リモートデスクトップの通信データ量について

こんにちは。Windows テクノロジー サポートの大羽です。

Windows 7 や Windows Vista といったクライアント コンピュータから、

Windows Server 2008、Windows Server 2008 R2 といったサーバー OS まで

幅広くご利用いただいているリモートデスクトップ サービスですが、

実際の通信データ量がどのくらい発生するのか気になったことはないでしょうか。

ターミナルサーバーに対して、複数のシン クライアントからアクセスするような

運用方法を検討している場合、1 クライアント セッションでどれくらいの

通信帯域が使用されるのかが分からなければ、ネットワーク周りのインフラ設計を

行うことは困難かと思います。

リモートデスクトップの通信では、リモート デスクトップ プロトコル (RDP) と

いうプロトコルが使用されており、キーボード、マウスという入力情報や

デスクトップ画面の情報を通信データとしてやり取りします。

文書番号: 186607

リモートデスクトップ プロトコル (RDP) の解説

https://support.microsoft.com/kb/186607/ja

デスクトップの画面情報を通信データとしてやり取りするとなりますと、

かなり大きなデータが送信されるのではないか、と考えてしまいますが、

画面情報としては差分データのみを転送しており、かつ圧縮を施しているため、

データ量が意外と小さくなっています。

では、具体的にどのくらいの通信量なのか?

残念ながら、現時点では明確なデータ量を示す情報は公開しておりません。

公開していないというよりは、ターミナルサービスの通信データ量は、

設定や使用方法によって通信量が変わってくるため、明確な数字はお出し

できない、という表現が正しいかもしれません。

例えば、以下のリモートデスクトップ クライアントの設定画面にありますように

画面の設定サイズや画面の色、更にフォントスムージングやデスクトップ

コンポジションといったエクスペリエンス機能の設定、また実際の操作方法などに

よって情報量が大きく変化します。

 

では、リモートデスクトップの通信量はどのように判断すればよいのかと

言いますと、答えは「実測」です。

実測の方法は単純で、フリーのパケットキャプチャ ソフトである Wireshark や

弊社製の Netmon などをご利用いただき、認証、操作なし、操作あり、など

実際の運用方法にマッチした形で通信データ量を実測します。

例えば、wireshark では [Statistics]-[Summary] から通信データのサマリーを

表示することができます。

認証、操作なし、操作あり、などオペレーションを時間で区切り、その間の

サマリーを表示することで、ある程度正確な通信データ量の計測が可能です。

それで、最後にネットワーク周りのインフラ設計ですが、実はネットワーク

トラフィックというのは平均化しないという特徴を持っており、統計学としても

確立していないため、明確な見積もりができないというのが現状です。

どういうことかと言いますと、トラフィックピークが一気に立つこともあれば

逆に全くトラフィックが発生しないこともある、ということです。

そのため、平均的な通信データ量でインフラ設計することができないため、

最後はどんぶり勘定(オーバー プロビジョニング)で、多少余裕のあるインフラ

を設計するのが一般的です。

とは、言いましても、ある程度基準となる通信データ量は抑えておく必要が

あるので、是非通信データの実測を行ってみてください。

以下、ご参考までに実際に測定した結果を記載させていただきます。

ただし、あくまで参考値としてご参照ください。

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/// 検証結果

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<< 検証環境 >>

サーバー: Windows Server 2003 Std SP2

クライアント: Windows XP SP2 (RDC 6.0.6001.18000)

検証結果 1/ デフォルト設定 - 標準オプション

===================================================

画面:

リモート デスクトップのサイズ --- 最大 (サーバー画面 800 x 600)

画面の色 --- High Color (16 ビット)

エクスペリエンス:

接続速度 --- モデム (56 Kbps)

デスクトップの背景 --- OFF

フォント スムージング --- OFF

デスクトップ コンポジション --- OFF

ドラッグ中にウインドウの内容を表示 --- OFF

メニューとウィンドウ アニメーション --- OFF

テーマ --- ON

ビットマップのキャッシュ --- ON

< 作業全体の総データ >

300 sec Between first and last packet

2900 Packets

632,000 Bytes

2000 Avg.bytes/sec

作業全体の総データ転送量:約 600 KB

< 各操作の内訳 >

認証処理:平均 3,500 bytes / sec

操作なし:平均 30 bytes / sec

操作あり:平均 3,000 bytes / sec

検証結果 2/ データ量最小 - 画面の色 256

=================================================

画面:

リモート デスクトップのサイズ --- 最大 (サーバー画面 800 x 600)

画面の色 --- 256

エクスペリエンス:

接続速度 --- モデム (56 Kbps)

デスクトップの背景 --- OFF

フォント スムージング --- OFF

デスクトップ コンポジション --- OFF

ドラッグ中にウインドウの内容を表示 --- OFF

メニューとウィンドウ アニメーション --- OFF

テーマ --- ON

ビットマップのキャッシュ --- ON

< 作業全体の総データ >

300 sec Between first and last packet

2300 Packets

459,000 Bytes

1500 Avg.bytes/sec

作業全体の総データ転送量:約 448 KB

< 各操作の内訳 >

認証処理:平均 2,300 bytes / sec

操作なし:平均 10 bytes / sec

操作あり:平均 2,000 bytes / sec

検証結果 3/ データ量最大 - 全てのオプションを有効

==========================================================

画面:

リモート デスクトップのサイズ --- 最大 (サーバー画面 800 x 600)

画面の色 --- High Color (16 ビット)

エクスペリエンス:

接続速度 --- LAN (10 Mbps 以上)

デスクトップの背景 --- ON

フォント スムージング --- ON

デスクトップ コンポジション --- ON

ドラッグ中にウインドウの内容を表示 --- ON

メニューとウィンドウ アニメーション --- ON

テーマ --- ON

ビットマップのキャッシュ --- ON

< 作業全体の総データ >

300 sec Between first and last packet

9800 Packets

695,000 Bytes

2300 Avg.bytes/sec

作業全体の総データ転送量:約 680 KB

< 各操作の内訳 >

認証処理:平均 3,000 bytes / sec

操作なし:平均 90 bytes / sec

操作あり:平均 4,500 bytes / sec

検証結果 4/ デフォルト設定 - 標準オプション

===================================================

画面:

リモート デスクトップのサイズ --- 最大 (サーバー画面 1024 x 768)

画面の色 --- High Color (16 ビット)

エクスペリエンス:

接続速度 --- モデム (56 Kbps)

デスクトップの背景 --- OFF

フォント スムージング --- OFF

デスクトップ コンポジション --- OFF

ドラッグ中にウインドウの内容を表示 --- OFF

メニューとウィンドウ アニメーション --- OFF

テーマ --- ON

ビットマップのキャッシュ --- ON

< 作業全体の総データ >

300 sec Between first and last packet

2600 Packets

450,000 Bytes

1700 Avg.bytes/sec

作業全体の総データ転送量:約 440 KB

< 各操作の内訳 >

認証処理:平均 2,800 bytes / sec

操作なし:平均 50 bytes / sec

操作あり:平均 3,100 bytes / sec

---

上記「操作あり」部の結果を参照していただきますと、実際に画面操作を

行った際の通信データ量の比較ができます。

ある意味このデータが 1 ユーザー辺りの最大通信量を示す値になるかと

思いますが、検証結果 1 ~ 4 の結果を比較いただくと分かるように

画面の解像度はデータ量に大きく影響するようです。

逆に画面サイズなどは、差分のみが送信されるため、さほど大きく影響して

いないように見えます。

他にも色々と試していただくことで、実際の運用環境に合った通信データ量が

見えてくるかと思います。

また、ベースとなる通信データを抑えておくことで、実際の運用段階に入って

からも、通信データの変動を管理することができ、将来的なスケールアップ

など、事前に見積もることも可能になるかと思います。