PC には Lync が導入されていますので、インスタント メッセージ(以下 IM)機能の利用や、ユーザーの在席情報などがわかるプレゼンス機能で安否確認をするなど、以降のコミュニケーションの中心となりました。同じビル内だけではありません。仙台を含む支社の状況も、Lync で共有されました。社長室に向かった 1 人は、震災直後に立ち上がった緊急対策室に張り付き、Lync の情報を整理してほぼリアルタイムで経営層に報告する役割を担いました。

翌営業日からは、本社の約 8 割の社員が在宅勤務に切り替わり、リモート アクセス環境を使って業務が継続されました。特にお客様とのコミュニケーションでは、音声通話が大いに役立ちました。オフィスと同じ東京 03 で始まる番号で電話を受けることができたからです。震災直後もその後の在宅勤務においても、リアルタイム コミュニケーションの有効性が、改めて実証されたと感じています。

    

Case 2: 迅速な意思決定が不可欠の緊急時、コミュニケーションツールの転換期を実感
ゼネラルビジネス営業統括本部 業務執行役員 統括本部 反町浩一郎

私は営業を統括するマネージャーの立場で、その日を迎えました。オフィスを移転したばかりで、慣れない場所での尋常ではない揺れに恐怖を感じたのを覚えています。「まずは部下 100 名の安否確認を!」と思い携帯電話で各所に連絡を試みましたが、まったくつながりませんでした。固定電話も同様です。そこで頼りになったのは、プレゼンス確認や IM、グループチャットが即座に可能な Lync でした。30 分足らずで 10 名の部下とコンタクトが取れ、数時間で部下全員の安否確認が取れたときは、コミュニケーション ツールの転換期が来たと実感しました。

私のようなマネージャー職にとって、日々の私の仕事で最も大切なことは、部下との密なコミュニケーションを維持することです。組織の決定や目標、方針などを伝え、部下の仕事が円滑に進むよう調整し、情報をまとめて役員などに報告します。それを受け、組織が意思決定を行います。あの日、私に求められていた役割も同じでした。その意味では、あの日、IT でコミュニケーション手段が確保されていたことは非常に重要でした。もしも電話しかなかったら、時間ばかりかかって、迅速な意思決定はできなかったでしょう。

予期せぬ事態に際しては、日ごろからの準備と、組織としての柔軟性が求められます。そこで IT が果たす役割は非常に重要です。今回、弊社で活躍した製品とサービスは事業継続のために開発したわけではありませんが、お客様にも自信を持ってご提案できるという思いを深めました。

Case 3: 非常時にこそ、いつも使っているツールがいつも同じように使えること
ゼネラルビジネス営業統括本部 ゼネラルビジネス第一営業本部第一営業グループ 振屋憲司

その日、私は都内にあるお客様のオフィスで打ち合わせをしていました。突然の大きな揺れに、会議室が騒然としたことを覚えています。打ち合わせは中断となり、お客様と一緒に机の下にもぐり、身の安全を確保しました。揺れが落ち着いてからお客様先を失礼して、上司と連絡を取りました。携帯電話はまったくつながらなかったので、持参していた業務用の PC を使って IM で自分の状況を伝え、また今後の業務について指示を受けることができたときには、本当にほっとしました。

翌営業日から始まった在宅勤務では、整ったリモート アクセス環境のおかげで仕事に大きな影響はありませんでした。たとえば Web 会議システムを使って、自宅にいてもお互いの顔を見ながら通常と変わらないコミュニケーションが取れました。相手の表情がわかるので震災直後の不安な時期にもチームのつながりを感じられました。また、Direct Access で社内ネットワークに接続し、業務アプリケーションを起動し申請中の稟議書を確認するなど、社内にいるときと同じように仕事を進めることができました。

ただ、改めて考えてみますと、非常時だからといって特別なツールを使ったわけではありません。営業先に PC を持参する機会の多い私にとっては日常と変わらない状態でした。セキュリティの面では日ごろから情報管理に関するユーザー研修を受けていましたし、システムとしてもリモート アクセス環境が整備されているので PC を持参するのに不安を感じることはありませんでした。

場所を問わないフレキシブルな働き方は生産性を向上させるだけでなく、非常時にも有効であるということを身をもって体験することができました。

      

マイクロソフトが支援できる事業継続への取り組み

企業システムの全体を見据え、必要な事業継続の施策を講じる

今や、ビジネスに IT は欠かせないものとなりました。したがって、BCP においてもそれだけ IT サービスの継続性が重要になるということは、前述したとおりです。しかし、ある特定のシステムだけ事業継続の対策を取っていても、一部のシステムが対策から漏れていると、その効果を期待することはできません。

自社のビジネスとシステム全体を見据え、最適な対策を講じる必要があります。マイクロソフトは、緊急時でも IT システム全体の継続性を支えるために、さまざまな製品やサービスを提供しています。

下の図は、一般的な企業の IT システムの全体像です。

 

緑色はエンドユーザーが業務を遂行するためのハードウェアやソフトウェア、青色はシステム担当者が管理しているサーバーや PC など、企業のビジネスを支えるための IT 基盤を示しています。BCP を検討するうえでは、この 2 つのカテゴリに分けて考えるのが一般的です。次のページから、それぞれの施策をご紹介します。

      

緊急時にも変わらないコミュニケーション & 仕事環境を

BCP には情報共有基盤の整備とリモート アクセス環境の構築が不可欠

今回の震災では、地震直後、東日本において携帯電話と固定電話が通じにくくなり、多くの企業で従業員の安否を十分に確認できない状態になりました。また、その後の余震と交通網の混乱により、自宅待機を余儀なくされた企業も多数にのぼりました。

こうした経験からもわかるように、予期せぬ事態が発生したとき、企業の事業を継続するうえで重要な課題として、「連絡手段の確保」「業務遂行手段の多様化」「社外への PC 持ち出しと情報漏えいリスクの最小化」が挙げられます。

この 3 つの課題は、ビジネスの現場を支える 1 人ひとりの従業員が、いつ、どこにいてもコミュニケーションでき、必要な情報をやり取りして仕事を継続できる環境を構築することにより、解決できます。それは IT によって実現することができ、次の 3 つの施策を行う必要があります。

  • 多様なコミュニケーション ツールの整備
  • 情報共有基盤のクラウド化
  • リモート アクセス環境の整備

具体的な製品としては、マイクロソフトが提供する Microsoft Exchange Server や Microsoft SharePoint Server、Microsoft Office などのビジネス生産性を確保する製品と Windows 7 Enterprise です。では、その具体的な機能をご説明します。

    

緊急時にコミュニケーションの即時性と多様性を確保し、在宅勤務も実現

今回の震災を通じて、予期せぬ事態に際して非常に有効であったのが Microsoft Lync Server 2010 です。相手のスケジュールや在席情報などを確認できる機能は、安否を確認する手段の 1 つになります。IP 電話の発着信、インスタント メッセージ、Web 会議など、さまざまな形態のコミュニケーション手法を利用することができるので、連絡手段を確保できます。

震災後の在宅勤務では、Web 会議やグループ チャット機能を利用することで、時間と場所を選ばず、普段と同じように、資料を共有し相手の表情や声を共有しながら、会議を行うことができます。また、録画機能により参加できなかったメンバーも後から内容を確認することができます。さらに、Microsoft Lync Online を利用すれば、社内システムを一から構築することなく、すぐに導入することができます。(ただし、外線発着信の場合は Microsoft Lync Server を導入していただく必要があります。)

    

どこにいても社内と同じ仕事環境を提供

ドキュメント共有では Microsoft Office 365 の Microsoft SharePoint Online が有効です。ドキュメントの電子化、文書管理や各種申請手続きのシステム化も実現できます。ペーパーレスを促進し、捺印などを伴う書面の申請手続きをワークフローに乗せることで、インターネット接続さえあれば、会社にいなくてもドキュメント共有ができ、社内と同じ環境で仕事をすることができます。なお、Office 365 からは、Microsoft Office Web Apps を始めとする Web ブラウザー対応が強化されており、メール、在席情報、Office 文書の表示/閲覧など、今まで以上にクライアント環境を選ばずにスマートフォンや PC などで利用することが可能です。

いつでもどこからでも、社内と同じレベルのコミュニケーション環境、仕事環境を提供するサービスが Office 365 です。ここまでに紹介した Lync、SharePoint Online、Office Web Apps も、すべて Office 365 のサービスに含まれています。

     

社外から社内システムへの安全なアクセスを可能にする Direct Access

緊急時に業務を継続するには、会計や財務、商品管理や顧客管理などの業務アプリケーションも必要です。しかし、震災時にオフィスにいられるとは限りません。そこで、外から社内ネットワークに安全にアクセスできるリモート アクセスのしくみが必要になります。

Direct Access は、インターネットを介して企業のネットワーク資源に確実かつセキュアにアクセスできるしくみです。これは Windows Server 2008 R2 と Windows 7 Enterprise の組み合わせで構築できる機能です。標準で搭載されているため、新たなソフトウェアやハードウェアを追加する必要はありません。また、Windows 7 Enterprise にはハードディスク全体を暗号化する「BitLocker」と、USB メモリなどを暗号化する「BitLocker To Go」が搭載されており、万が一ハードディスクや USB メモリなどを紛失しても、データが暗号化されているため情報は漏えいしません。安心して社外に PC を持ち出せるので、どこでも仕事をすることができます。

 

その他のテクノロジーについても以下の記事で解説しています。

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